ムービー3分クッキング

https://movie-3minutes-cooking.com 脚本家。ライターであり会社員でもあります。

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最近の記事

『孤独な群衆』とSNS依存

1950年に出版されたデイヴィッド・リースマンの『孤独な群衆』は、70年以上経った今日でも驚くべき洞察力を持つ社会学の名著です。SNSが普及した現代において、この本の内容は新たな意味を帯びています。 『孤独な群衆』が示す3つの社会的性格リースマンは、社会の発展段階に応じて人々の社会的性格が変化すると主張しました。彼は次の3つの社会的性格タイプを提示しています。 伝統指向型: 慣習や伝統に強く影響され、恥の感覚によって動機づけられる。 内部指向型: 内面化された道徳律によ

    • 映画『ラストマイル』を全人類が観るべき理由

      8月24日に都内の映画館へ『ラストマイル』を観に行った。 当日は近くの江戸川で花火大会があったにも関わらず、夕方の回はほぼ満席。客層は若いカップルから家族連れ、お年寄りまで幅広い印象だった。 上映前の劇場内では『アンナチュラル』や『MIU404』の話題が方々から聞こえ、来場客の多くは塚原×野木ドラマのファンであることがうかがえる。("I ♡ JAPAN”Tシャツを着た2人組の女の子もいた) 映画の内容は、期待を超えた期待通りのものだった。ドラマファンの期待に応えながら、それ

      • 「海のはじまり」第3話ー家族の定義と主人公の定義についてー

        家族の定義第3話に通底していたのは、家族とは何かという問いだった。 月岡夏の両親は再婚しており、父・和哉と弟・大和とは血が繋がっていないことが今回明らかにされた。 第1話の和哉が夏にネクタイを渡すシーンや、大和が夏のことを「兄ちゃん」と屈託なく呼ぶ姿を見たら、誰もが月岡家をいい家族と呼ぶだろう。 家族とは血縁や法的な関係によるものではない。それを身を持って実感している夏だからこそ、血が繋がっているという理由だけですんなりと海の父親になれずにいた。 再婚に関わらず、子を持た

        • 「海のはじまり」第2話ー選択できない夏は海の父親になれるのかー

          人生は選択の連続だ。 その中で最も難しいのは、生死に関わる選択だろう。 正解がなく、どちらを選んでも苦労や後悔がつきまとう。 第1話では水季が夏との子どもである海を妊娠し、夏に黙って産む選択をしたことが明らかにされた。第2話では夏の彼女である弥生が過去に子どもを妊娠し、中絶していたことが明らかにされる。 受け手によっては嫌悪感を抱くほどの強引さで産むことを決めた水季。彼女は家族や周りの協力を得ながら、シングルマザーとして海を育てる苦労を味わうことになった。 弥生は水季と正

          【『海のはじまり』第1話】「海のはじまり」というダブルミーニング

          月9でこんなセリフを聞くとは思わなかった。 『silent』チームが集結した本作は、今期のドラマの中で最も注目を集めるドラマの1つだ。特に脚本を担当する生方美久さんの書く鮮やかセリフのやり取りは、若者をはじめとして多くの人の心をつかんでいる。 第1話は彼女の得意とするダブルミーニング(1つの語に2つ以上の意味をもたせること)が見事に効いていた。 タイトルの「海のはじまり」。ここにもたくさんの意味が込められていた。 冒頭、娘が母に海の始まりについて尋ねる。 娘の「海がどこか

          【『海のはじまり』第1話】「海のはじまり」というダブルミーニング

          ドラマ『生きとし生けるもの』を観て、人は何のために生きるのかを考えた

          あなたは何のために生きていますか? この質問に即答できる人は決して多くないだろう。偉そうに質問した私だって、いざ聞かれたら「え、そりゃあ……何となくだよ」と口ごもるに違いない。 人様に危害を加えない限り、人は何を目的に生きたって良い。地位、名誉、金、家族、恋人、推し……人の数だけ答えがある。年齢や環境と共に変化することも多い。もちろん目的がなく、ただ何となく生きている人がいたってまったく問題ない。 そもそも私たちはそんなことを考える余裕もなく、毎日に追われて生きている。今

          ドラマ『生きとし生けるもの』を観て、人は何のために生きるのかを考えた