【書籍紹介】「リーンイン:女性、仕事、リーダーへの意欲」シェリル・サンドバーグ著
本書は、Facebook(現Meta)のCOOであるシェリル・サンドバーグ氏によって2013年に書かれた、女性のキャリアと職場におけるリーダーシップに関する著書です。ビジネス界における女性の地位向上と、職場での平等を推進するための指針として広く読まれ、世界中で話題となりました。
著者について
シェリル・サンドバーグ氏は、テクノロジー業界で最も影響力のある女性の一人として知られています。ハーバード大学を卒業後、Google社の副社長を経て、2008年からFacebook(現Meta)のCOOとして活躍しています。彼女の経験と洞察に基づいて書かれた本書は、自身のキャリアを通じて直面した課題や、観察してきた職場の現実を反映しています。
また、本書の中でグーグル社長のエリック・シュミット氏が、入社を迷うサンドバーグ氏を口説いた際のセリフ「もしロケットの一席をオファーされたら、どの席かなんて訊かないだろ。すぐ乗り込むはずだ」も紹介されています。
本書の主要なテーマ
1. リーンインの概念
本書のタイトルでもあるリーンイン(前に乗り出す)という概念は、女性がキャリアにおいて積極的に機会を掴み、自信を持って前進することを意味します。
著者は、多くの女性が無意識のうちに自らの可能性を制限していると指摘し、そのような内なる障壁を乗り越えることの重要性を説いています。
2. 自信とアンビション
著者は、多くの女性がインポスター症候群(自分の成功や能力に自信が持てない心理状態)に悩まされていることを指摘します。女性が自信を持ち、自分の価値を認識することの重要性を強調し、女性がより大きな目標に向かって挑戦することを奨励しています。
3. ワークライフバランス
仕事と私生活のバランスは、本書で取り上げられる重要なテーマの一つです。著者は、完璧なバランスを追求するのではなく、状況に応じて柔軟に対応することの重要性を説いています。また、パートナーとの家事や育児の分担についても言及し、家庭内での平等の重要性を強調しています。
4. メンターシップとスポンサーシップ
キャリア形成において、メンターやスポンサーの存在が重要であることを指摘しています。特に、単なるアドバイスを超えて、実際のキャリアアップの機会を提供してくれるスポンサーの重要性を強調しています。男女問わず、ビジネス界で成功している人は、有力なスポンサーによるバックアップを得ています。
一方、メンターをみつけることは容易ではないと警鐘を鳴らします。自身の経験も踏まえ、ほぼ初対面の人にメンターになって欲しいと頼むことは失礼な行為で、逆効果。
メンターを師匠だとすると、弟子にあたるのがメンティー。さまざまな研究で、メンターは実績と将来性でメンティーを選ぶと指摘されています。
メンターとメンティーの間には、感情的な強い結びつきが必要である。これは、こつこつと積み重ねてきた人と人との本物の関係から生まれるのであって、それは双方が同時に感じとることが多いと著者は説明します。
5. ネットワーキングの重要性
著者は、キャリアにおけるネットワーキングの重要性を強調しています。特に、同じ志を持つ女性同士のネットワークづくりが、互いのサポートや情報共有に役立つと述べています。
6. 交渉スキル
多くの女性が給与交渉や昇進の交渉において消極的になりがちであることを指摘し、積極的に自分の価値を主張することの重要性を説いています。
所感
本書は発売当時話題になったのですが、正直、あまり興味を持てませんでした。勝手ながら、「きれいごと」を書いた本であると先入観を持ってた為です。
突如、本書を読もうと思ったのは、書籍「スタンフォードの権力のレッスン」デボラ・グルーンフェルド著の中で、著者がサンドバーグ氏のことを絶賛していたことがきっかけです。
本書を読んで率直に驚いたのが、「え!?米国でも、まだこんなに女性差別があるのか?米国人女性も、こんなにインポスター症候群に苦しんでいるのか?」ということ。
私自身、2年間米国に駐在し、女性が普通に活躍し、あたりまえの様に男性と対峙している様子を実体験していたからです。昇進時にハンデがあるという話なら理解できますが、遠慮や自信のなさから男性と同様に意見表明をすることができないという話は新たな発見でした。
加えて「女性の敵は女性」という話は米国にも存在するという話も学びとなりました。自信に満ちた有能な男性は昇進で優遇され、異性からもモテる。一方、優秀さを全面に出した女性は、男性からモテないだけでなく、同性からも嫌われ、昇進の妨げとなる。
日本に比べ、遥かに女性が活躍している米国だから、優秀なサンドバーグ氏が普通に努力をして今の地位を獲得したくらいにしか思っていませんでした。その裏に数々の「女性の地位向上」に向けた戦いがあったことを知れ、本書を読んで本当に良かったと思いました。