映画感想/『丘の上の本屋さん』

イタリア映画。

小さな古書店を営むおじいさんリベロと、
移民の少年エシアンとの、
本を通しての交流を描いた物語。

というのが。

メインテーマでもあり、
宣伝もそれを中心にされているのですが。

私は、古書店のおじいさんリベロと
隣のカフェで働く青年ニコラとの関係性が
とっても愛おしいなぁと思いながら観ていました。


けれども先に、メインストーリーの
リベロと少年エシアンとの関係性についての感想を。

リベロは古書店の店先で本に興味を持っている様子の少年エシアンに、
本を貸してあげるからその代わりに感想を聞かせてほしいというところから、彼らの関係性が始まります。

日を追うごとにリベロは様々な本をエシアンに貸していく。

公式WEBより

恥ずかしながら、私はこのなかだと、
『星の王子さま』くらいしかちゃんと読んだことがありません。
あとは『ロビンソン・クルーソー』は小学校くらいで読んだかも…?
細かい内容は覚えていないのですが。

映画において、1冊1冊については、深く語られるわけではないのですが、
極限まで削ぎ落とした感想文としてとても魅力的な語られ方をするなぁと感じました。


ただ正直、かなり説教くささも感じましたし、
フィクションとはいえさすがに本のチョイスが飛躍しすぎでは、と感じてしまうことも。

メルヴィルの『白鯨』なんて、めちゃくちゃ読み辛い本のイメージがあるのですが、本好きの子どもなら、読みなさいと与えられたら読み切ることができるような内容なのでしょうか…。
そんな意味で、ちゃんと手にとって読んでみなければと発破をかけられるような気分にさせられました。


それと↑ の画像では紹介されていないのですが、シュヴァイツァーの伝記も気になりました。

シュヴァイツァーって私のなかでは、『ドラえもん』でのび太のパパがのび太に読ませようとしてた本というイメージがめちゃくちゃ強くて。

でも日本における子供向けの伝記としてはあまり聞かない名前な気もするのですがそれは私だけ?少なくとも私は『ドラえもん』で出会わなければ名前すら知らない偉人の一人だったかもしれないのですが…。

その印象だけやたら強いのにどんな人物なのかを私は知らないので、シュヴァイツァーの伝記はやっぱり読んでおかないとという気分になりました。(何で読むのがいいんだろうか。)


↓このあたりからネタバレになるので、ご了承ください。






それから、しきりにエシアン少年が移民の子であることに注目させる構成になっていることが気になりました。

イタリアの現地人の感覚がないと本来語るべきではない部分なのかもしれないのですが、
少なくとも日本に住んでいる日本人の私が感じた感覚として。

エシアン少年は「移民である」ということを理由になにかしら生きづらさを感じている部分があるのかもしれないのですが、とはいえ映画内ではその具体的な苦労が描かれるわけではなく、
リベロが一方的にエシアン少年のことを「君は移民の子だから」という固定概念を持って接しているように感じられて、押し付けがましく感じたんですよね。

この辺りが、
敢えてこういう風に作っているのか、
それとも無意識で作られているのか、
それによって大きく解釈が変わるなぁと思いました。

加えて最後にリベロがエシアンに渡した本が『世界人権宣言』。
「いやさすがにくどすぎるやろ!」と心のなかで叫んでしまったのは私だけでしょうか・・・。

くどい上にさすがに子供には難しすぎるのでは…。

自分がエシアンの立場だったら
「結局そういう風にしか僕のこと見てくれてなかったんだな、リベロおじいさんは」ってなる気がしたんですよね〜。

とはいえ、イタリアではそれくらい顕著に移民問題というのが社会問題としてあるのかもしれませんし、このあたりで語るのは止めておきます。


で、最初にちらっと書いた、
リベロと隣のカフェで働く青年ニコラとの関係性ですね。

こちらの方が、映画らしくてさりげなくて、とても素敵な憧れたくなる人間関係が描かれているなあと思いました。

ニコラはカフェの雇われ従業員でありながら、
リベロの店にコーヒーをサービスで持っていってあげたり、店の留守番を引き受けたりしている。

こうさせるような、人間としての魅力がリベロにはあるんだろうなぁということを想起させます。

多分イタリア辺りはこうした、見方によっては過干渉にもなりかねない人間関係が当たり前のように生活に根付いてるんだろうなあということが感じられて、それがいいなと思いました。

「日本は」「イタリアは」と大きな主語で語るのはよくないと分かりつつも、
こんな風な関係性をもし現代の日本の物語で描くとものすごくフィクション味が増してしまう気がするのですが、
イタリアを舞台に見ていると、ああきっとこういう風景は日常なんだろうなと思わせられる不思議。

そしてやっぱりこういう人間関係にはどこか憧れがあるし、ノスタルジーのようなものも感じる。(いざ当人になると鬱陶しいことも多いだろうけど)


と。

素直にめっちゃ良かった!というわけではないけれど、
色々考えさせられるという意味においては、とても良い映画でした。

それにとにかくもっともっと本を読まないとと思わされました・・・。読書疲れしてしまわない程度にがんばります。

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