最近の考えごと -文学フリマについて-
秋が過ぎ去っていった。
紅葉が雨で落とされて、押し花のように地面に貼り付いている。
分厚い雲の下で、最近あったことをぼんやり考えている。
文学フリマがあった。
今回もたくさんの人が来場していて、賑わっていた。
最初に文学フリマに出たのは、いつだったか。。
調べたら2017年だった。
初めての文フリは友だちのお手伝いで行って、友だちのご好意で、売りたい本あったら売っていいよ〜
と言ってくれたので、友だちのブースの端っこで、本を売った。
今まで書いたものもあったが、はりきって新作を書いていった。
今のようにブースの装飾もせず、あらすじも書かず、コンビニでコピーした本を置いて、緊張して座っていた。
本が好きな人達が目の前を行き交い、一人か二人、気づいてくれた人が私の本を手に取り、読んでくれた。
目の前で読まれている間、読んでいる人の心に、今何が広がっているのか想像しながら、邪魔をしないように気配を消していた。
久しぶりにドキドキする感情が生まれて、感動していた。
文学フリマはそのまま終了となり、
私の小説は一冊も売れなかった。
友だちの売れ行きも芳しくなく(私よりは全然売れていたが)、
二人とも耳鳴りの中でじっと座っているような気分だった。
一人で無言で遠くを眺めたかった。
出来たての新作がそのまま家に帰ることを思うと切なくなって、隣のブースにいた出店者の方に、「もしよかったらこれもらってください…」と言って小説を渡した。
(とても喜んでくださって、後日お礼まで言いにきてくださった…素敵なひとだ…)
その日手元から離れた小説は、その一冊だけだった。
そんなことがあった帰り道、私は次の文フリのことを考えていた。
心はのんきにも、全く折れていなかった。
売れなかった小説と小さな悲しみを分かち合いながら、売れなかった原因を考えていた。
ブースでアピールしきれなかったからだろうな〜。と気楽に思っていた。
それから5年経ち、印刷所に入稿するようになり、宣伝もするようになり、昔よりもたくさんの方々にお越し頂いて、本の感想なども頂いている。
本当にありがたく、本当にかけがえがない。
幸せである。
文学フリマに誘ってくれた友人に、心から感謝している。
ぼんやりと考えごとをしていたら、友人に感謝する結末になっていた。
これからも一つ一つの文学フリマを楽しんでいきたいと思う。
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