【vol.2】私の幸福は、誰の「犠牲」の賜物か?
<作品紹介>
2013年ダッカ近郊の衣服生産ビル(ラナ・プラザ)が倒壊し、1,100人以上が亡くなったことにショックを受けたアンドリュー・モーガン監督が制作を決意。「CNN」「VOGUE」を始め、さまざまなメディアで取り上げられる。また、ハリー・ポッターの役者で有名なエマ・ワトソンさんもSNS「ザ・トゥルー・コストを観て!」と投稿するなど大きな話題に。ファッション産業の「ウラ側」「今」「未来」を描き出すドキュメンタリー。
<あらすじ>
これは衣服に関する物語で、私たちが着る服や衣服をつくる人々、そしてアパレル産業が世界に与える影響の物語だ。これは貪欲さと恐怖、そして権力と貧困の物語でもある。全世界へと広がっている複雑な問題だが、私たちが普段身に着けている服についてのシンプルな物語でもある。
この数十年、服の価格が低下する一方で、人や環境が支払う代償は劇的に上昇してきた。本作は、服を巡る知られざるストーリーに光を当て、「服に対して本当のコストを支払っているのは誰か?」という問題を提起する、ファッション業界の闇に焦点を当てたこれまでになかったドキュメンタリー映画だ。
この映画は、きらびやかなランウェイから鬱々としたスラムまで、世界中で撮影されたもので、ステラ・マッカートニー、リヴィア・ファースなどファッション界でもっとも影響のある人々や、環境活動家として世界的に著名なヴァンダナ・シヴァへのインタビューが含まれている。またフェアトレードブランド「ピープル・ツリー」代表サフィア・ミニーの活動にも光を当てている。私たちは行き過ぎた物質主義の引き起こした問題に対して、まず身近な衣服から変革を起こせるのかもしれない。(出典:「ザ・トゥルー・コスト」公式サイト)
【※注意】この記事はネタバレを含んでいますので、気になる方は先に映画をご覧いただいた方が良いかもしれません。
ファッション業界の「光」と「闇」
個人的にとても思い出深い映画。
ドキュメンタリー映画を映画館で初めて見たのがこの作品で、渋谷のアップリンクで鑑賞。
それまでテレビの情報を鵜呑みにしていた自分にとって、ドキュメンタリーで描かれる世界はあまりに衝撃で、
ラストを迎える頃には自分の無知さ、何もできない無力感や絶望感に感情がめちゃくちゃになり思わず泣いてしまいました。
上映後しばらく席から立てず呆然とした経験も初めてで、この作品をきっかけにドキュメンタリー映画を見るようになります。
そして今思えば、この映画に出会うまでの自分はいわゆる「情弱」でした。
情弱…情報弱者。情報環境が良くない場所に住んでいたり、情報リテラシーやメディアリテラシーに関する知識や能力が十分でないために、放送やインターネット等から必要な情報を享受できていない人。→情報格差を参照。転じて、各種の情報に疎くて上手に立ち回れない人を揶揄して言う言葉。→インターネットスラング#蔑称などを参照。(出典:ウィキペディア)
恥ずかしながら、それまで自分の服が「どこで」「どんな人に」「どんなふうに」作られているなんて、ほとんど考えたことがありませんでした。
以前からオシャレやファッションには疎かったため、年間で服を購入することは少なく、タグに記載されている「made in 〇〇」を目にすることはあっても
「あぁ、人件費やコストを抑えるために海外で作られているんだな〜」
程度にしか考えていませんでした。
あまりにも無知な自分に恥ずかしくなります。
もちろんドキュメンタリー映画も、事実をある視点からから切り抜いたものなので、それを盲信するのはよくありませんが、
少なくとも映画の中の世界を知っているのか、知らないのかでは本当に「見える世界が変わるな」と常々実感しています。
例えば、今回の映画の中ではファッション業界に焦点を当てながら、業界の「闇」について迫っていきますが、
・ファッション業界は石油産業に次いで、2番目に地球を汚染している
・寄付される洋服の大半は再利用されず、途上国に廃棄されゴミの山となり、途上国の環境破壊を破壊している
・インド綿農家は大企業から遺伝子組み換えの種や農薬を買い続けなければならず、借金地獄や土地を取り上げられ25万人以上が自殺(30分に1人の割合)
・革工場から排出される汚染水すら生活に使わざるを得ないため、皮膚病、消化器疾患、ガンを発症する人々が増加
・衣服工場に出稼ぎするある女性は、朝から晩までキツイ労働をこなすものの、低賃金のために子どもには年に1、2回しか会えない
など、私たちが知ることのなかった数々の事実を伝えてくれています。
途上国に廃棄され、ゴミの山となった服(出典:「ザ・トゥルー・コスト」公式サイト)
インドの綿農家。大量の農薬を吸い込むため寿命も短い。(出典:「ザ・トゥルー・コスト」公式サイト)
工場で排出される汚染水(出典:「ザ・トゥルー・コスト」公式サイト)
工場からの汚染水によって皮膚病を患っている女性(出典:「ザ・トゥルー・コスト」公式サイト)
衣服工場で働く女性(出典:「ザ・トゥルー・コスト」公式サイト)
ドキュメンタリー映画で視野が広がる
ちなみに、この作品で取り上げているダッカ近郊の衣服生産ビル(ラナ・プラザ)の崩壊事故は
ファッション史上最悪の事故
と言われ、世界中で大々的に報道されましたが、日本ではほとんどニュースになりませんでした。
日本のメディアのレベルは先進国の中でも後退し続けていて
「世界報道自由度ランキング」では、
2010年:11位(最高)
2012年:22位
2013年:53位
2014年:59位
2015年:61位
2016年:72位
2017年:72位
2018年:67位
2019年:67位
2020年:66位
と、世界180国の中でも決して高い位置にはいません。
世界報道自由度ランキング…2002年から開始された調査報告書であり、世界180か国と地域のメディア報道の状況について、メディアの独立性、多様性、透明性、自主規制、インフラ、法規制などの側面から客観的な計算式により数値化された指標に基づいたランキングである。つまり、その国のメディアの独立性が高く、多様性、透明性が確保されていて、インフラが整備され、法規制や自主規制などの規制が少ないほど、メディア報道の自由度が高いとされる指標である。(出典:日本大学大学院新聞学研究科)
つまり、私たちは日頃からあらゆる情報を自分からキャッチしに行かなければ、かなり偏った価値観や視野が形成されやすい環境にいるわけです。
そして、その偏りを解消してくれる1つの方法が、ドキュメンタリー映画だと私は思っています。
ドキュメンタリー映画は主に、権力者たちに都合の悪いことや、私たちが知らなかった数多くの気づきを提供してくれます。
今まで知らなかった「世の中の出来事」「政治的な意図」「世界各地で起こっている様々な問題」などを知ることで、私たちは視野を広げることができますし、
視野が広がることで、考え方や価値観も変わります。
実際、私もドキュメンタリー映画をたくさん見ることで、視野の広がりを実感しましたし、それによってビジネスに役立った場面も数え切れないほどあります。
これからもドキュメンタリー映画を見ながらどんどん視野を広げて、もっと人生を楽しんでいきたいと思います!
また、あなたのオススメ映画もあれば、ぜひコメント欄で教えてくださいね。
▶︎「ザ・トゥルー・コスト」ダイジェスト
▶︎「ザ・トゥルー・コスト」公式サイト