夜鳥との出会い。真夜中のコンビニ➆
夜鳥と会ったのは深夜2時。
アカネ杏。私は、離婚をしてすぐに深夜のコンビニで働いた。昼間は普通の事務員。たまに住む深夜のコンビニは、マジで冷え切っていた。ルールルル♪北国のキツネは何処だと探してみても、一緒に働くメンズがエアコンの温度を下げるばかり。寒さのせいか、なぜにおでんの匂いがするのか?エアコンの温度をこっそり上げにいく。
レジ前を確認するも、おでんはない。
真夜中のコンビニ。
深夜の労働とはこういう匂いなのか。
季節で言えば9月だった。
離婚をしてすぐに働いたということは、
結婚をしていたということになる。
結婚して離婚して深夜のコンビニ。
ははは。何やってんの。
『私を大切に思う人などいないのだ』
結婚の中見、実態がどうであれ。
寒波の襲来、北国でなかろうが。
深夜の睡魔、仕事になりません。
思考の回路、亡霊ではないかと。
眠たすぎて頭ん中に幽霊がいっぱい住んでるみたいだった。。
店内には、
♪多分、今も嫌いじゃないの、とか何とか..
言い切らないのが美しさみたいな歌が流れていた。
イラッとするのは、疲労と睡魔のせい?
多分じゃなく..はっきりしろ。
好きか嫌いかしたいかしたくないのか..ぶつぶつ
深夜の異常な睡魔のリスク。
はじまるぶつぶつ。精神破壊されそう。
いつ倒れてもおかしくはなかったけれど、
夜鳥が現れるのは2時14分。
日曜日から月曜日に変わったam
ピンコーン♪と来店者の音がすると、私は時計を見る。深夜のお客には要注意している為の習慣だった。
トイレに入ったまま出てこない人。
コンビニ内でたむろする人たち。
エアコン利用の為、長居する人。
喧嘩を売る人。
それでも、私が働くコンビニは客層が良い方だと、一緒に働くメンズが言っていた。彼はコンビ二のプロだ。彼の働きぶりで、コンビニ店員への視点が変わったのは間違いなかった。動きと視点とタイミングが素晴らしかった。私だったらコンビニ指名をする。一番プロ意識を感じたのは、レジ前でウトウトする私を見ても、注意をしないことだった。(エアコンの温度設定が低すぎることを除いて)
夜鳥が現れる前の私は忙しくて退屈だった。
品出し、ドリンク補充、掃除はトイレ、床、ゴミ箱、コーヒーメーカー、外回りのチェックに灰皿、揚げ物準備...。深夜のコンビ二なんて暇なんでしょ?は大間違いだったことに気づく。
多忙で退屈。
深夜の労働。
単純な労働。
睡眠の負債。
『この世に私を必要としてる人などいないのだ』
深夜に多忙であることは
心が退屈になるということ。
自ら心をブロックしにかかる。
真夜中へ向かうほど強くあるために。
馬鹿らしいかもしれないけれど、
本気でそういうことなのだ。
いちいち心を動かしてはいけない。
いちいち心を動かすとはこうなる。
『この世に私を守ろうとする人などいないのだ』
私は、お客に名前を付けて過ごした。
マルボロの人、ジャンプの主婦、カフェオレMサイズの人、飴ちゃんくれる人、スイカの人、、、
あ、夜鳥がきた。
「あの..すみません」
「へっ?あ、あ、すみません、寝ちゃった」
レジ前で男性に起こされた私。夢見てた?
男性は無言で、商品を置いた。
•ささみチキン
•リポビタンD
•シナモンチョコ🍫
「あと303番」
「え?」
「303番」
「え?」
2回ほど繰り返した後、
やれやれとした表情で、
(とは言ってもマスクをしているから見えない)
「オレンジと黒のタバコ、それ、一番上の」
と指差した。
その瞬間に、目が合った。
クラゲの眼
はじめてみた眼だった。
ギラリと光るクラゲの眼。
あの部屋で週に2回行われること。
ここからはじまるとは思ってもみなかった。
その黒光りした瞳は、小石が埋められたような疲れを発していた。百円の恋🎬に出ていた新井浩文を疲労させた感じ。髪はもう少し長かったけど。
リポDじゃ効かないと思った。
「レジ袋はどうしますか?」「入れて」
深夜の労働。
単純な労働。
終わらない私は
眠ることを拒んだからここにいるんだ。
眠ってしまったら
終わってしまいそうだったから。
それほどに、離婚というものは、
衝動的に見えて、労働的で債務に近く、、
いつもこんなことが渦巻いていた。
チキンチキンクラゲクラゲ
クラゲの眼が光るー♪
ついに睡魔ピーク。
思考から幽霊飛び出てきた。
外へ出て気分転換の2時30分。
ちょうど外掃除に灰皿掃除の時間だ。
ギャァー!
私は暗闇に光るものを見て悲鳴を上げた。
さっきの新井浩文が、ライターを付けた瞬間だった。チキンを食べ終えリポDは..?飲み干したようだ。
タバコを吸う彼からシナモンの匂いがした。
通常は、黄色くて白いキセキレイ
人間に対する警戒心が強い。
主に渓流などの水辺に棲息する
地鳴きは「チチン、チチン」
縄張宣言、飛翔時に鳴くキセキレイを思い出した。
多分、鳴き方だ。チチン、チキン、チチン、
チキン⁈
「チチン、チチン」と鳴くキセキレイ。
「チキン、チキン⁈」を食べた新井浩文..?
店内の時計は2時35分を差していた。
かれに《夜鳥》という名前を付けた。
ささみチキンを買ったせいか、
チキン、チキンと鳴いているみたいだったから。
クリアで黒いキセキレイ。
かつ、クラゲの眼を持つ。
嘘はつかないタイプだと直感的に思った。
飛べない夜鳥、ふらふらして消えてった。
名前もらえて嬉しいかなぁ?
でもその鳥じゃなくて、ささみチキンだけどね。
絶望とかでもなく、
希望などでもなく、
ただただ夜だった。
夜鳥とアカネ杏の出会いは夜だったように。
とても深い夜の話しよ。
深い夜の回があってからの指定部屋へ─
深夜のコンビニにはまだ続きがあるの。
世界の片隅、真夜中のコンビニで、
こんな出来事ってあるんだよ。
そういうの分かります...か?
タバコの匂いとシナモンチョコ。
空気の中に消えてった。
夜鳥はもういない。
店内に戻らなきゃ、私。
店内はやっぱり北国で、
おでんの匂いがした。
エアコンの温度を確かめなきゃ。
『私の体のみでも必要とされるなら愛おし?』