『ライフ・イズ・ミラクル』人生の偶然を掴み取る <★3.6/5、2022年6本目>
<映画情報>
『ライフ・イズ・ミラクル (Life Is a Miracle)』2004年
監督: エミール・クストリッツァ
<1文内容紹介>
スポーツ、戦争、恋愛、偶然がもたらす選択肢から選び取って人生を歩んでいく。
<ネタバレ感想>
あらすじ
セルビア人鉄道技師ルカは、オペラ歌手の妻ヤドランカのアレルギー治療と鉄道敷設のために、サッカー選手を目指す息子ミロシュと田舎にやってきた。
ミロシュは試合で活躍し、無事にサッカークラブからのオファーを受けるが、徴兵され捕虜になる。さらにルカにとって悪いことに、ミロシュを送り出すパーティでヤドランカはハンガリー人音楽家と出会って駆け落ちしてしまう。
せめて息子だけは取り返そうと奔走するルカ。そこに堕落した兵士トモが捕虜交換にといってボスニア人サバーハを連れてきた。
ミロシュとの捕虜交換を希望にサバーハを逗留させるルカ。その間も戦争は止まず、二人の間には恋心が芽生える。
ところが二人の生活が落ち着いてきた頃になってヤドランカが帰ってきて、サバーハも国連の捕虜交換リストに載っていることがわかる。
ルカとサバーハは駆け落ちの道中、川を渡ろうとした際にボスニア人兵士に襲撃される。治療の甲斐あってサバーハは一命を取り留めるが、捕虜交換の対象としてルカと離れ離れになる。
絶望し線路に横たわるルカ。そこに電車がやってくるもラバが立ちはだかる。ラバに乗ってルカとサバーハの逃避行が始まる。
感想
タイトルにあるように、ラバが最後の「ミラクル」をもたらす。最初にシーンにも出てきた象徴的なラバだ。だが、この映画に描かれる人生そのものが偶然と選択の連続である。
ミロシュのサッカー選手としての活躍は、試合でゴールを決めることにあるが、チームスポーツの結果は必然だろうか。戦争が起こらなければ、サバーハとの出会いはあっただろうか、ルカの徴兵もなくヤドランカは駆け落ちしただろうか。
サバーハの父の言葉として「神は理由あって何かをなさる」と語られるが、人生を生きる私たちがその意図を理解することはできない。目の前に現れた選択肢から選び取っていくだけだ。
あんなにも気にかけていたミロシュに別れも告げずにサバーハとの愛を選ぶルカ。愛は血よりも強いのか。
クストリッツァ作品の例に漏れず、バルカンブラスが響き渡る。そのお陰もあって2時間35分とやや長いが飽きずに観ることができる。動物たちの「演技」も素晴らしかった。
『アンダーグラウンド』同様に、バルカン半島の歴史(ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争)を下敷きにしているので、背景を調べることで「民族より人柄さ」というルカの言葉を噛み締めたくなる。
ただ『黒猫・白猫』や、『アンダーグラウンド』に比べるとユーモアのキレだったり、狂乱と狂騒の度合いが低いように感じた。クストリッツァはもっと振り切れるはず。