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読書の記録(67)『笹森くんのスカート』 神戸遥真 講談社
手にしたきっかけ
司書の研修会で、5〜6年生向けの本の紹介の冊子を作るために、いろいろなジャンルの本を探している。本の紹介で気になった本。
心に残ったところ
笹森くんが急にスカートを穿いてきたところからお話が始まる。
クラスメートの視点で1章ずつ物語が進み、最終章は笹森広の視点で語られる。笹森くんがスカートを穿いて登校しようと思った理由は最終章でわかる。直接聞く人もいれば、聞けない人もいる。よくわからない配慮や憶測、正義感から理由のわからない衝突が生まれたりする。女の子がスラックスを穿いてきても別になんともないけれど、男の子がスカートを穿いていくと、多くの人の心をざわつかせてしまう。この差って何なんだろう。
軽い感覚で読めるけれど、読み手に課題を投げかけてくる。
篠原智也、西原文乃、細野未羽、遠山一花、の4人の視点で一章ずつ話が進み、最後は笹森宏の章で終わる。それぞれに高校生らしいちょっとした悩みがある。それを描きつつ「笹森くんがスカートを穿いてきた」という事実に揺さぶられる様子が書かれている。
4人以外にも印象的なのがクラス委員の倉内さん。真面目だし、悪気があるわけでは何だけれど、他人の領域に少し踏み込みすぎてしまう。こういう人、いるなあと思いながら読んだ。自分にもこういう部分があるかも、と思うとちょっと怖くなった。程よい距離なら、世話焼きや背中を押してくれる人、ですむ。しかし、何かのはずみで距離を間違ってしまうと正義を振りかざして詰め寄る人になってしまう。若さならではの真っ直ぐさが、人を傷つけることもある。善意からの行動なだけに、周りは止めづらいってことあるよなあと思った。
みずすさんの絵もいいなあと思った。笹森くんも必要以上にすらっとしていない。リアルな体格の高校生。
まとめ
ジェンダーについてしっかり考えさせられるけれど、入口は青春ものとして軽い感じで読める。自分の中にあるバイアスにも気づかせてくれる本だ。