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「フランダースの犬」とお墓

 あまり知らていない、フランダースの犬原作ラストについてです。

フランダースの犬 原作ラスト

 パトラッシュの物語は、ネルロの自殺で幕を閉じます。

「パトラッシュは、よろめくようにかけよって、ぴったりと顔をすりよせました、「あなたを見すてるような、そんな不忠ものと思わないで――」と言うように。
 ネルロは低く叫んで身を起しました。そして、しっかりと犬を抱きしめながらささやきました。
「おおパトラッシュ、可哀想なパトラッシュ。ふたり一しょに死のう。世間の人は、もう僕たちには用がないのだ。ここで横になって死のう。僕たちはたったふたりっきりだ。」
 ものの言えないパトラッシュは、答えの代りに、なおもネルロの胸にひしとその頭をおしつけました。」

「清らかな月の光は、そのあこがれの画を隅々まではっきりと示しました。が、これも一瞬にしてかくれ、堂内は再びまっくらな闇がひろがりました。画の方にさし出されていたネルロの両手は、再び犬のからだを抱きました。
「ああ、神さまのお顔が拝めるだろう。―あそこに。」彼の唇がかすかに動きました。「神様は私たちをお見すてにはならない。神様は御慈悲深い―。」

「夜が明けました。」

「生命のある間はなれられなかったこのふたりは、死んでからもはなれませんでした。少年の腕はどうしてもはなすことのできないほどしっかりと犬を抱きしめていました。
 恥じ入って後悔した村の人達は、ふたりのために、神さまが特別のお恵みをお与え下さるように祈りながら、墓を一つにして、主従抱き合ったままで葬りました。永遠に」

フランダースの犬
A DOG OF FLANDERS
1872年
マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー Marie Louise de la Ramee
菊池寛訳
https://www.aozora.gr.jp/cards/001044/files/4880_13769.html

キリスト教カトリックの自殺と葬儀、埋葬

カトリック教会は伝統的に自殺を、殺人と同じ大罪と見なしてきました。自分を殺すのも他人を殺すのも、同じように生命を司る神に対する重大な反抗と見なされたからです。1917年に発布された教会法典には、熟慮の上で自殺した者から教会での被埋葬権を剥奪するとの規定があります。自殺者のために葬儀ミサを行うことも控えられてきました。

https://hiroshisj.hatenablog.com/entry/20090203/1233622049

犬の埋葬、魂、パラダイス

 作者はパトラッシュを埋葬したかったようです。
 アニメのラストは果たしてあり得たのでしょうか。

アメリカの愛玩動物埋葬

 アメリカではフランダースの犬が書かれた時代からペットの埋葬がはじまりました。

1896年にマンハッタンの獣医事務所を悲しみに暮れた女性が訪れ、普通で無い要請をした:犬が死んだので埋葬したいと。同情した獣医師は北部のリンゴの果樹園の一部を提供した。それから同様の要望が殺到し、米国初のペット霊園Hartsdale Pet Cemetery & Crematoryとして70000頭以上の犬猫や他の動物が眠っている。1000以上の墓石を調べた新しい研究で、最初の埋葬から我々の友人との関係が劇的に変わったことが明らかになった。多くのペットが友人から本格的な家族に変わった。時とともに姓を与えられ、子どもとみなされ、天国に行ったと表現されるようになった

-犬猫は家族になった-そして天国に狙いを定める-第二次世界大戦後に
Scienceニュース
Dogs and cats became family—and got their shot at heaven—after World War II
By David Grimm Oct. 26, 2020
https://uneyama.hatenablog.com/entry/2020/10/27/161733

Dogs and cats became family—and got their shot at heaven—after World War II, gravestones reveal
https://www.science.org/content/article/dogs-and-cats-became-family-and-got-their-shot-heaven-after-world-war-ii

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余談

 飼い猫1頭で凍死をまぬがれたとのニュースがありました。
フランダースの犬が実話であったなら、ネルロは助かっていたかもしれません。なにせパトラッシュは猫よりも大きな体でしたから。

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