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日本の学校教育における能力=平等主義

 日本の学校教育では、誰でも努力することができ、努力さえすれば100点満点の何でもできるという努力神話がはびこっていた。(今でも)


能力=平等主義

能力=平等主義を基盤とした教育の拡大要求は、学歴取得競争への参加者を拡大することに大きく寄与した。「生まれ」によらず、だれでもがんばれば「一〇〇点」がとれる。どの子にも能力の無限の可能性がある。このように能力=素質決定論を否定する能力=平等主義は、結果として努力主義を広め、「生まれ」によらずだれにも教育において成功できるチャンスが与えられていることを強調した。能力主義的教育への反発から生まれたこのような能力=平等主義の考え方は、学歴社会が前提としていた、教育による「生まれ変わり」という主張と重なり合っていたのである。だれでも、努力すれば、教育を通じて成功を得られる。だからこそ、だれにでも同じ教育を与えるように求める。その結果、より多くの人びとが同じ教育の土俵の上で競争を繰り広げることになった。教育における競争を否定する一方で、皮肉にも、能力主義教育を批判する議論が、教育における競争に人びとを先導する役割を果した

p190-191 大衆教育社会のゆくえ—学歴主義と平等神話の戦後史
- 雑記帳
https://web.archive.org/web/20160516195906/http://d.hatena.ne.jp/ced/20061112/1163290795

平等概念がどのように形成されてきたかを苅谷剛彦は、日教組の教育政策を検証し、文部省の教育行政(「適性適職主義」・知能レベルによってつける職業が違うという考え)を批判する運動の中から「だれでもがんばれば100点がとれる。生得的能力は決定的な差異がないという能力平等主義(注 能力はみんな一緒)」を普及させたと分析している

能力と平等について― 公共サービス労働の概念を考える ―
徳島県本部/中野 輝行https://www.jichiro.gr.jp/jichiken_kako/report/rep_tokushima29/jichiken/1/1_33.htm

能力=平等主義は日本独自

欧米では習熟度別指導が早くから導入され,一般化しています。一般的にいわれていることですが,欧米では人間の成長・発達というものは一人ひとり違っているという前提が受け入れられているのです。それに対して,日本では“努力すれば,勤勉であれば,人間は皆同じペースで成長・発達していくものである,あるいは,いくべきである”と考えられています。

実は,欧米では「習熟度別」とはいわず,はっきりと「能力別」というのです。能力というのは生まれつき,その人に備わっているものです。その能力に応じて指導しようというのです。他方,日本語の“習熟”という言葉は,くり返し学習するようにすれば,誰でも一定のレベルに達するものである,と理解されます。

アメリカにおける能力別グループ指導

http://web.archive.org/web/20040825023835/http://www.nichibun-g.co.jp/library/sei-kyoshitsu/037/s370104.htm

アメリカにくらべ、日本では、「児童間の学業成績の差はなぜ生じるのですか」という質問を教師や親にした場合、生来の能力差以外の理由が好まれることは、H・スチーヴンソンやW・カミンズなどの数々の研究者によって繰り返し示されてきた。学力差の原因は児童の「努力」の違いや、家族の協力的あるいは非協力的態度、教育環境の良し悪しなど、さまざまな要因に求められるわけだが、「生まれつきの能力差は存在しないか、たとえ存在しても努力や環境などの後天的なものにくらべれば問題にならない」という考えが、日本人の間では一時代前から強いとされてきた。これは、能力平等観などと呼ばれ、日本人の特徴だと言われている。これに対して、アメリカでは、日本よりも生来の能力差を肯定する傾向があることは、幾度となく指摘されてきた。「生来の能力差は直接、神からわれわれが授かるものであり、人間はその存在をなくすことは決してできない」とは、『アメリカのデモクラシー』でのA・トクヴィルの言葉であるが、"gifted"という語は、「天賦の」という意味であり、ある子どもが他にくらべ、特別な能力や才能を天から授かっているという宗教的な響きがある

人間形成の日米比較 恒吉僚子「人間形成の日米比較−かくれたカリキュラム」 中公新書(1992年)
https://web.archive.org/web/20160810145331/http://ponpo.jp/madarame/lec1/tsuneyoshi.html

関連論文

第 8 回 能力の個人差 -遺伝と環境が能力に及ぼす影響- 福田光宏http://fukuda.mond.jp/edec08.pdf


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