完全教祖マニュアルに学ぶ「宗教OSとカルト理論」がマーケターの必須科目に
「完全教祖マニュアル」という書籍、ご存じでしょうか?
以下、Amazon書評より。
これを読むと即教祖になれる実践的な指南書です。というのは冗談で、娯楽書かつマーケティングの実用書として読むのがお薦め。
お薦めの理由は、以下の2点。
キリスト教、ユダヤ教、イスラム教、仏教等の世界の主要宗教の概略がすっと理解できる(これまで解説書の類を何冊かトライしましたが、なかなか最後まで読み切ることができませんでした)。
コミュニティーマーケティングに関する理解が深まる。コミュニティー運営とは、共通の価値観という教義を浸透させ、交流を活発化させ、コミュニティーの価値を高めていくこと。その手法が体系的に示されている。
そして「コミュニティーの価値がコレクションの価値に直結する」と言われるNFTの世界。まさに、この教祖理論が随所に活かされています。
■不用品の需要を生んだか?
■免罪符は売れているか?
■寄付金の集め方に工夫は凝らしたか?
■寄付金は集まっているか?
本来、価値のないものに価値をつけて流通させる。免罪符は、それの最たるもの。では、それは詐欺なのか?というと、そうとも言えない。信者は免罪符を購入し、心が救済される。その対価として納得のいく価格であれば、誰も不幸になりません。
では、その免罪符が転売できたら?転売することで価格が上昇したら?転売目的で購入する人が出てきたら?結果、高値掴みをして大損する人が出てきたら?
話が逸れて来たので、元に戻します。
今回、完全教祖マニュアルを読むに至ったのは、Podcast 番組「Off Topic」で「希薄化されたカルト社会と宗教の重要性」という興味深い放送を聴いたのがきっかけ。
伝統的宗教の影響力低下と新興宗教の勢力拡大。米国では、ついにキリスト教を信じる人の割合が過半数を切った。代わりに勢力を拡大しているのが新興宗教。
ただし、ここで言う新興宗教というのは、必ずしも宗教の旗を揚げていないものも多い。例えば「アップル教」や「ディズニー教」。マスに浸透したメジャー宗教が衰退し、各人が価値観に共鳴し自らの意志で入る新興宗教へと移行。
この宗教シリーズは3部作となっています。宗教OSと捉えると国家もメディアもサイエンスすら宗教と言える。
テイラー・スウィフトは宗教OSの大成功モデル。コンサートは信者が集う教会。ストリーミング、CD、映画等のメディアを駆使し、「ファン度」の異なる信者を包摂していく。オリジナル音源をレーベルに奪われ、テイラーズ・バージョンとして再録した事件は信者の結束を固めることに寄与。
摩擦を作る
サードプレイス化
ブランドのイデオロギー化
カルトの民主化
等のキーワードが次々と紹介され、カルトリーダー的CEOの勃興について語られています。
消費財のマーケティングが私の本業ですが、技術の進歩により、商品スペックのみで差別化することは日に日に困難となっています。
一方で、その商品を支持する「情緒価値」であったり、その商品を通じた人々との繋がり(コミュニティー)の様な「付随価値」が相対的に重要性を増しています。
今後、この「宗教OSとカルト理論」は、マーケターが習得すべき必須科目になるのではないでしょうか?