読書の記録(56)『私たちの世代は』瀬尾まいこ 文藝春秋
手にしたきっかけ
新刊が出るたび読んでいる瀬尾まいこさん。中学校の教員をされていたこともあり、勝手に親近感を抱いて、ずっと読んできた。
『私たちの世代は』で書かれているような、突然一斉休校になって、卒業式もぶっつけ本番みたいな感じになって、そのあとの入学式や分散登校など、わけがわからないまま大きな渦に巻き込まれたような感じは今でもよく覚えている。
心に残ったところ
『私たちの世代は』は待ってました!という感じの瀬尾ワールドのお話。学校が出てくるところ、子どもたちそれぞれが成長しているところ、見守る大人が素敵なところ。あたたかくて優しい世界。
通勤の電車で少しずつ読んでいたので、初めは冴と小晴がこんがらがりそうになった。半分ほど読み進めて、夜寝る前にもう少し読もうかなあと読み始めたら、ぐいぐい引き込まれて最後まで読み切ってしまった。読書で寝不足になるのは久しぶり…。中盤から最後にかけての展開が特にぐいぐいくる。えっ?!こことここがつながるの?といった感じで驚きの連続だったけど、どれも「そうだったのね~」と納得できる。
どの人もそれぞれ味があって瀬尾さんの小説っぽいと思うんだけど、特に冴のお母さんに憧れる。おせっかいというか、面倒見がいいというか、相手に気を使わせずに、ぐいぐいと相手の懐に入っていく。みんなに好かれて、慕われている。『そしてバトンは渡された』を思い出した。
「自分がしてもらったらうれしいから」というようなことを、さりげなく、確実にやっていく。このgiveの精神というか愛のある行動がいいなとあ思った。こうやって誰かのために自分の時間や持っているものをささっと差し出せるのってかっこいい。
この本は先生や先生を目指す人たちへのエールの本だとも思った。ブラックだとか、働き方改革とか、相反する要素を求められて「どうしろって言うねん!」という学校現場だけれど、学校にしかできないことはたくさんあるし、それがやりたくて先生になったことを思い出せた。
不登校を否定するわけでもなく、学校を否定するわけでもない。どちらにも寄りそうあたたかい感じが心地よい本だと思った。
まとめ
コロナ禍を思い出させる本を何冊か読んだ。その中でも、この本が一番好きかな。行き詰まって先が見えない感じは苦しさを思い出すけれど、この本は読後が爽やかだ。
学びたい子には学ぶ道が開けてほしいし、勉強が苦手な子は本当に好きなことをしっかりつかまえていてほしいと思った。
効率が重視されてタイパとかコスパとか言われるけれど、この本のような遠回りも人生には必要。子どもの成長をゆっくり気長に待つ余裕が大人や社会にも必要。まずは大人がゆったりした気持ちで過ごせないとね~と思った。
寝る前の読書もいいし、休日にコーヒーを飲みながら好きな本を読む時間も大事。
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