「クレーマーの圧を生かした圧力鍋」を買う妄想
「忖度」だなんて、JISの第一水準にも入っていない漢字を流行語にしようなんて、どうかしている―――そう口にするのもはばかれる気がする。そもそも、そんな気持ちを誰に伝えたらいいものか?
空気が読めなくても、もっと普通に息できるようになって欲しいというのは、自分だけの妄想なのだろうか。
スマホを開きながらぼんやりとしていて目についたのが、妄想商品マーケット「MouMa」だった。妄想商品…?モウマ…?
画面には無数のアイテムが並んでいる。 「ソフトクリームのプール」、「wifiアンテナにもなる日傘」、「帰るのがわくわくするファンタジー風ドア」…。 奇想天外、パロディ、大喜利など、種類はさまざまだ。中でも一つの商品に目が留まった。
「クレーマーの圧を生かした圧力鍋」。2500円。
負の力もなにかの役に立てるなら、これはまさしくSDGs。循環型社会、いいじゃない?
アイテムを選択すると、購入ボタンが出てきたので、とりあえず押してみる。商品にSOLDのマークがついたのを眺めているうちに、怖さを感じてきた。
これは自分で制御できないなら、むしろ危険じゃないだろうか。どのくらいの圧が来るのかなんて、想像したくない。自分でクレーマーになれば調節できる?いやそもそも、どんな圧にも耐えられる鍋なら問題ないんじゃないか…。
一通り悩んでから、ふと、これは妄想なのだと気が付いた。
ありもしない商品に悲喜こもごもしている自分がいた。MouMaは恐ろしい。19文字の中ですべてが説明されていないからこそ、見る者の想像を誘い出すような空白がある。
日々の鬱憤を愚痴っていても仕方がない。MouMaで何か形にしてつぶやこう。鍋の中で味の染みたおいしい料理ができていく様を思い描くと、先に感じていた感情が少し軽くなった。
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注:このくしゃみはハクションです。登場する商品・人物・団体・名称等は、すべて妄想にあったことで、現実との境界は読者の領分に委ねられております。
※MouMaでは商品を買うと出品者のプロフィールが見られるようになっています。各自で入力した職業、最近のスキなもの3つと、性別は、後からでも変更できるので、たまに変わっているのを見るのも一つの楽しみ。