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小説「大きな桜の木の下で」2

第3話     幹

一年生最初の夏休みに入り
僕は久しぶりに、平和な時間を過ごしていた
誰の目にも触れることなく
人間関係に悩むこともない
ただクーラーの効いた部屋で、自分の好きなことに没頭できる。
僕にとって長期休暇とは、至福の時間だった。
今日もいつも通りパソコンを開きゲームをしようとする、しかし、ふとカレンダーが目に入った
無限に思えた夏休みも、もう半分を切っていた
(いくらなんでも、そろそろ宿題やらなきゃ、まずいよな、休暇明けにテストあるらしいし)
そして、終業式からそのままになっている、通学鞄を開き、宿題を取り出していると、
あることに気づいた、
(あれ?数学のノートがないぞ?、、、、しまった!
教室の机の中だ)
慌てた僕は、すぐに身支度を整え玄関を出た
夏の重い湿気と太陽の強い日差しが
僕を迎え入れた
(はぁ、これだから夏の外出は控えてたんだけどな)
物の数分もしないうちに、僕の体からは汗が噴き出ていた、そうしてしばらく歩いて
やっとの思いで、学校にたどりけた
(はぁ、やっとついた、地味に遠いんだよな
この高校)
昇降口から、校舎に入り、自分のクラスに向かう途中、いろんなクラスで三者面談が行われていた
(そーいえば、三者面談だったけ、、、、僕いつだったかな)
そんなことを思いながら自分のクラスに向かった

幸いにも、僕の教室で、面談はおこなわれていなかったため、スムーズにノートを回収できた。
教室の窓から日差しが差し込んでいる
なんとなく、窓から外を覗いてみる
運動場の黄色い大地は、夏の日差しを受け輝き
木々は、光を得ようと空に向かい、一心不乱に手を伸ばしている
広がる青の中の遠くの方に大きな入道雲が一つ、まさに夏の日の光景がそこにはあった。
(夏ならではの、この景色、、、、嫌いじゃない
暑いけど、、、、)
その時、視界の片隅で何か動いた、
それは、桜の木の方だった
(なんだ?見間違いか?あそこの曲がり角に誰かいたような、、、、)
少しだけ気になった僕は、教室を後にし
桜の木の方へ向かってみることにした。

もう何度も曲がった曲がり角、そこを曲がった先には、大きな桜の木、そしてその下には
小さな白い木製のベンチ、そしてそこには
いつもと同じのように彼女が座っていた、、、、って、
(????なんで?今夏休みだよな?どうしてヨシノが?)
僕は混乱した、いくら桜が好きだからといって
夏休みまで見にきているのか?と
そこで僕は、声をかけてみることにした
「ヨシノ、、、、?何でいるんだ?」
すると彼女は、驚きながら振り向いた
振り向いた彼女の顔は、泣いた後のように見えた
「え、、、、優一、、くん?どうして??君もいるの?」
「僕は、、、、夏休みの宿題を学校に取りにきて、、
教室から窓の外を見てたら、誰かがこの角を曲がっていった気がして、、、、それで」
そう言うと、
最初こそ茫然としていた、彼女の顔がみるみる笑顔に変わっていった
「へぇぇ〜、そーなんだー、私はてっきり私にあいたすぎてここにきたのかと思っちゃったなぁ?」
「な!?そんなことあるか!偶然だ偶然!」
「むーわかってるよぉ、真面目だなぁ君は」
「それより、ヨシノこそどうしてここに?」
「ん?わたし?あーー、三者面談だよ
今、ママと先生だけでお話ししてるの!
だからここで待ってたところ!」
「あー、、、、そうだったね、今日は、三者面談だった忘れてた、、、、ていうかさ、、ヨシノどうして目が赤くなってるの?」
「え!?あぁ、これ?さっき大アクビしちゃってさぁ、あははは、涙いっぱい出てたんだよね」
(嘘だ)
何度も何度も彼女と話していた、僕はわかる
これは嘘をついている時の顔だ、
おそらく三者面談で何か言われたりしたのだろう
進路のこととか、厳しいことを言われたんだろう
教員というのは、時に厳しいから、、、、
「、、、、僕でよければ、、、、えっとその、話は聞くけど、、、、」
とっさに僕は言っていた、初めてだった、人のために話を聞いてあげると言ったのは、、、、自分でも自分に驚いていた。
すると彼女はますます笑顔になって言った
「ええーーどうしたのさぁ、優一くんらしくないい!今日はなんか優しいじゃぁん、もしかして、、、、私に恋してるのぉ?ンフフー」
「いや、どこか悩んでそうに見えたから、、、、」
「、、、、、、、、そっか、私そう見える?」
「、、、、うん」
「そっか、あははは、君に隠し事はできないね
さすが、毎日喋っただけはあるね、、、、、、、、
よし!!じゃあ聞いてもらっちゃお!!
君もそんなとこでぼさっと立ってないで
ここ座んなよ!ほらほら!」
そう言って彼女はいつものように、
自分の隣にスペースを作ってくれた
いつものように、僕は彼女の横に座る
少しの沈黙の後、彼女はおもむろに切り出した
「実はさ、、、、うちの事情で少し、、ややこしい問題があってさ、担任の先生と相談してたんだけど、、、、あはは、、、だからちょっとなんか、話を聞いてるうちに辛くなってきちゃって、思わずママだけ残して、教室を飛び出して来ちゃったの、、、、
あはは、、、、無茶苦茶だよね、、それでね、ここにいたら、、なぜか大丈夫な気がして、、、、誰かが来てくれる気がして、ついついここに来ちゃったの」
「、、、、じゃあ、お母さん心配してるんじゃない?」
「うん、、そうだね、、、でも、戻りたくないんだ今は、、、、」そう言って彼女はうつむいた
「、、、、何か、僕にできることはある?、、、、」
「え?」
「ほら、ヨシノは僕のことあいつらから逃げるために、この場所を教えてくれただろう、、、、
そのお礼というか、、、、」
「、、、、、、、、」
しばらくヨシノは僕のことをポカンと見つめていた
「、、、、ヨシノ?どうしたの?」
「はぇ!?えっと!えっとね!いやーあははは
なんでもないよぉ!そ、、そうだねぇ、確かに私は、君にこの場所を提供してあげたわけだし!?
そーうだなぁーなにをしてらおうかなぁ〜」
そう言って彼女はしばらく考えたそぶりを見せた後、突然思いついたように言った
「優一くん!夏休み暇?!」
「え?、、、、まぁ基本的に暇だけど、、、、」
(本当は毎日暇だけど)
「そっか、そっかあ、、、、うんうん優一くん彼女とかいなそうだもんね!納得だぁ!」
「馬鹿にしてる、、、、?」
「え!?ちがっうよぉー〜からかってなんかないよぉ〜」
くすくすしながら彼女は言った
「それで?暇だけど何?」
「あ!そうそう!それでね!
もしよければなんだけど、、、、夏休み一緒に出かけない!あたしさ、あんまり親しい友達とかいないし、、どーせならパーっと君と遊んで!嫌なこと忘れちゃいたいなぁって!」
「ヨシノに友達がいない?冗談でしょ?」
「嘘じゃないよぉぉ、私さ、人見知りだから!
あんまり親しい友達いないんだよね〜
だから親しい友人は、きみぐらいのものなんだぞぉ?」
そう言ってヨシノは僕の顔を覗き込んできた。
「へ、変な冗談はよせよ!」
「んふふー、冗談じゃないかもよ〜!
で、どう?来週の土日とかあいてない?」
ヨシノは楽しそうに言った
「まぁ、暇っちゃ暇だけど、、、、」
「よーし!決まり!じゃあ、来週の土曜日
水族館に行こう!!魚見たいんだよねぇ、あたし!」
「それは、きみの助けになるの?」
「、、、、うん!なるよ!すっごく!、、、」
「そうか、、、、じゃあ、行こうか」
(お礼をしたいと言ったのは僕だし
たまには、外出も悪くないな、、、、)
すると彼女は嬉しそうに立ち上がり言った
「じゃあ、決まり!!、、、、優一くん
楽しみだね!、、、、それじゃあ、私行くね!」
「待てよ!!どーやって連絡とるんだよ」
彼女は動きを止めてハッと振り向いた
「たしかに、、、、、じゃあ、優一くんの家の電話番号を教えて」
「家電?LINEとかじゃないの?そっちの方が楽じゃない?」
すると彼女は言った
「私、勉強のためにLINEはやってないんだあ、、、、
だから、家電、教えてくれると嬉しいな
来週のどこかで電話をかけるから」
疑問には思ったが、彼女には彼女なりの理由があるのだろう。深く追求はしないでおこう
「、、、、わかった、○○○-△△△△-□□□だよ
あ、待って、ここに書いてっと、、ほら、これ」
持っていたノートを破った切れ端に、電話番号を書いて渡した。
「あ!ありがと!えへへー優しいねぇ!じゃあ優一君!来週まで眠れない夜を過ごしたまえぇ」
そう言って彼女は楽しそうに校舎の方へと
走って行った
(相変わらず、嵐みたいなやつだな、、、、)
そして、その日から数日後の木曜日、僕の家の電話が鳴った。ガチャンと取り外し
「もしもし、清田です」
すると受話器の向こうから彼女の元気な声が聞こえてきた。
「あ!優一くん!よかった〜、優一くん以外の人が出ちゃったら、どうしようかと思っちゃった。
あ、そうそう、調子はどーよ優一君、
私とのでぇーーとを妄想して!眠れない夜を過ごしてたんじゃなぁぁい?」
「はぁ、おかげさまで、毎日毎晩ぐっすりだよ」
「むーーなんだよう、つれないなぉ
あ、そうそう!そんなことより明後日の予定なんだけど、10時に⚪︎×駅の前に集合でどうかな?」
「了解」
「よし!決まりね!んふふーせいぜい私の可愛い素敵な私服姿を妄想して、眠れない夜を過ごすといいよら優一くん」
ケタケタと笑いながら彼女は言った
「あー、そうだね、せいぜい期待させてもらうよ」
「何それ!棒読み!?もー!優一くんなんてしーらない!もう切っちゃうからね?いいんだね?」
「はいはい」
「ムキーー!腹立つぅ!まぁ!いいけど!
それじゃ優一くん、10時に駅前ね!それじゃあ!」
ガチャン!っと電話が切れた
(電話まで嵐かよ)

そして約束の土曜日がやってきた

携帯片手に汗だくのサラリーマン
泣き喚く子供、のんびり歩く高齢者
旅行者
さまざまな人々が忙しなく僕の前を通っていく
蝉の鳴く音がより一層、街の喧騒を際立たせる
肌がベタつくし、毛穴という毛穴から汗が吹き出そうだ
(暑いな、今日、、それにしてもまだなのか?
もうとっくに10時すぎたぞ?当の本人はいつ来るんだよ)
時計を見ると、10時半を指していた
少しイラッとしながら彼女を待っていると
不意に後ろから大声がかかった
「ワッ!!!」
「うおぉ!?」
あまりに突然で腰が抜けそうになった
「アッハハ、優一くん!お、ま、た、せ」
語尾にハートがつきそうな言い方で彼女は
言った
「はぁ、やめろって、それよりヨシノ!遅刻だぞ?言い出しっぺのお前が何してたんだよ」
「いやー!ごめんねぇ、ついつい今日楽しみすぎて、昨日眠れなくてさ、そしたら朝に一瞬寝落ちしちゃって、えっと、寝坊しちゃったんだよねん
てへ!」
「てへ!じゃないだろ、はぁ、まぁ気にしてないからいいけどさ」
「なに?なに?心配してくれてたわけ?ゆういちくーん?」
「微塵もしてない」
「即答かーい!まぁ、とにかくごめんね!、、、
じゃあ、そろそろ、行こっか!」
「どこに?」
「決まってんじゃん!水族館デート!」
「はぁ??!え?!はぁ?でっでっででデートぉ?」
「なーに、今更焦ってんの、優一くんったら
うぶなのねぇん」
彼女は焦る僕を見てからかうようにそう言った
「くだらん冗談はやめてくれ、、、ただの外出だ」
「んもう!つれないなぁ!まぁなんでもいいよ!
とにかくぅ!!いこういこーう!」
そう言って彼女は楽しそうに歩き出した。
風が吹き彼女の白いワンピースがなびく
先を楽しそうに歩く彼女は、なんだか、フッと消えてしまいそうな気がした。

そして僕等は電車に乗り、他県の有名な水族館へと向かうのだった

そして水族館に向かう道中
僕らはいろいろなものを楽しんだ
彼女の洋服のショッピング、
お昼に美味しいハンバーガーを2人で食べ
ゲームセンターに少し寄ったり
普段外出をしない僕にとって
楽しい時間を過ごすことができた
それはまた、彼女も同じようで
彼女は何をしていても笑顔を絶やさなかった
そんな彼女の笑顔に釣られるように
僕も自然と笑顔になっていた。
そしていよいよ水族館
一言で言うとその水族館は想像を超えていた
デカイ!とにかくデカイ!水槽はもちろんのこと
なにより水族館の規模がでかい、こんな水族館なら道に迷ったら、帰るのにも骨が折れそうだ
そんな、すごい水族館を前にして空いた口が塞がらない僕の横から、彼女が嬉しそうに言った
「すっごくない!?優一くん!ひろーーい!
前に雑誌で見た時から来てみたかったんだよね!ここの水族館!!わぁーー!」
彼女の口からも感嘆のため息が出てきていた
確かに、ここはすごい、魚に詳しくない僕でも
これはテンションが上がる 
「あれみて!優一くん!シャチだよ!シャチ!!かっくいいー!」
大はしゃぎをしながら彼女は、一際目立つシャチの水槽へとかけていった。
「ちょ!まってよ!ヨシノ!」
、、、それからしばらく僕らは水族館を満喫した。
静かで暗く水槽の青だけが広がるこの空間は、
夏の暑さで感じた僕のストレスを大いに癒した。
相変わらず彼女は行く先々の水槽で
子供のように、目を輝かせ、楽しんでいた。
「わー、このお魚もかわいいー!ねぇ!優一くん可愛いと思わない?」
ずっとこんな調子だ
「たしかに、可愛いと思うけど、いいのかヨシノ?こんなとこにいて、そろそろシャチのショーが始まるけど」
「あぁ!!わすれてたぁぁ!行かなくちゃあ!」
そう、今日ヨシノがこの水族館にきた1番の目的、
それがシャチのショーだ。行きの電車で耳にタコができるほど、シャチのショーが見たいと聞かされた。
「よっし!じゃあ行くか!ってあれ?あの子?
泣いてる?のかな?」
すっく、と立ち上がった彼女の目線の先には
まだまだ、4歳くらいの女の子が泣いている姿があった。
「、、、迷子なのかな?」
ふと視線を戻すとヨシノの姿が消えていた。
急いで辺りを見回すと
「ねぇ!ねぇ!どうして泣いてるの?お姉ちゃんに話してごらん!」
彼女はいつのまにかあの少女の前にしゃがみ込んでいた。
「ヒック、ウゥ!ママとはぐれちゃったあぁ
うぁぁん!」
すると、泣き出してしまった少女の頭を優しく抱きながら彼女は言った。
「おーーー!そっかそっかぁ、ヨチヨチ!
それは怖かったねぇ、でも大丈夫!
お姉ちゃんがママを探してあげる!」
「ほんとに?」
「ほんと!ほんと!お姉ちゃんにまっかっせなさぁーい!」
するとヨシノは僕の方を見ながら言った
「ゆーいちくーん!きてぇ!このこー!迷子だってぇ!!」
(そんなに大きな声出さなくても聞こえるって)
そう思いながら、彼女の元へ向かった
「でさ!お名前なんていうの!?」
すると少女はか細い声で言った
「みゆ、、」
「おっけーい!みゆちゃんね!!
お姉ちゃんはヨシノ!こっちのお兄ちゃんはゆーいち!」
コクンとみゆは頷いた
「さって!まずどっから探そっかなぁ?
優一くんどこに行けばいいと思う?」
彼女は立ち上がって僕に聞いた。
「ノープランなんだ、、、はぁ、案内所に向かうのが1番得策じゃない?放送してもらえるし」
「おおお!さっすが優一くん!名案!
よし!じゃあ、みゆちゃん!お兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒にいこーーー!」
「おーーー!」
まるで姉妹のようだ
そうして、しばらく僕が先導する形で歩いていると、後ろからヨシノが声をかけた。
「ちょっとおおー!ゆーいちくんー!
はやいよぉ!みゆちゃんの歩幅考えてよお!」
後ろを振り返ると、確かに差ができていた
「あぁ、ごめん案内マップを見るのに夢中で、、、」
「あ、そーだ思いついた!みゆちゃんおててかーして!」
するとヨシノはみゆの右手と手を繋いだ
「ほらぁ!優一くんぼさっとしないで!
みゆちゃんの片手があいちゃってるよん!」
「はぁ、?」
「こうすれば!みゆちゃんが遅れることないでしょ!私と優一くんがみゆちゃんに合わせてあげるの!」
「いや、だからと言って、、、」
(変な目で見られたらどうすんだよ、、、、)
「お兄ちゃんは、みゆと手を繋ぐのは、、、イヤ?」
つぶらな瞳でみゆは僕を見る、
こんな純粋な目を向けられたら嫌なんて言えない
「はぁ、わかったよ、、、」
そうして、ヨシノはみゆの右手を、僕は左手を繋ぐ形で、先へ進むことにした。
歩きながらふと、ヨシノが言った
「ンフフー♪ゆういちくーん、これさぁ、
なんか、夫婦みたいだね♡」
顔が赤くなるのを感じた
「な、なにいって!」
「じゃあ、ゆーいちお兄ちゃんがみゆのパパで
ヨシノお姉ちゃんがみゆのママだねぇ!」
みゆまでそんなことを言うもんだから
僕は、顔から火が出ないか心配だった。
「あれぇ?みゆちゃん、パパ照れてるよん?」
ヨシノがからかうように言った。
「パパかわいい!」
「はぁぁ、たのむからやめてくれぇぇ」

そして案内所に到着した僕らは、
すぐに館内放送をしてもらった。
30分ほどして、みゆの母親がやってきた。
「この度は!うちの娘が大変お世話になりました
なんと、お礼を申し上げればいいか、、、」
「いえいえ!いいんですよう!
困った時はお互い様ですから!!」
「あなた様も本当にありがとうございます」
そう言うと母親は僕の方にも頭を下げた。
「いえ、、彼女の言う通りお互い様ってやつですから気にしないでください」
「本当にありがとうございました、、、」
すると、みゆが母親のロングスカートの裾を引っ張りながら言った。
「ねぇ、ままぁ、お兄ちゃんとお姉ちゃん
かっぷるってやつだよ」
「いっ!?」
「ほえっ!?」
顔がまた赤くなった、ふと横を見るとそれは
ヨシノも同じようだった。
顔がうっすら赤くなっている、、、気がする?
「あ、あのねぇ、みゆちゃん、確かに
おねえちゃんたちは、なかいいけど、そーいうんじゃ、、、」
ヨシノが言うかいいい終わらないかのうちに
みゆの母親がいった
「あらまぁ!そうなのねぇ!ならお礼に
これをあげるわぁ!」
すると何かのチケットを渡された
よく見るとそれは、シャチショーの夜公演の
特別招待券だった。
「な?これは!?」
「ダメですよ!お母さん!こんなの受け取れませんよう!」
「あらぁ、いいのよー!私のかわいい愛娘を助けてもらったことに比べたら安いもんよ!
それに、私たちはどーせ夕方には帰っちゃうし
だったら若いお二人にあげたほうが
シャチも喜ぶってものよね!」
そう言って、みゆの母親は僕達の手にしっかりと招待券を握らせた。
「それじゃ、私たちはそろそろ行くわね!
ほら!みゆ!お礼は?」
「お兄ちゃんお姉ちゃん!ありがとう!」
そう言って、みゆ親子は、その場を後にした

そうして気まずいまま2人になった僕ら
最初にこの空気を破ったのはヨシノだった
「あ、はは、も、もらっちゃったね、これ
ど、どーする?いく?」
「え?あ、あぁ、せっかくもらったものを無駄にするのもアレだし、行こうか、、、もともとヨシノが行きたがってたし」
「た、たしかにねえ!みゆちゃんの案内してたら
さっきシャチのショー見逃しちゃったし!」
「じゃあ、行こうか、、、」
「、、、、、、うん」
この気まずい空気はショーの開幕まで続いた。
そしていよいよ、ナイトショーが始まった。
さまざまな光を放つプロジェクションマッピングとシャチと水の幻想的なコラボレーションは、圧巻そのものだった、その幻想的なショーは
いつしか、僕らの気まずい空気を忘れさせてくれた。ふと横を見ると、赤から青へ青から白へと
照明の光が変わるたびに、その色に照らされる
ヨシノの顔があった、
こんなに近くでヨシノの顔をしっかりと見たのは、初めてかもしれない、いつものベンチでは
目を合わせているようでどこか逸らすように
見ていたから、
ヨシノは、今まで意識してこなかったものの
とても、可愛らしい顔立ちをしている
学年でも上位に入り込むだろう
キラキラと輝かせながらショーを見つめるその横顔を、僕は、ほんの一瞬見つめてしまっていた。
すると気づいたのか、彼女は僕の方を見て
にっこりしながら言った。
「ねぇ、、、優一くん、綺麗だね!」
その時、自分の鼓動が速くなるのを感じた。
シャチのことなど忘れていた。
君の笑顔があまりにも綺麗で、儚くて、美しくて。

思えば、この時には、僕はもう恋に落ちていたのかもしれない。
でも、決して僕は、彼女の見た目だけに惹かれたのではない、それ以上に惹かれたのは、
彼女の性格だ、明るくひた向きで芯が強い
まるで大木の幹のように、
折れない心を持った君。
まるで僕とは正反対な、そんなヨシノだからこそ、僕は彼女に恋をしたのだろう。

そんな、少しだけ甘い夏の1日が終わり、
それからというもの、
僕と彼女はいろんなところへ
遊びに出かけた
時には海へ、時には山へ、時には街へ
それは、夏休みが終わった後の秋の間も続いた。
そうして、僕と彼女の絆は、深くなっていった。
そうして秋が終わり、いよいよ冬がやってきた。

絶望と苦しみの始まりの冬が、、、





PS

読んでくださりありがとう!
3話は、長いため、1話投稿になることをお許しを
次回は4話5話で行きたいと思います!
それではお楽しみに!💜






















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