アドベントカレンダー12月25日 お題「大晦日・誕生日」BY前川和治さん
私の小中学校時代の親友は「本当の誕生日と役所に届け出た誕生日が違う」という人だった。
公式には「4月3日生まれ」ということになっていたのだが、実際には「4月1日生まれ」なのだそうだ。
「え? そんなことできるの? だって、生まれた日って産院で母子手帳に記録されちゃうよね? 役所にウソを届けることができたの?」
昔は自宅で出産する人も多く、こういうことができたらしい。
「そっかあ。だったら、そうなるよね。エイプリルフール生まれって、なんかちょっと嫌だもんね」
残念、そういう理由ではない。
日本の法律では、4月1日生まれの子どもは、究極の早生まれになる。
彼女のご両親は、一学年上の最年少児として苦労する娘が忍びなかったのだろう。
そして、翌4月2日は、「42(しに)」と、なんだか語呂が不吉だ。
そんなわけで、娘の誕生日を4月3日ということにして役所に提出した、というのが真相なのだった。
本来なら『1年365日、きっと誰かの誕生日』というポッキーのCMソングもあったくらいだし、確率的には、365分の1で同じ誕生日の人がいるはずだ。
しかし、昔はいろんな理由で誕生日や誕生月に偏りがあった。
下のグラフを見てほしい。
近年では、どの月もだいたい同じだけ子どもが生まれているのだが、上のグラフでわかるように、戦前には1月~3月の、いわゆる早生まれの子どもが多かったことになっている。
逆に一番少ないのが6月生まれだ。
私はこれを、農作業の繁忙期に生まれて、ケアされなかった子供がたくさん死んだのが6月だったからだと解釈した。
戦前の日本は農業国である。
昔読んだ「ワイル・ドスワン」(ユン・チアン著)には、文化大革命の頃の中国で、都市から農村に下放された時の驚きが、つづられている。
農村の女の人たちは、繁忙期に臨月を迎えても、休ませてもらえない。
人手が足りないからだ。
田んぼのあぜ道で、ひとり出産し、産み終えるとさっさと農作業に戻るのだという。
日本でも似たようなものだったのだろうと予想し、産後にケアされずに放置され、命を落とした子どもが多かったのだろうと思ったのだ。
実際のところは、いろんな説があってどれが正しいのかよくわからなかったが、信ぴょう性が高そうだったのは
「農繁期が終わってから役所に届けに行っていたから」
という説である。
車もない時代、近所に役場がなければ、子どもが生まれたくらいで、わざわざ一日かけて町を往復し、出生届を出すようなことは、しなかったのだろう。
そうして、届け出た日が誕生日となった、ということならば、たしかに繁忙期には出生数が減ってもおかしくない。
1月に出生数が多いのも、同様の理由らしい。
年末のあわただしい時期に生まれた子どもらの出生届は、年が明けてからゆっくりでいいや、と後回しにされたのだろう。
時代が見えて面白い。
さて。
敦賀市の若手議員・前川和治さんは、なんと12月31日、大みそかの生まれだという。
もうじき、お誕生日を迎えられるのだが、子どものころから大みそか生まれで損をしていると感じていらっしゃるらしい。
それはそうだろう。
なんたって、大みそかだ。
ケーキはクリスマスに食べたばかりだから、わざわざ用意されないだろうし、なんなら、クリスマスと誕生日のプレゼントは一緒にされたり、もしかすると、お年玉もひとまとめにされてきたのかもしれない。
しかも、暮れの押し迫った時期は、みな家族と暮らすので、友達に祝われたこともないという。
不憫の一言に尽きる。
これまで、最も不憫な誕生日は究極の早生まれ4月1日かと思っていたのだが、年末年始も、相当なものだ。
おいたわしい。
その前川さんが、本日、来期の敦賀市長選に出馬する意向を固められたと報じられた。
私は先日、前川さんが主催する「ふるさと納税学習会」に参加し、初めてお目にかかったのだが、新しいことをどんどん取り入れる頭の柔らかさと、ユーモアと、実行力のある、すごい人だと思った。
が、まさか、敦賀市長になろうという志を持った方だったとは。
ひとりアドベント企画も、今日が最終日。
前川さんの応援記事で締めくくることになろうとは思わなかった。
私が一番びっくりしている。
市長になられたら、今までのように気軽にお目にかかれる機会は少なくなるのかもしれない。
けれど、きっと6万人の敦賀市民が、年の瀬に気比神宮にお参りしながら
「あ。そういえば、今日は市長の誕生日だった」
なんてことを思いだしたりするのだろう。
私は来年の今頃は、どこにいるのかわからないけれど、見事敦賀市長になった前川さんが、市民に愛され「忘年会兼お誕生日会」で、お祝いされていることを願わずにいられない。
そうして、誰にも祝われなかった45年間を取り戻してほしいと思う。
**連続投稿327日目**
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