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【書籍紹介】ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階

動画版は、こちら。

ビジョナリー・カンパニーシリーズ第3弾は、輝かしい成功を収めた企業がどのように凋落していくのかにフォーカスした作品。前2作同様、膨大な資料から一定の条件を満たす企業を抽出し(比較対照企業含め)、定量的な分析をベースに執筆されました。

本書で定義されている「衰退の5段階」は下記の通り。

①成功から生まれる傲慢
②規律なき拡大路線
③リスクと問題の否認
④一発逆転策の追求
⑤屈服と凡庸な企業への転落か消滅

成功から生まれる傲慢」とは、「たまたまかも知れない成功法則にしがみつき、変化を拒むこと」と「成功法則は万能で何をやっても成功すると過信すること」の2つを意味するが、意外にも大半の事例は後者にあてはまるそうです。

規律なき拡大路線」とは、上述の過信から、業容を拡大しつづけ、業績拡大の影に隠れて見えない様々な綻びに気がつかない。多くは、業容の拡大に人材の補充が追いつかない。成長自体が目的化する。

リスクと問題の否認」とは、上述の綻びに薄々気づいているが、敢えて見ない。あるいは、屁理屈を重ねて強引に正当化する。

そして第4段階の「一発逆転策の追求」。多くはこれが決定打となり、「屈服と凡庸な企業への転落か消滅」という末路を辿る。

第4段階の一発逆転策の追求で短期間、業績が回復することがあるが、長くは続かない。希望がついえた後に次の希望もついえ、その次の希望もついえる。第4段階に陥った会社はあらゆる種類の新しい計画、新しい流行、新しい戦略、新しいビジョン、新しい文化、新しい価値観、新しい突破口、新しい買収、新しい救世主を試していく。ひとつの特効薬が効かなければ、つぎの特効薬を探し、さらにつぎの特効薬を探す。凡庸さを示すのは変化を望まないことではない。一貫性のない姿勢が慢性化していることである。

最も象徴的な事例がHPとIBMとの対比。業績低迷から抜け出すべく、カーリー・フィオリーナというスター経営者を抜擢し、華々しくメディアに取り上げられ、次から次へと革新的な打ち手を繰り出していったHP。

一方、IBM社長に就任したルイス・ガースナーは、「派手なビジョンはいらない」と宣言し、緻密な分析に基づいた中長期の戦略を立案。適切なポジションに適切な人材を配置。貢献と結果に基づいた報酬と昇格の制度を徹底。メディアへの取材は極力避ける。あまりに正攻法で地味な打ち手ばかりなので、メディアから激しい批判を浴びるが、全く動じない。設定したゴールに向けて一歩一歩前進する。

一発逆転を狙い、ひとつの救済策が失敗すればつぎの救済策に飛びつき、特効薬が効かなければ次の特効薬を探し、希望がついえた後につぎの希望もついえ、その次の希望もついえるというサイクルから抜け出さなければならないことをガーズナーは理解していた。問題にぶつかった企業が外部の経営者を招聘するとき、通常は「助けてくれ。抜本的で革命的な変革の担い手を求む。あらゆる点を変えてほしい、「一刻も早く」と叫んでいる。指導者がこの見方を受け入れた場合、会社は第4段階から抜け出せなくなり、業績の反転を達成できないだろう。ガースナーがすばらしいのは、この枠組みを受け入れなかったことだ。

本書を通じて一貫して貫かれている考え方が、「成功は努力や実力だけでなく、運も大きく作用。未来永劫通用する成功の法則はなく、変えてはいけない基本原則と、時代に合わせて進化させていくべき点をきっちり見極めることが重要。凋落を避けたいならば、常に謙虚に学び続けること」

最後は、この引用で締めくくりたいと思います。

強烈な敗北を喫するのはやむをえない。永続する企業や社会団体なら、その歴史の中でほぼかならずそういう時期がある。だが、長期にわたって苦闘する価値があるのは価値観と目標があるからであり、これを放棄してはならない。失敗とは外的な状態ではなく、心の状態である。成功とは、倒れても倒れても起き上がる動きを果てしなく続けることである。


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