良い大人が幼児番組の子役を推す話
息子が初めて
教育テレビに関心を向けた時、
それまでは彼を
何を考えているのかわからない
宇宙人のようだと
思っている節があったが、
あぁこの子もいっぱしの
赤ちゃんなんだと
妙に感慨深かったのを
覚えている。
いないいないばぁっ!は
そんな息子のお気に入りだ。
うーたんという極度に可愛い人形、
はるちゃんという元気な女の子、
特に何の感慨もない犬の着ぐるみが
劇をしたり歌を歌って踊ったりする
明るく愉快な番組なのである。
多くの幼児の皆さんのように
うーたんから入ったクチであるが、
ここの所はるちゃんに対して
至極真っ当なファン心を抱くように
なってしまった。
はるちゃんが明るく元気に
歌って踊っているのを見ると、
私もがんばらなきゃな、などと
いつの間にか
素直に思わされてしまうようになった。
役の上では”はるちゃん”だが、
一人称は本名の”春希”
であるのが大変微笑ましい。
弟がいるとのことであるから、
ピカピカブ〜!での乳幼児の扱いは
こなれた物である。
どこか沢口靖子を彷彿とさせる
華やかな笑顔で、
不可解な動きをしがちな
乳幼児たちを
難なく捌いている。
小学四年生とのことだが、
小学校にて幼児番組での自分を
揶揄われたりしていないかどうか
心配だ。
撮影ではおそらく、
カメラの後ろで
腕組みをして見ている
マネージャーがいることだろう。
撮影が終われば、
「はるちゃん、今日の自分の
パフォーマンス、何点だと思う?」
などと言った風に
詰められていやしないだろうか。
はるちゃんのことを
もっと知りたいと思い、
調べ上げればあげるほど、
その極端な情報の少なさに
自分のしていることが
間違っているのだと
まざまざと思い知らされ、
罪の意識に苛まれる。
良い年をした大人が、
幼児番組に出演している
子役に思い入れるなど
あってはならないことなのだ。
とはいえ、燃え始めたファン心を
簡単に鎮火させることはできない。
これからも
息子をあやすという
大義名分を振りかざし、
はるちゃんのことを
こっそりと見守っていきたい。