新規事業開発。変化の時代に勝ち続ける秘訣は「戦わずして勝つ」こと
「ダルイし面倒だしお金溶けるし、マジ戦争は勘弁だわー」
古代の兵法書である『孫子の兵法』にはそんなオーラが満ちあふれているとnoteのCXO深津貴之氏は言います。
新規事業開発も同じです。
手間がかかり、しかも勝つかどうかはわからない。
とはいえ、時は戦国時代。
領土を広げねば、いずれ国を獲られる。
1つの事業や製品・サービスの寿命は短命化し、これまで会社を支えていた事業の業績が急速に悪化するなんてことも日常茶飯事です。
企業は、新たな事業の開発や創出に取り組み、次の柱を生み出すことができなければ、継続的な成長はもちろん、現状維持すらも厳しい環境に立たされているのです。
しかしこれは、若手にとっては一気に成り上がれる可能性もあるということで、チャンス!
というわけで、第6回のテーマは「新規市場への参入」です。
<成長市場であり、強みが活かせるか>
「戦争なんてマジ勘弁」な雰囲気を醸しだしていた孫子がくりかえし述べていることに、「戦わずして勝つ」があります。
孫子は、できれば競合と戦わず相手に屈してもらうのが一番とし、戦うにしてもかなり勝算がある戦いしか推奨しません(敵の5倍の兵力があれば正面から堂々と戦えとか)。
戦は、かなり勝てる見込みのあるところに的を絞るべし。
戦いは、始まる前に8割方終わっているのです。
僕らも同じ考えで、新規市場への参入する際には次の2つのことを意識しています。
成長市場かどうか
上りのエスカレーターに乗ることです。強みが活かせるか
それぞれ事例も交えつつ、詳しく見ていきます。
<成長市場であるとは>
事業への参入タイミングは、ビジネスの成功の鍵を握っています。
参入タイミングが適切であれば、高速エスカレーターに乗ったようなもので、経営者の能力をさほど選ばず、会社はどんどん成長します。
たとえば、2010年。世の中はMobage・GREEの大ヒットにより、ソーシャルゲームブームが到来しました。
CROOZは、その数年前からゲームの開発や版権ビジネスを行っていて、それを活かしてこのビッグウェーブに乗っています。
数々のゲームをリリースし、2009 年には36 億円だった売上を2012年には約234億円まで急拡大させました。まさに倍々ゲーム。
あの頃は、少ない開発費、短い開発期間でガンガン伸ばしました。
ところが、2015年あたりからゲーム市場は様変わりします。競合がひしめき、それまで数ヶ月数千万円で開発できていたものが、数年数億円かかるようになり、コスト構造が激変したのでした。
僕らは一部を残して早々に撤退しましたが、そのままゲーム市場に残って苦戦をしいたげられた会社は少なくないでしょう。
競合に儲かることが知られ、世の中が追いついてきて競争が激化し、投資の割にリターンが少なくなる前に手を引き、次の事業に軸足を移す。
これがCROOZの成功パターンだという話は前回しました。
<成長市場を常に探す>
ゲーム市場を見ても分かる通り、1つの事業や製品・サービスの寿命はとても短いものです。あっという間にレッドオーシャンになってしまう。
このことを考えれば、CROOZがなぜ「スピード、以上。」を行動指針としているかがわかるはずです。成長期のチャンスは、一瞬なのです。
成長市場であるかは静的なものではなく、タイミングの話なのであり、早めに大儲けできた場合ほど、すぐ次の成長市場を探す必要があります。
だから、できる経営者ほど常に国内外の成長市場にアンテナを張っている。
CROOZも売上・営業利益が急激に伸びている会社はないか国内外共に常にアンテナを立てて見ています。
他にも繋がりのあるVCや起業家、ネットの情報…とにかくあれこれ駆使して次の波を探し続け、投資しているのです。
<強みが活かせるか>
成長市場に参入することは前提ですが、もうひとつ大事なことがあります。
それが、勝ち筋が見えない戦なら、どんなに成長市場でも参入しないこと。「戦わずして勝つ」の孫子の教えと同じですね。
伸びている市場を見つけたとしても、だいたいは、すでに競合がたくさんいます。いなくても、すぐ追いかけてくる。
それでも勝てる何かがあるか。
自分たちがすでに持っているものが、その市場を攻略するのに活きそうか。顧客視点から見て、自社に優位性がある面があるか。参入・撤退はしやすいだろうか。
主にこの辺の条件を考え、参入を決めます。
ここで注意しなくてはならないのは、単に「強みが活かせる」のではなく、「市場を攻略するのに活かせそうな強みがある」という点です。
事業を伸ばすには、必ずキードライバーとなる指標(この数字を伸ばせれば勝てるみたいな数字)があって、それを伸ばすのに使える強みがあるかどうかが大事なのです。
例えば、EC事業なら最初は商品の縦(在庫数)と横(ラインナップ)を伸ばすとか。
キードライバーになりそうな数値は、感覚で的を絞り、試行錯誤しながら早い段階で特定していくことが腕の見せ所です。
<強みを活かした事例>
僕らがSHOPLIST(EC事業)を始めたときを具体例として紹介します。
当時、世の中にはすでに楽天もAmazonもZOZOも存在していました。成長市場には違いないが、競合は大きいといった感じです。
しかし、当時のZOZOが扱っているのは主に実店舗を持つ有名ブランドが中心。楽天やAmazonも当然ジャンルや商品数は幅広いが、ファッションだけを切り取ると老若男女みんなが使うにはUI/UXや検索性などハードルが高い面がありました。隙間はまだある。
そして、我らCROOZには『CROOZblog』がありました。
当時の10代20代の若い女性を中心に多くの支持を受け、月間ユニークアクセス者数1,100万人を獲得するまでに成長したメディアをもっていたのです。
加えて、ソーシャルゲーム事業で築いた資金がありました。
特にこの2つの強みを踏まえ、僕らが描いた勝ち筋はこうです。
若い女性に向けたカジュアルブランドで一気に出店攻勢をかける。
出店料を無料にし、プロモーションもこちらでやる形を取って、一気に商品の縦と横を増やしました。
結果、2012年7月のサービス開始以来、初年度の取扱高は22億円超、次年度は68億円超、3年目となる2015年3月期には、100億円規模に拡大することができました。
<変化に強い文化を築く>
さて、成長市場を見つけ、さらに強みを活かせそうだとも判断したとしましょう。すぐにでも手を打ちたいところです。
しかし、組織には慣性力があります。
限られたリソースを、今まさにガンガン売上の出ている既存事業から数年後に芽が出るかどうかという新規事業に振り分けるのは、そう容易な決断ではありません。
また、新規事業を進める際には、既存事業をやるのとは頭を切り替えなくてはいけませんし、一から覚えないといけないことが大幅に増えます。
日頃から「変化が大事」「スピードが命」という価値観を浸透させていなければ、社員からの強い反発に合うことも考えられます。
その点、CROOZは10年20年をかけて、変化に強い組織を作ってきました。
口酸っぱく「変化が大事」「スピードが命」と言い、行動指針を「スピード、以上。」のシンプルなものにしています。
それから、これまでにメイン事業も5、6回は変えていて、その度に業績を伸ばし、「ほら、こっち選んでよかったでしょ」と実績も見せ続けてきました。
もちろん、上手くいかなかった事業もあります。
それについても、理由をちゃんと説明し、徹底して次の変化に活かすための肥やしとしています。
<まとめ>
事業・サービスの短命化が進む現在、会社を生き残らせるには、常に新たな波を見つけ乗り出すことが重要です。
CROOZは、国内外の会社や事業に常にアンテナを張っており、成長市場かつ、その市場を攻略できそうな自社の強みがあれば参入します。
組織には慣性力が働くため、変化に強い文化を日頃から醸成しておくことが必要になります。
<今回のワーク>
毎回恒例の、
テーマに合致した若手起業家向けのワークです。
これらは、内容を体験的に理解してもらうための実践的なものです。ぜひ、いくつかでもチャレンジしてみてください。
それでは、また次回お会いしましょう!
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。