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暗闇を泳ぐ。

適応障害を診断された。
原因は仕事だった。

会社では期待されていた。
期待され、気づけば多くの仕事を抱えていた。

土日もパソコンと睨めっこ。120時間のサービス残業。
あれ以上頑張れなかった。今になって気づく。

会社を休んで2ヶ月が経とうとしている。
2023年の夏。ぽっかりと空いた穴。

優しい、夜

昼間が嫌いになった。

窓から見える通行人、バス。
自分とは真逆に、"正しく"動いている社会。

現実を突きつけるかの様に、憂鬱が窓をすり抜けてやってくる。
カーテンは唯一の防御だった。

社会の歩みを暗喩するかの様な昼間の明るさ。
太陽が憎らしい。

反面、夜は優しかった。

暗闇には、底しれぬ包容力が存在する。
正直になれる時間。そんな気がした。

酒は百薬の長

よく言ったものだ。
あの忌々しい昼間を、飲んで寝て解決してやろう…

朝に起き駅へ向かう生活は、
昼に起き酒を飲む生活に置き換わる。

午前11時。Uber Eatsでマクドナルドを注文。

届いた食事を受け取りながら、
冷蔵庫で眠る角ハイボールの500ml缶を手に取る。

昼間から金色の缶を「プシュ」とする行為は、次第に習慣となった。
何のためらいもない。

ダラダラとNetflixを見ながら食べるが、内容が頭に入ってこない。

1時間もすると心地よくなり、眠気が押し寄せてくる。
ベッドに潜り、眠りに落ちる。

気づくといつも夕方だった。

社会でいうところの、「ダメ人間」コースを歩む自分。
もちろん、薄々気づいていた。

こんな生活が1ヶ月半ほど続いた。

未読無視

しばらくの間、LINEに返信しなかった。
文章を考えるのが億劫で先延ばしにしていた。

スマホの向こうの人々はしっかり働いていて、
こんな自分が関わる資格はない。

明日は返信しないと。
スマホを見るたびに誓った。

結局、1ヶ月は既読できなかった。
(ごめんなさい)

何かしたい

8月に入り、休んでから1ヶ月が過ぎた。
お盆で帰省したこともあり、人付き合いは徐々に苦でなくなった。

この有り余った時間で、何かしておきたい。

特に考えもせず、九州へ行くと決める。
大学時代の友人が転勤し、福岡に住んでいる。

再会した、青い鳥

久々に会った友人は仕事帰りでスーツ姿。
中洲の屋台で一杯やる。

ほろ酔いで彼の自宅へ向かい、飲み直す。
酔いながら2人で「リズと青い鳥」を見た。

見終わったところで、友人に自分の境遇を打ち明ける。
彼は特に驚くでもなく、「そんな予感はしていたよ」という感じだった。

もちろん、こっちも彼の反応は予想できていた。
助けられた気がした。

夜はあっという間に過ぎた。

イワシの群れ

水族館の大水槽で、イワシの群れを見つめた。

ぱっと見、すべての魚が同じ方向へ塊を作って
ぐるぐると泳いでいる様に見えるが、よく見ると違う。

たまに1匹で群れから出ていく魚がいる。
彼らは自らの意志で迷いなく集団から抜け出していく。

一匹狼ならぬ、一匹イワシ。

何だか安心したのである。

"働く"ってなんだろう

国民の義務。働く。

2ヶ月のあいだ、仕事しない「ダメな国民」として生きた。
正直、まだ働きたくない。

人は何のために働くのか。
お金。生活するお金を得るためか。

お金を得るための手段 = "働く" は
間違いではない気がしている。

働かなくなり、気づいたことがある。
"働く"には、自分のアイデンティティを保つ役割もあるのではないか。

働いていれば他人とのコミュニケーションが生まれるが、
その中で、自分らしさを発揮する。

誰とも会わなくなった私は、自分らしさなんて概念すらない状態だ。
ぽっかり空いた穴の原因かもしれない。

人は誰かと関わり比較することで、自分らしさに気づく。
自分らしくあるために、働きたいと思う。

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