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VOL.13子どもの主体性を育むには親の愛が必要

私が、受験経験者の声を集めて『後悔しない中学受験』という本を書いてからすでに12年が経ちました。ずいぶん時間が経ちましたが、つい最近もこの本を読んでくださった塾の先生からは、「今でも十分参考になる」と言っていただきました。それはたぶん、親の普遍的な悩みを扱っているからだと思います。 

この本は、子どもの中学受験を経験して感じたあれこれを振り返り、これから経験する人たちには、もっと受験をポジティブに捉えてほしいと願って書いたのですが、本書の帯に、汐見稔幸先生は「受験はすべてそうだが、うまくやればその子の人間としての育ちの大事な機会になるが、逆だとしこりが残る。その差の機微を本書は巧みに示してくれている」と書いてくださいました。

まさにまさに、私たち親は、子どものために良かれと思って、いろいろなことをしたり、声をかけたりしますが、それが本当に子どものためになっているかというと、ちょっと??が付くことも多いかもしれません。

私もずいぶん失敗をしてきましたが、受験をその子の育ちの大事な機会にするには、どうしたらいいでしょうか? 最近強く思うのは、最終的には、子どもは力を持っていると信じることではないでしょうか。そして、その根本にあるのが、愛です。

先日、そのことを確信する出来事がありました。

プロフェッショナル仕事の流儀でも話題になった“いもにい”こと井本陽久先生のいもいも教室に取材に行った時のことです。

新しくできた小学生クラスでは、子どもたちが遊びの中でいろんな発見をしていましたし、中学生クラスでは、頭に汗をかきながら思考力問題に取り組んでいました。どちらも実に嬉しそうに熱中しています。でもその多くが、学校では評価されなかったり、居場所がなかったりする子たちだそうです。

中には、自己開示できずマスクが手放せないお子さんもいました。でも、教室で“いもにい”やスタッフが自分を丸ごと受け止めてくれることを感じているうちにどんどん心が開かれ、最後にはマスクを外して友達に自分からチャチャを入れ始めました。

その様子をみながら“いもにい”は、「教育という言葉を、愛するという言葉に置き換えたほうがいいかもしれない」と言います。

最近は特に、「主体性が大事だ」と言われるようになり、逆に「うちの子どもは主体性がない」と悩む方が増えているように感じます。でも主体性って、その子の中から出てくる気持ちですから、伸ばすとか育てるのではなく、子どものありのままを受けとめること。そして、やりたい気持ちを大事にすることからしか始まらないのではないでしょうか。

経営危機に陥っていた女子校を1年でV字回復させて話題の、武蔵野大学中学高等学校の日野田直彦校長先生もその秘密を「点数をとるために勉強するのではない。自分のやりたいことをやるために必要だから勉強をするのだということを、偏差値という価値観の中で自尊心が折れていた生徒たちに問いかけることで、生徒たちが自ら動くようになった」と言います。この辺りに主体性を育むヒントがありそうです。

「21世紀の子育て 生きる力の強い子の育て方「自分のやりたい」がある子はどう育ったのか」 第2回も主体性を育むヒントになるようなお話です。ぜひお読みください。

落ちこぼれ東大生から外務省職員へ。東大を留年をしたときに言われた母の一言。

●中曽根陽子/教育ジャーナリスト、マザークエスト代表  
教育機関の取材やインタビュー経験が豊富で、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆。子育て中の女性に寄り添う視点に定評があり、テレビやラジオなどでもコメントを求められることも多い。海外の教育視察も行い、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探求型の学びへのシフトを提唱し、講演活動も精力的に行っている。また、人材育成のプロジェクトである子育てをハッピーにしたいと、母親のための発見と成長の場「マザークエスト」を立ち上げて活動中。『一歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)、『後悔しない中学受験』(晶文社出版)、『子どもがバケる学校を探せ! 中学校選びの新基準』(ダイヤモンド社)など著書多数。ビジネスジャーナルで「中曽根陽子の教育最前線」を連載中。
オフィシャルサイト  http://www.waiwainet.com/

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