脚本家は、孤独で不幸でなければいけないのか?|映画『追想ジャーニー リエナクト』
2022年に劇場公開され、高崎映画祭邦画ベストセレクションに選出された映画『追想ジャーニー』。
その第2弾となる『追想ジャーニー リエナクト』が2024年10月18日(金)に公開されます。
今回、ありがたいことに公開前に鑑賞する機会をいただき、PR記事を書かせていただけることになりました。
ぜひ多くの人に観てほしい!と思える素敵な作品でしたので、本日はこの作品の魅力や見どころを、わたしなりの感想とともにお伝えしたいと思います。
作品情報
あらすじ
本作は、制作にあたり実施したクラウドファンディングで目標金額の587%を達成した話題作。
多くのファンが待ち望んでいた作品であることがわかります。
スタッフ・キャスト
監督は、前作に引き続き数々の映画や舞台に携わる谷健二。
脚本は「演劇ドラフトグランプリ2023」で優勝を果たした劇団『恋のぼり』の作・演出を担当した私オムが担当しています。
また、豪華な顔ぶれが揃うキャストも見逃せません。
主演は『刀剣乱舞』など数々の舞台に出演する2.5次元のトップ俳優、松田凌。「舞台」をモチーフにした本作で、どんな一面を見せてくれるのか……期待が高まります。
他にも、
・樋口幸平(戦隊モノ出身、現在はドラマに引っ張りだこ)
・福松凜(ドラマ『下剋上球児』の出演で話題)
・新谷ゆづみ(アイドルグループ「さくら学院」出身)
・高尾楓弥(人気急上昇中のダンス&ボーカルグループ「BUDDiiS」)
といった、今注目の若手俳優たちがズラリ。
そして30年後の横田雄二役には、数々のドラマや映画で存在感を残す名バイプレイヤー、渡辺いっけい。
抜群の安定感で、作品を支えてくれています。
感想・印象に残ったシーン
※なるべく核心に触れないように書いていますが、ほんのりネタバレがあるかもしれません。
脚本家は幸せになってはいけないのか?
横田が「退行睡眠」を使って30年前に戻ると、そこは劇場のロビー。
公演初日、舞台上で脚本を書く30年前の自分の姿が……。
この作品の面白いところは「舞台」をモチーフにしているところ。
舞台上で、お芝居のように追想体験が進んでいくのが斬新です。
恋人を作る、結婚して家庭を持つ、病気の友人の側にいる……。
横田が人生でやり残した・選択を誤ったと思うことを、30年前の自分に「やり直させ」ていきます。
ただ、これはすべて退行睡眠という「夢の中で起こっている」出来事。
目が覚めたとき、現実の自分が変わっているわけではありません。
あくまでも、「自分を見つめ直す」ための、追想の旅(ジャーニー)に出る、というイメージです。
◇
冒頭、未来の横田が過去の横田に脚本を見せるシーン。
過去の横田に
「おもんな!!!」
と一蹴されるのが面白かった。
過去の自分にそんなん言われたらめちゃくちゃつらいけど、笑ってしまう。
「まだこのセリフ回し使ってんのかよ……」
「他に思いつかねえんだよ!」
「でも、このくだり面白いな」
「だろ?そこ面白いよな」
こういう自問自答、脚本書きながらわたしもよくやってしまいますね……。
脚本家を含むクリエイターは、
「幸せになってはいけない。孤独で不幸でないと良い作品は書けない」
とよくいわれます。
この作品は、
「それって本当なの?本当に、不幸でないといけないの?」
という疑問に、真正面から向き合った作品だと感じました。
作中にも、
「脚本家は幸せになったらいけないんだ」
「両方ってムリなのか。面白い作品を作りながら、人として当たり前の幸せを手に入れるって、やっぱりムリなのか」
といったセリフが随所に出てきます。
果たして本当に、不幸でなければいい作品は書けないのでしょうか?
だったら逆に、不幸だったらいい作品が書けるのでしょうか?
答えはおそらく「NO」。
実際、30年後の横田は自分を「不幸」だと思いながらも、いい作品は書けていませんでした。
不幸を過去の自分のせいにして、書けない責任を転嫁して、自分の中に閉じこもってしまっていたから。
彼に必要だったのは、そんな自分と向き合って「自分の人生を認めてあげること」でした。
「自分の人生を認める」。
それは過去に戻らなくても、今からでもできることなんですよね。
現に、目を覚ました横田は、ただ夢を見ていただけで、現状はなにも変わっていない。それでも、作品を書き上げて新たな一歩を踏み出します。
そう、未来を変えられるのはいつも『今』の自分だけ。
幸せだとか不幸だとか、関係ない。
これが、本作品がわたしに教えてくれた「答え」のような気がします。
あの話題作に通じるところも
この『追想ジャーニー リエナクト』の上映時間は65分。
映画としては短めですが、わたしも横田の追想体験を一緒に見守り、とても濃厚な映画体験ができました。
創作への向き合い方、クリエイターとしての生き方を描いた作品としては、『ルックバック』(原作:藤本タツキ、2024年)に通じるところがあるかもしれません。
作風はまったく違いますが、どちらも創作にかけるひたむきな想いや、創作に伴う痛みが描かれています。
『ルックバック』がズバズバと心臓を突き刺してくる「ナイフ」のような作品なら、『追想ジャーニー リエナクト』は心の中にそっと明かりを灯してくれる「ランプ」のような作品といえるかも。
脚本に限らず、なにかしらの『創作』をしている人にとっては共感できるところが多いはずです。
「リエナクト」とは、「歴史の再現・再演」を示す言葉なんだそう。
2022年に公開された『追想ジャーニー』の再演でもあり、横田自身の人生の再演でもある。そんな意味が込められているのではないでしょうか。
前作の無料視聴キャンペーン実施中!
公開を記念して、10月8日(火)~は前作『追想ジャーニー』をYouTubeで無料視聴できるキャンペーンを開催。
もちろん前作を観ていなくても楽しめますが、この機会に『追想ジャーニー』の世界にどっぷり浸かるのがおすすめです。
■無料視聴期間:10月8日(火) 18:00~10月14日(火) 17:59
■視聴URL:https://youtu.be/bHhL9qzEbEE
第2弾の主人公が「脚本家」なのに対し、1作目となるこちらは「役者」が主人公。
夢を追いかけたことのある人には、刺さるところが多い作品です。
62分の作品なので、忙しい方でも短時間で楽しめますよ。
前に進む勇気をくれる作品
今回ご紹介した『追想ジャーニー リエナクト』は、2024年10月18日(金)から渋谷HUMAXシネマ、池袋シネマ・ロサ 他で公開されます!
心温まる、そして「自分の人生はこれでいいんだ!」と勇気をもらえる作品です。
ぜひあなたも劇場で、追想の旅(ジャーニー)へ。