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トンデモマナービジネスはいかにして生み出された獣か

ビールのラベル、ワインのエチケット、そして、近々では、日本酒の逆さ注ぎ口がネットトレンドになった。

ツイッターランドの動向を見つめ続けるサブカルライター・モトタキが、学術的では決してない戯言で、この事象をそれっぽく語る。

酒の注ぎ口マナー騒動

日本酒を注ぐ時は注ぎ口を反対にしなければ『縁を切る』になるという、なんとも奇天烈なマナー。

あまりのことに嘘松かと思われたが、テレビで紹介され、ネタ元とされるのは窯元の公式サイトの一文。それ自体も諸説ある伝聞の形式で記されており、靄がかる。

作り手からの「注ぎ口は注ぎやすいように作ってるんだから使えよ」の声や、ウェイ系大学生の「注ぎ口は反対にしないとダメって怒られたんだけど」の体験談などが飛び交い、ツイッターランドを賑わせた。

また酒の注ぎ口のようなありえないマナーを創出する大喜利も開催される流れへ。

トンデモマナービジネスとツイッターランド

そもそも、ツイッターランドでは、トンデモマナービジネスを揶揄する文化がある。今回の「酒の注ぎ口マナー」が騒動化したのは、そうした下地があったからに他ならない。

ツイッターランドの住民は、無駄を嫌う傾向があり、マナー自体を悪とはしていなくとも、形骸化したマナーは道化のように扱われる。

物事をややこしくする「これは失礼」を作り出すマナー講師の存在を悪に認定するのも、その一環だろう。

今回の「逆さ注ぎ口」は、捏造マナーの代名詞『江戸しぐさ』の系譜すら感じる。ツイッターランドにおいて、嘘は潔癖なまでに嫌悪される。江戸しぐさは蛇蝎のように扱われれ、創作エピソードは嘘松と罵られる。

ただ、あまりにも行きすぎた嘘松認定文化は、嘘のような本当の話までも嘘松認定しているきらいがある。今回とは外れるので、それはまた別の機会に取り上げる。

トンデモマナービジネスは規律を創出する商売

ツイッターランドでは、否定ありきのトンデモマナービジネスだが、世の需要は随分とある。でなければ、こんな馬鹿げたビジネスがいつまでも長続きするはずがないのだ。

では、なぜトンデモマナービジネスは求められるのか。そもそも、トンデモマナービジネスとは何なのか。それを突き詰めていくと、これは「間違えを恥じる文化に寄生する生態のある獣」だと定義できる。

そうした規律は、他国であれば世界宗教によって定められている。国教で「ダメ」とされるものを皆が守る風習があれば、わざわざトンデモビジネスマナーを創出する必要はないのでは。

海外に馬鹿げたトンデモビジネスマナーが存在するのか。それとその国々の宗教が相関関係にあるのか。

そのあたりの調査によって、少なくとも宗教の戒律に緩やかにしか縛られていない日本人とトンデモビジネスマナーの普及の関係は明らかになるかもしれない。知らんけど。

しかし、これだけでは弱い。この獣の生きられそうな場はあっても、人に食らいつく理由が足りない。人のほうに、この獣の餌となるものがあるはず。

日本の義務教育で染み付いた減点方式評価

「ゆとり教育だ」「詰め込み教育だ」のようなお話は聞いたことがあれども、日本の今の学校教育は、明治維新の頃に海外のことをより多く記憶する力を持った人間を選出する『記憶力評価』である。

だからマルバツでしかない。持ち点100点からの減点方式でしかない。間違えれば減らされる。だが、可視化された採点では、加点は存在しない。ひたすらに「失敗しないことを強要される」教育がなされる。

減点方式の評価が日本人には染み付きがちだ。人間関係すら減点評価の人間がいるのも、この教育によって歪められた結果だろう。

失敗から挽回する為には、加点方式でなければいけない。減点方式だから「他人の失敗ばかりを気にして指摘する」「しくじった人間は一生そのミスを弄られる」などの悪習が罷り通るのだ。

減点方式などにすれば、突き抜けた存在なんて生まれるはずがない。カムバックも難しい。一度しくじればおしまいの社会は生き地獄でしかない。

この日本教育の最大欠陥のひとつである「身に染み付いた減点方式」こそ、あの獣の大好物なのだ。

トンデモマナービジネスと減点方式評価の相性は花丸

トンデモビジネスマナーは「減点項目を生み出す」のが仕事である。減点方式が浸透した日本社会では、これがハマる。

「これをしてはいけない」の減点を気にさせれば勝ちなのだ。加点であれば「これをしたほうがよい」となる。それならより良くする工夫が必要となる。だが「してはいけない」は言いがかりをつければよい。

褒めるのは難しいが、貶すのは容易い。ゆえに減点方式のトンデモビジネスマナーは次々と生み出されるのである。

善なるビジネスマナー。つまり、加点方式のビジネスマナーを生み出す光のマナー講師が現れれば、闇のマナー講師たちをバッタバッタと薙ぎ倒してくれるのでは…。

そんなことを考えるばかりである。求む、光のマナー講師。





 










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