2022年に最もダウンロードされたアプリゲームは何か?〜ゲーム外の体験拡張とコンソールゲーム化がさらにアプリゲーム市場を成長させる〜
あけましておめでとうございます。2023年もゲームやアプリのマーケティングのことを発信していきますので、今年もよろしくお願いいたします。
2022年のゲームソフト市場は、2020年〜2021年のコロナ禍におけるゲーム特需からの好調が落ち着いたことの反動により、ついにゲームソフト市場全体が横ばいから微減した予測になりました。過去10年間はモバイルゲームが牽引して成長を続けてきたので、ゲーム市場全体としては久しぶりの横ばい〜減少トレンドになります。
とはいえ、ゲーム市場規模はまだまだ巨大で、新興国は成長を続けることは確実ですし、実際に新たなヒットタイトルも各国で生まれていることから、全く悲観することはありません。ただ、事実として成長を続けてきた世界のモバイルゲーム(アプリゲーム)市場の特に売上的なピークは近いのかもしれません。
これまでモバイルゲームの市場を牽引してきたアメリカ、日本、韓国におけるモバイルゲームのダウンロード数が減少し始めているからです(但し中国は引き続き成長していたようです)。
こうしたピークが近づくゲーム市場の中での今後の確実なトレンドの変化は以下だと考えます。
現状のゲームマーケットでシェアを伸ばしているプレイヤーはすでに、①グローバルと、②マルチデバイスフォーム展開に成功していると言えますし、新たな分野として③Web3、VR、ライブゲームに挑戦を企てている会社も増えています。上記の3点はその意味でも始まっている変化ですし、新たな成功のためには進化や変化が必要という認識は確実に広がっています。
日本のアプリゲーム市場2022年のトピックス
さて、日本のモバイルゲームマーケットに目を向けると、2022年はまさに変化の兆しを感じる多様なトピックスがたくさんあったように思います。
2022年も売上では『モンスト』『パズドラ』『FGO』『プロスピA』などの超ロングセラータイトルが引き続き上位であり、2021年の大ヒットタイトルの『ウマ娘』も2022年もトップタイトルであり続けました。2020年の大ヒットタイトルの『原神』と『プロセカ』も2022年はさらにユーザを増やして成長していました。強いタイトルは引き続き強いという点では変化がありませんが、市場が安定しているという意味では決して悪い状況ではありません。
2022年は売上首位の座を『モンスト』が『ウマ娘』から奪還していました。『モンスト』は、ここにきて運営とマーケティングの総合的な地力の強さが改めて際立ってきたように思います。2023年はいよいよ10周年を迎え、どんな展開を仕掛けてくるのか、お手本たるモンストに俄然注目です。
2022年は新作もとても豊作でした。売上観点で新作を3つ選ぶなら『ヘブンバーンズレッド』『メメントモリ』『勝利の女神:NIKKE』です。安定した市場の中で、「ウマ娘」以降であっても「良いものを作ればきちんとヒットする」が証明されたと思います。この3つは全てオリジナルタイトルです。新作においては特に、ゲームの魅力を分かりやすく伝えられる手段を作ることの重要性を示した気がします。言い換えると「魅力の切り抜き」というか。
2022年はアプリマーケットの外部決済の自由化に関する動きもありましたし(主にはゲーム以外ですが)、『フラッシュパーティー』などGoogle Playでの配信を行わずに独自配信をするゲームアプリも現れて、実際に一定の成功するタイトルも出てきました。安定と成熟している市況だからこそ、2023年も動向には注意すべきでしょう。
2022年国内スマホゲームダウンロードランキング
この記事の後半では、今年もdata.aiにデータ協力をいただき、日本国内のスマホゲームダウンロードランキングを紹介できればと思います。市場の変化を捉えるにはセールスランキングだけではなく、ダウンロードランキングにも注目することが重要です。ユーザニーズと企業のマーケティングのトレンドがダウンロードランキングには反映されているからです(2021年のランキングと考察はこちら)
「ゲーム外の体験拡張」がアプリゲーム市場をさらに成長させる
2022年の国内でのダウンロード数No.1タイトルは『プロセカ』でした。『プロセカ』は2020年のリリースタイトルで、2020年は12位、2021年は5位、そして2022年に1位と、年々アプリゲームのダウンロードランキングが上がり続けたことはとても珍しいことです。『プロセカ』がそれを成し遂げたのは、「ゲーム体験をゲーム外にも拡張し、ゲーム外の市場も取り込むことができている」からではないかと考えています。
『プロセカ』は「ゲーム」だけではなく「音楽」「音楽ライブ」「アイドル」「ダンス」など複数のコンテンツジャンルが共存したプロジェクトです。そのコンテンツを「アプリ」「YouTube」「Twitter」「TikTok」「リアルライブ」「クリエイター」など、さまざまな旬なメディアに最適化して展開されています。こうしたマルチメディアな展開こそが、ゲーム市場以外のユーザにもアプローチできており、多くのダウンロードを生み出している原動力と考えます。
ゲーム以外にも動画、SNS、マンガ、音楽など、スマートフォン上で楽しめるエンタメの選択肢が爆発的に増えたからこそ「スマホのメディアトレンドに合わせて、ゲーム外に体験を拡張する」ことは、今後のアプリゲームのマーケティングにおいてとても大事であることは間違いないと思います。
2022年の4位だった『ONE PIECEバウンティラッシュ』からもそれを強く感じました。『バウンティラッシュ』は2018年リリースのタイトルで、2020年と2021年はダウンロードランキングは100位圏外でしたが、2022年は突如大ブレイクしました。もちろん最も大きな要因は2022年の大ヒット映画「ONE PIECE FILM RED」との連動施策です。これも「ゲーム外の体験拡張」がキーワードです。「ゲームとゲーム以外の体験のシームレスな融合」の可能性を示した事例と言えそうです。
2022年のランキングでは「マルチデバイス展開」しているタイトルも目立ちました。『遊戯王マスターデュエル』「原神」はもちろんのこと、『ヘブンバーンズレッド』がSteamに対応したことも界隈でニュースになりました。App Storeのゲームオブザイヤーを受賞した『Apex Legends Mobile』もマルチデバイスに展開するタイトルといえます。ユーザがゲームをプレイする環境がコンソール、PC、モバイルで分散するようになっているからこそ、マルチデバイスであることがユーザを広げる相対的な強みになっています。
マルチデバイス展開は「ゲーム実況」においては特に重要です。YouTubeやTwitchではまだまだPCで遊べるタイトルの方がゲーム実況されやすい傾向があるからです。ゲーム実況も重要な「ゲーム外の体験拡張」の一つですし、実際に『Apex Legends Mobile』はApexシリーズ全体のゲーム実況の人気が成長のドライバーになっていると感じます。
「ゲーム外の体験拡張」は「ユーザをつなげること(コミュニティ)」にも重要な役割を果たしています。まさに「ゲーム実況」がそうであるように、基本的には一人の時に遊ぶことが多いアプリゲームだからこそ、誰かと一緒に楽しめるゲーム外の体験が新たな価値を生み出しています。「VTuber」の人気や影響力が高まっていることもここに関連するように多います。
2022年の2位の『ツムツム』は2023年1月で9周年を迎えますが、コロナ禍以降の2020年以降に勢いが加速しています。「ディズニー」×「パズル」×「No. 1パズルゲーム」が圧倒的なメジャー感が強みであることは言うまでもないですが、直近は以前にも増してプロモーションを積極的に展開しています。旬なタレントを起用していることに加えて、「ポイントプレゼント」や「くじ」などのゲーム外でのインセンティブキャンペーンも貢献しているように思います。こちらもプレイ動機をゲームの外にも作る意味で「ゲーム外の体験拡張」と言える展開と言えそうです。
別の観点では、『カウントマスターズ』のようなハイパーカジュアルゲームのランクインが減っていることも一つの傾向と言えそうです。日本国内でハイパーカジュアルゲームが本格的に目立つようになった2018年から5年が経過し、少しずつカジュアルゲームのトレンドにも変化してきているかもしれません。
カジュアルゲームの変化のヒントは2022年の6位だった『ダダサバイバー』にありそうです。『ダダサバイバー』はハイパーカジュアルよりも遊び応えがある「ミッドカジュアルゲーム」とも言えるジャンルです。『原神』が一気に時計の針を進めましたが、アプリゲームのユーザ体験はコンソールゲームやPCゲームにも近づいてきています。カジュアルゲーマーのゲーム体験を高品質化し、さらにゲーマー化する意味でも、今後のアプリゲーム業界に「ミッドカジュアルゲーム」が新たなトレンドと需要な役割をもたらすのではないかと思います。
アプリゲームのコンソールゲーム化の観点では、エンディングがあるアプリゲームがそろそろユーザからの支持を集めてもおかしくありません。ビジネスモデルもアイテム課金型と広告型だけではなく、買い切り型、Apple Arcade型などが広がってくる兆しを少しづつ感じています。
ダウンロードランキングから読み解くキーワード2023まとめ
メディアトレンドに合わせた「ゲーム外の体験拡張」こそが今後のアプリゲームをさらに成長させる
ゲーム外の体験拡張のキーワードは「マルチメディア」「マルチデバイス」「ゲーム実況」「コミュニティ」「ゲームプレイのインセンティブ」
「ミッドカジュアルゲーム」がアプリゲームのコンソールゲーム化を進めて、ゲーマー人口をさらに増やす
アイテム課金型、広告型に加えて、買い切り型、Apple Arcade型、Web3型など多様なゲームビジネスモデルが受け入れられるようになる
過去6年間の国内スマホゲームダウンロードランキングTOP20
最後におまけとして「2017年から過去6年のダウンロードランキングTOP20」のデータを公開しておきます。過去からの流れを見ていくと、より変化がわかりやすいと思いますので、ぜひご参考ください。
以上、2022年のアプリゲームのマーケットデータに基づき、これからのトレンドを考察してみました。ぜひ参考になったという方はスキをお願いします。また今後もゲームやエンタメのマーケティングに役立つ情報を書いていければと思いますので、ぜひフォローもお願いいたします。
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