7 大事なものは断片化する
前回は、恐怖に駆られて生きていると、それが突然無くなった場合に何も残らないという話でした。ここでは恐怖にドライブされる事についてもう一つお話しします。
私たちはその恐怖のために人生のかなりの時間を使っていますが、その恐怖は社会全体の仕組として存在します。「社会全体の仕組」という点はとても大事です。それは恐怖が構造化(ストラクチャード) され、権威化(オーソライズド) されているという意味です。
つまり、恐怖はそれによって私たち個人の時間と人生を組織立った方法で継続して奪うのです。これは当然の事として認識されていて誰もが問題にはしませんけれども、個人の人生に与える影響はとても大きなものです。例えば、あなたが絵を描く事が好きだとします。あなたは絵を描いて過ごす時間はどんな時間ですか? 答えは余暇の時間です。当たり前のように余暇の時間にそれをします。では、余暇とはどんな時間ですか? はい、それは仕事の時間の合間、勉強の時間の合間です。
そうです。あなたはご自分にとって最も重要で好きな事を余った時間にしかできないのです。
中にはそうでない時間の使い方をする人もいます。例えばプロ野球の選手になるような人ですが、もちろん義務教育は受けるにしても彼らの中では野球はずっと気持の中で継続できていますし、幸運であれば親がその気持ちをサポートしてくれます。ですが多くの場合そうはいきません。私の友人には将来はミュージシャンになりたいと考えていた人がいます。ですが学校を出て就職しました。1日のうちに仕事をする時間が大半になり、そのうちに結婚して車を書い子供ができて今に至ります。
私たちにとって重要なのはどちらでしょうか? 恐怖に駆られて強制された事をして生活と生命を繋ぐ事。自分の興味の赴くままに何かを深く継続して探求する事。あなたはどちらを選びますか?
ほとんどの方は前者を選びます。前者は努力と継続によってこの社会で生きる糧を与えてくれます。そして信用も。後者は必ずしもそうではありません。何をするかにもよりますが変人扱いされるリスクさえあります。そして継続するには困難が伴います。学生であればほとんどの親はあなたが勉強を継続する為にお金を出していると考えていますから、それ以外はお小遣いの範囲でしなさいとなります。あなたのお小遣いのがいくらかはわかりませんが、私が学生の頃はランダムハウスの英語辞書はお小遣いで買えず、親に相談しなければなりませんでした。結局、辞書は学習用として認められたので買ってもらえました。けれども後でそれが無駄だった事もわかりましたので、その後に何か買ってもらうにはさらなる困難に直面したのは言うまでもありません。
同様に、もしあなたが絵を描きたい人であればどうでしょうか? 最初は学校で使っていた鉛筆や水彩絵の具があります。そのうちに油絵の具が必要になりイーゼル、キャンバス、膠・・・いろいろ欲しくなります。自分の表現をするのにそうした物が必要になったのです。買いに行くのは専門店で交通費もかかります。そして描いては失敗し、また描いて失敗し、なかなか納得するレベルには達しません。そうまでして絵を描く時間はどれだけとれるでしょう。学校、仕事を終えて通勤、通学をして寝る時間もあり、ホームワークもあります。自分にとって「のみ」大切な事を継続するのは難しいのです。
ただ、それでも継続する事は必要です。物理的に時間が途切れ途切れになってしまっても、少なくとも頭の中では継続しなければなりません。なぜならば、自分にとって大切な事だからです。
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