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「世界中にあなたの家を」Not A Hotelの快進撃

2020年4月、日本発の革新的な不動産所有体験を提供するサービスとして創業したNot A Hotel。「世界中をあなたの家を」をコンセプトに所有している別荘を自分が滞在しない期間は他のオーナーに貸し出すことができるという斬新な仕組みです。

創業者の濵渦伸次(はまうず しんじ)さんによると、別荘は年間30日ほどしか稼働していないことにヒントを得たとのことです。

別荘は年間30日くらいしか稼働しないということも知っていました。ということは、残り330日を僕らがホテルとして運用すればいい。そうすれば、ホテルをつくる側は金利を安く調達できますし、オーナーさん側にも無駄がなくなります。

ここで重要なことは投資物件ではないということです。あくまで別荘を所有して滞在することを楽しむ。自身が滞在しない期間をホテルとして貸し出すことで、維持管理費が賄える。家賃収入が目的ではない。

もし、別荘が必要でなくなったり、手元資金が必要になった際は不動産として売却することも可能。その際、不動産価値が上がっていれば購入した金額より高く売却できる可能性もあります。

繰り返しとなりますが、創業者は「投資物件として購入しないでください」と呼びかけています。家賃収入や売却益を目的にするのではなく、あくまで所有と消費(滞在)を楽しんでくださいと。

従って、賃料に関しては、滞在しない分を運営サイドに貸し出すことで固定収益が得られる仕組みにしているそうです。つまり、稼働の責任は運営サイドが負いオーナーは稼働率を気にせず、所有と消費に専念できることになります。

また、他のNot A Hotelと相互利用ができる仕組みを採用しており、世界中に物件が増えれば、色んな別荘に滞在することが可能となります。それが「世界中にあなたの家を」に込めた想いです。

所有と消費に振り切っている分、立地や建築にこだわっているそうです。著名な建築家を起用し、わくわくし気分が上がる建築を実現する。単に高級で華美というのではなく、最先端のテクノロジーと豊かさが満喫できる。そういう価値観を共有できる方にオーナーになって欲しいとのことです。

現在は、海外の富裕層向けの販売を強化しており、英語版サイトの開設や、世界的に著名な建築家とのコラボレーションによって、国際的な評価が上昇しているそうです。創業からわずか4年で累計の契約高が270億円超に達するなか、今期200億円の販売目標のうち、数十億円を海外からの売り上げで占める見込みとのこと。

創業者は、海外市場開拓の3ステップを以下の通り説明しています。

第1ステップはNOT A HOTELの所有者が自身の宿泊権を世界中の提携ホテルの宿泊権と交換できるシステムとして今年の4月から提供しています。厳選されたラグジュアリーホテル、例えばリッツカールトンなどの高級ホテルチェーンと提携しており、所有者に幅広い選択肢を提供しています。

第2ステップは現在取り組んでいる段階で、NOT A HOTELの日本国内の不動産を海外に向けて販売することです。この戦略はすでに成果を上げ始めており、海外からの売り上げが急速に成長しています。

最後の第3ステップは、NOT A HOTELが海外で直接、不動産を開発、運営していくことです。この段階はまだ将来の計画ですが、グローバル展開の最終目標として位置づけています。

更に、積極的な広告展開をすることなく、主にクチコミとSNSでの拡散をドライバーに、この成果を実現しているそうです。

この急成長の背景には、世界的に有名な建築家とのコラボレーションが大きいと創業者は解説します。クリエイティブディレクターのNIGO氏がディレクションを手がけるNOT A HOTEL TOKYOは、発表後わずか2日間で1,400件もの海外からの問い合わせがあったそうです。

7月23日に公開されたYouTube動画は、3か月経った現在4万回弱の再生となっています。

クリエイティブディレクターNIGO氏がディレクションする、断崖絶壁に立つ唯一無二のヴィラ。東京湾と富士山を一望できる絶景の敷地に誕生するのは、谷地に埋まるように崖と一体化した建築と、その上で圧巻の存在感を放つ巨大彫刻。NIGO氏のインテリアやカルチャーにおけるこだわり、そしてアーティストをはじめとした幅広い交友関係から生まれるコラボレーションが詰まった、世界中のクリエイティビティが化学反応を起こす究極の空間。

という説明と共に映像を観ると、私ですらこんなところに滞在してみたいという気持ちになりました。

海外からの需要はアジアの富裕層よりも欧米からの問い合わせが圧倒的に多いそうです。日本での別荘保有率が0.7%である一方、海外、特にアメリカやヨーロッパでは別荘保有率が約7%と高いことや、タイムシェアの文化が根付いていることが大きい様です。

また、同社の建築チームは約30名で構成されており、そのうち数名が海外のメンバー。彼らはもともと日本在住だったわけではなく、同社で働くために移住してきた。特別なリクルーティング活動をしているわけではなく、優秀な人材が自ら応募してくるとのこと。

創業者は以下の様に今後の展望を語っています。

NOT A HOTELが日本で成功しているのと同じように、海外の市場で一から事業を立ち上げるのは容易ではないと認識しています。そのため、すでに現地で事業基盤を持つ企業を買収し、そこにNOT A HOTELのビジネスモデルを導入することで、より効率的かつ効果的な海外展開が可能になると考えています。

本事例は、日本のスタートアップがグローバル市場で成功する際の事例として大いに参考になります。注目すべきは、日本の伝統的な強みを活かしたビジネスのグローバル展開の可能性。インターネットやテクノロジー企業に偏重せず、日本の食文化やエンターテインメントなど、独自の文化的資産を活用したビジネスの可能性を示唆しています。

シリコンバレー型のモデルに追随するのではなく、日本独自の強みを活かし、世界市場のニーズに応える革新的なビジネスを生み出す。日々、閉塞感に苦しむ日本企業にとって大いなる希望をもたらしてくれる事例として紹介させて頂きました。

■下記の様に、ジャパニーズアートの文脈で海外向けに発信されています。

■動画版は、こちら。

<追記(10/28)>

Not A Hotel はNFTも販売しています。現在は、1次販売は終了し2次流通のみで入手可能。

NFTは2021年~2022年にかけて、主に投機を目的に活況を呈しました。「Not A Hotel メンバーシップNFT」の第1期発売は2022年8月なので、まさにNFTバブル真っただ中。

私も当時はNFTプレイヤーでしたので、この発売は記憶しています。下記の通り、高額だったので、これは手が出ないと静観していました。

改めて、Not A Hotelの「投資ではなく所有と消費を楽しむ不動産」というコンセプトを理解した上で、このNFTを評価すると、まさにその通りの設計になっています。リアルの不動産と紐づいた証明書。RWA(Real World Asset:現物資産)に分類されます。

更に、Not A Hotelは、不動産を裏付とするRWAトークン「NOT A HOTEL COIN」の発売に向けてIEOの準備中とのこと。トークンに紐づいたDAO(NOT A HOTEL DAO)も立ち上がるそうです。

これらは、投機目的とは異なる、NFTやブロックチェーンならでは技術特性を活かした新しい活用法として期待できます。

それと時を同じくして、日本最大のNFTコレクションであるCNPのファウンダーであるRoadさんが、「NFTの本質的な話ができるタイミングが到来しました」と題したnote記事を公開されました。

投機商品や、投機と密接に結びついたアート文脈ではなく「所有し、担いで、仲間になる証明書としてのNFT」こそが、NFTの本質的な用途であり、NFTの未来であると主張しています。

Not A Hotelが実現しようとしている「投資ではなく、所有し消費する不動産」。NFTにおいて似たような挑戦に挑んでいるCNP。シェアリングエコノミーから所有エコノミーへの揺り戻しが、密かに進行しているのではないでしょうか?

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マルセロ| 事業プロデューサー
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