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世界の終わりを感じる時
訃報が続いた。
一時代を築いた漫画家さんや、国民的アニメの声優さんがなくなると、同時代を生きてきた人にとっては「自分の世界が終わった」ような気がすることだろう。
私の親世代は、美空ひばりと石原裕次郎が亡くなった時に、世界の終わりを感じてしょげ返っている人が多かった。
お二方とも、多くの人に支持され愛されたトップスターだったからだろう。
私は、「ルパン三世」の初代声優、山田康夫さんが亡くなった時に同様の感情を抱いた。
あれは1995年30歳の時だったから、今考えると私の人生は結構早期に終わっていたものらしい。
現在余生を楽しく暮らしているので特に問題は生じてないが、それにしてもあの「終わった……」という感情は一体何に起因して生まれていたのだろう?
実際の生活には、一切つながりのない人だったのに。
その人がいなくなったからと言って、自分の世界まで終わったように感じるのは、冷静に考えればおかしな話だ。
私の場合はおそらく、思春期に入りかけの多感な時期に、本気で恋していたのが「ルパン三世」だったからだろう。
スリムでお洒落ななんでもできるスーパーマンで、女の子に弱く惚れた相手はどれだけ裏切られても自分から裏切ることはない。
パーフェクトな恋人だろう。
そりゃ、恋もするさ。
山田さんの逝去に伴って私の中のルパンが消え、初恋が消化不良のまま終わったため、世界がいきなりぶちっと途切れたような気がしたのだろう。
それが「終わった……」の正体ではないかと思う。
仮に山田さんが生きておられても、相手は二次元、どうやっても悲恋に終わる運命ではあったが。
山田さん亡き後も、ルパンのアニメは続いた。
けれども、ルパンの声は、どれだけ似ていても栗田貫一ではだめだった。
山田さんでなくてはならなかった。
次元も、五右衛門も、不二子ちゃんも、全員初代と違う人が声を当てる「ルパン三世」は、すでに私の知っている「ルパン三世」ではない別物だった。
憧れた彼らは、もうこの世界のどこにもいないということを、いっそう際立たせるためにあるものだった。
さあ。
まるちゃんは、これからどうなってしまうのだろう?
ドラクエに、新キャラを登場させたい時には、誰が描くのだろう?
旅立った彼らには、後顧の憂いなくあってほしいが、残された私たちは、あれやこれやをじたばたと考えてしまうのである。
どうか、安らかに。
**連続投稿771日目**
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