【書籍紹介】スモールビジネスの教科書 武田所長著
大企業ともスタートアップ(ベンチャー)とも違う、スモールビジネスに特化した書籍。脱サラして起業したいという方が、目指すべきはスモールビジネス。スモールビジネスで生活基盤を整えてから、物足りない人はスタートアップにチャレンジする。そんな現実的な戦略を指南してくれる1冊です。
誰もが実現したことのない課題を解決したい
新しいテクノロジーを使って一発当てたい
社会貢献になるビジネスをやって称賛されたい
つい、こんなことを考えて起業しがちではないでしょうか?それに対し、著者の武田所長は下記の様に言い切ります。
■スモールビジネスは属人性が前提
手持ちの武器を明確にして事業領域を絞り込む
競争力の源泉は「能力」「ネットワーク」「専門知識」
■スモールビジネスを成功させたいなら「賞賛されたい」という邪念は捨てるべき
「褒められたい」というビジネス自体に不要な欲求を経営者自身が排除することにより、成功率を高めることができる。褒められたところで、儲からないのでは意味がない。
取り組んでいること自体を称賛されるビジネスは危うい。市場機会に対し過剰な参入を招く。困難な課題に挑むことが称賛されるということは、裏を返すと成立しづらいビジネスであると言える。
百戦錬磨でスモールビジネスを成功させて来た著者ならではの金言ですね。
■ビジネスには「課題解決型」「欲望実現型」2つのアプローチが存在
課題解決型:顧客は課題を認識している前提で、その解決策を提案する
欲望実現型:こうありたいという姿はあるが、そこに辿り着く道筋が見えていない状況に対し伴走する
■課題解決型ビジネスが成立する3条件
顧客は課題を認識している
課題は解決できる(ケーパビリティを有する)
顧客はその課題解決にお金を払う
3番目の「課題解決にお金を払う」がとても重要。好きな事を仕事にすると、感謝はされるけれど、お金を払ってもらえない。それでも喜んでやるというやりがい搾取になりがち。
■儲かっている会社を探すための情報チャネル
1.IR(会社四季報)
2.非上場企業の決算(官報)
3.投資情報(VC)
4.企業によるリリース
5.業界紙
■新規性の罠
新規性が高い市場の場合は、大量のプレイヤーが落とし穴に落下し、即死する。死を避けるためには、先行者が失敗してしまった原因を十分に把握し、避ける動きが必要。
■不満解消より、欲望実現ビジネスを目指せ
不満を除去するというビジネスで除去できなければクレームとなる。欲望実現の場合、そこを目指す過程自体がビジネスとなる。
(例)習い事は、新しいことに挑戦したり、新しい仲間ができること自体が価値になるので、必ずしも結果が出なくてもお金を払い続けるということが起きる。
これは、ABC Cooking Studioに関し、全く同じ話を良く聞きます。通っても、料理はあまり上達しない。通うことが自体が楽しい。ガラス張りの都心のおしゃれなキッチンで、可愛いエプロンをつけて、似た価値観の女子とおしゃべりしながら料理を習う、その体験に価値があると。
■スモールビジネスの鉄則
小規模であるが強いニーズ(バーニングニーズ)に着目する。大手企業が敢えて見過ごした小規模のニーズを拾いに行く。
大企業は、小さな市場では割に合わない。機会に気づいていても、社内を説得し、稟議を通し、決裁を得るまでに至らない。
■敢えてスケーラビリティ(拡張性)を無視する
大きな市場規模があり、成長性があり、自社の強みが活かせ、参入時に将来の収益性に対する十分な根拠があるなどという夢のような事業を発見することは不可能に近い。
スモールビジネスでは、市場規模と成長性に目をつむることで、事業機会の発見にフォーカスする。
■飛び地への参入
自らの経験とナレッジが活きる領域で勝負するのが原則
飛び地に参入する際は、業界の水先案内人をパートナーとする。業界の深いナレッジとコネクションをパートナーに求める。自身は戦略の構築と実働を担当する
以上、私に響いた点をメモ的にご紹介しました。後半は、具体的な事業戦略立案方法、戦略妥当性の検証方法。営業(to B)の際、正論ではなく、企業サイドのカウンターパートのwin、更にはその上長のwinにミートさせる重要性等、極めて実践的なノウハウが語られています。
本書を通して、著者は一貫して美しい理念や理論より、実践、行動、事実を重視せよと説いているのが印象的です。
最後に、領域選定の際、理論的なアプローチよりも、実際に儲かっているかを重視せよというのは、以前、青汁王子が更に実践的な方法を紹介されていたのでご紹介します。