自分の価値と力を信じる!エンパワーメントの大切さ✨幸せになることをおそれない!
南アフリカのアパルトヘイト体制を描いた映画を紹介します!
「遠い夜明け」(1987年、イギリス)
アパルトヘイト体制が廃止になる数年前1987年に制作、公開されたイギリス映画です。
名匠リチャード・アッテンボロー監督の作品です。
アパルトヘイト政権下の南アフリカで警官に殺害された、最も著名な黒人解放運動家スティーブ・ビコを取材し、その思想を命がけで世界に伝えようとした、南アフリカの有力紙デイリー・ディスパッチ紙の白人記者ドナルド・ウッズの物語です。
スティーヴ・ビコについて
彼は、1946年ケープ州東部キングウィリアムズタウンの下級公務員の家に生まれます。
故郷を遠く離れてナタール大学に進学したビコは、そこで学生運動の指導的活動家になり「黒人意識」の概念を練り上げました。
ビコの考え方によると、アパルトヘイトの根本問題は、物質的な貧困や白人政府による暴力的な抑圧ではなく、むしろ問題なのは、それらを通じて、黒人たちのこころの奥底に白人に対する劣等感が植えつけられていくことにあるのです。
ビコは、「支配者の手中にある最も強力な支配の武器は、被抑圧者の心である。」といいます。
白人政府に抑圧された生活を続けていると、黒人たちはいわゆる奴隷心理におちいり、自分たちが何もできない無能で劣っている二流の人間なのだと信じこんでしまうのです。
そしてこの白人に対する劣等感ゆえに、自己嫌悪をつのらせ、あげくに黒人同士互いを軽蔑し合うようになるのです。
肌が黒いのを恥じて「彼女はカラードのように白いよ。」と言ったり、
あるいは、一人の黒人が別の黒人に何かをしてあげると、まるでほめ言葉であるかのように「あなたは、私の白人主人です。」と言ったりするのです。
白人のパートナー獲得を夢見たり、ただ白人がやってるという理由だけでその物事に尊敬や憧れを抱いたり。
これに対してビコは、「黒人意識」を持つことが大切だと伝えます。
ビコの言う「黒人意識」とは、黒人たちがこうした劣等感から解放され、自分たちの肌の色と文化に誇りを持ち、思い描いた自己の姿に自覚的に到達しようとする心のありようを指すのです。
ビコは「Black is beautiful」と訴えました。
黒人が自分たちの歴史、伝統、文化を学び、誇りを持つことによって、抑圧された苦しみに屈服することなく苦難と闘い、アパルトヘイト体制を変革していく主体者となれると主張したのです。
ビコを中心に広まった「黒人意識運動」の考え方は、1968年に結成されたSASO(南アフリカ学生機構)を通じて、急速に若者たちの間に浸透していきました。
黒人意識運動は決して白人を差別して黒人が優位に立とうとするものではありません。
ビコによれば、南アのすべての人びとが国民として法の前で平等であり、一人一票制を含むすべての平等な法的権利をもつ、そんな「ノンレイシャルな平等な社会」の実現をめざすものなのです。
スティーブ・ビコは、1977年、治安当局によって逮捕され拷問の末に虐殺されてしまいます。
享年30歳。若すぎる死です。
しかし。ビコの死後も黒人意識運動の洗礼を受けた新しい世代はさらに解放運動を続けます。
70年代の黒人意識運動を通じてうみだされた黒人の自立と団結の力は、80年代に入ってANC、UDFを中心とするノン・レイシャリズム(非人種主義)の方向に合流し、アパルトヘイト体制を廃止に追い込んだのでした。
最後の人種差別国家だった南アフリカのアパルトヘイト体制は約30年前になくなりました。
しかし、「ブラック ライブズ マター」運動にみられるように人種差別はなくなっていません。闘いはこれからも続きます。
ビコの伝えた「エンパワーメント」は、今の日本にも特に大切な考えだと思います。
抑圧され差別されていると、いつのまにか自分が劣ったもので無能だと感じてしまい、その結果差別を当たり前と感じてしまうことがあります。
例えば女性も長い年月そのような状態に置かれていました。
男性に対して、女性は能力的に劣っていると言われて差別を内在化してしまいがちでした。
でも自分の力と価値を信じて「エンパワーメント」することで、差別をはねのけることができます。
「エンパワーメント」は、人間が人間らしく生きていく上で大事なことだと思います。
自分自身の人間性を肯定し、そうすると他の人たちの人間性を認め、尊重し合える対等な人間関係が築けるのだと私は思います。
自分を肯定することは、貶められてきた人からしたら初めはこわいかもしれません。
日本にはかねてから「自虐ネタ」という文化が根強く、エンパワーメントの考えは理解されにくいところもあります。
しかし、自虐から一歩踏み出し、他人の目は普通という枠組みを抜け出すことで、私たちは幸せを感じることができるのではないのでしょうか。
幸せになることをおそれないでいきましょう!
<参考文献>
「南アフリカ『虹の国』への歩み」 峯陽一著 岩波新書
「アパルトヘイトー南アフリカの現実―」新日本出版社
執筆者、ゆこりん、ハイサイ・オ・ジサン
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