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前置詞の秘密! 使い分けで差をつける英語力

洋楽が続いたので、今日は英語のお話でもしましょう。あまり同じことばかりやってると飽きますから。

では、いきなり質問です。次の2つはどう違うでしょう。実際にはどちらも使われます。            

     die of cancer   vs   die from cancer


どちらも「癌が原因で亡くなる」ということですが、でも形が違えば、ニュアンスや意味合いが異なるはず。

一般には、cancer, coldなど病気・体の不調による直接的なつながりにはofを用い、overworkなど間接的なつながりにはfromを用いると考えられています。(現実にはあまり区別せず使われています。言葉は曖昧性と柔軟性があるので、そこまで厳格ではないのですが……..)

語彙意味論という学問領域の世界ではこれの説明を試みています。

of は「分離」を表す前置詞。その場合、所属関係がポイントで、全体と部分の関係ともいえます。例えばlegs of the tableと言えばテーブルに足が属している(テーブル本体と足はくっついている)ということですし、a lamp of the roomといえば、部屋にランプが埋め込み式か何かで取りつけてあり、外せないものということです。a lamp in the roomなら、外したり、移動可能で、部屋と言う空間の中にランプが置いてあるということになります。

ここからdie of cancerなら、cancerに直接属することになり、dieつまり死んだ原因の直接的原因がcancerだった、というニュアンスです。die ofはあくまでも死亡の原因を直接の所属関係でとらえていることから、本質的、近因的なものといえます。

コーパスで調べてみると、やはりdie from cancerもないこともないですが極めて稀で、圧倒的にdie of cancerが多いです。癌の場合、他の病気と比べ死との関連性が高く、多くの場合、発見時に余命何年というような直接性がついてまわることから、ofとの結びつきが強くなると考えられます。

一方、fromは「起点、出発点」を表す前置詞。よって、死亡の直接というよりはその原因をたどっていくと、cancerで体が衰弱したり、抵抗力がなくなって、あるいは余病を併発してやがて、死に至ったという“経過”のニュアンスが出てくることになります。

元来、fromは起源を示すので、時が経つにつれて、次第に対象物の形が変化していくという含みを持っているんですね。ここがofとの違いです。

よく似たものにbe made ofbe made fromがあります。このペアは、学校の熟語で習う定番ですね。思い出しましたか?では、違いは?

Wine is made from grapes.ならワインとかけ離れた材料grapesが加工され、形が変わって、最終的に液体のワインとなるというように、工程の経過が感じられます。Pasta is made from flour. や This cake is made from soy milk.などもそうです。

一方、be made ofなら材料と製品が直接的な関係にある時に使われることになります。そのため、This coin is made of gold.These shoes are made of leather.などに使われます。

で、昔、20名くらいのクラスの生徒にたまたまこの前置詞ofの用法を説明する機会があったんです。

       ......floors and a staircase made of wood.

「このmade of woodの箇所。なぜfromではなくofなのか」と聞いてみた所、原形をとどめていないのがfromで、形が残っているものがof.と優等生的に答えるものがいました。中学の時にきちんと勉強してきたのでしょう。いいですね。でも、これではofの持ち味が十分説明し切れていません。

そこで、”今日は、皆さんを語彙意味論の世界へいざないますよ~”と気合を入れて、揚々と黒板に向かって説明し始めたんです。きっと、みんな、“深いなー、へえーそうなんだ”と新たな発見や気づき(noticing)をしてくれているだろうと期待を込めて。で、ふと黒板から後ろを振り返ったら、

            ありゃりゃ!!!!

受講生が、机にうつ伏せになって、爆睡してるではありませんか。

前置詞ofの世界なんてどうでもいいのでしょう。バイトで疲れているんです。もう耳が完全shut out状態です。どうやら、語彙どころか「睡眠」の世界へいざなってしまったようです。ちょっと学術的な話をするとすぐこれです。いつものことですが。

でもね、たとえ、数人でも目を輝かして聞いてくれる受講生もいるんです。救いです。こういう人は伸びますよ。物事への好奇心、興味がある人ですから。しかし、最近そういう人減ってきたな。おそらく全国的な傾向かと。
とほほ.................................。

語彙意味論に興味のある方は以下の書籍がお薦めです。



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