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短編小説

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#平成最後の夏

あなたがあなたでいることが何より尊い【短編小説】

あなたがあなたでいることが何より尊い【短編小説】

「しんどい」
と私がそう彼に告げた時、
「別に誰に何と言われたって生きているってのはそれだけで尊いことだよ」
と言ってくれた。

先輩に愚痴を言われて苦しくなった。言われたことができない自分を、私自身がで追い詰めていくことに、少し嫌気がさしていたのもあるかもしれない。

「生きていることが尊い」というのは彼の決まり文句だった。

生まれてから、あまり人から認めてこられなかった私は、その言葉が私に向

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夏の夜の夢【短編小説】

夏の夜の夢【短編小説】

F「夏だね〜」
M「夏だね〜」
F「夏といえばさ、肝試しとかの時期だよね」
M「肝試しね、あったねそんなの。僕は小学校の修学旅行でやったきりやってないけどね」
F「そうなんだ。私はね、結構好きなんだよね、肝試し。毎年心霊スポットを検索しては、そこに訪れて、これがあの…って思いながら怖がる人たちの顔を思いを馳せて感慨にふけるのが好きなの」
M「僕は、君のその発言がとてもホラーだと思ったよ、今年は是非

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今更愛してるって言われたって

今更愛してるって言われたって

今更愛してるって言われても
僕にはもうどうすることもできないんだ。

君を想っていた気持ちも
君を想っていた時間も
とうに過ぎ去ってしまったのだから。

愛ってのは一方的で
愛ってのは刹那的で

だから愛し合うってとても奇跡的なんだ

僕が君に寄せてた想いも
君が僕に寄せてる想いも
それはもう一方的で、
どうしたって叶わない

僕がどれだけ想っても届かなかった
君がどれだけ想っても届かないだろう

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