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【ネタバレなし解説】ポピュラー民俗学の視点から、安全に観る『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の昭和30年代【VTuber】
ゲ謎、いいですよね。
めくるめくめぐるの世界へようこそ。
3度の飯より民俗学が好きな書店員VTuberが、わかる範囲でネタバレなしの「ゲゲゲの鬼太郎 鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」の時代考証をしていきます。
みなさんの次回入村が、より有意義になれば幸いです。
本編よりうるさい同時視聴もあります。
場所
トンネル
犬鳴村の感じ?
トンネルは異界と通じる場所なのでね…
あと、昭和30年代の技術のままだとしたらかなり危険なトンネルだ…
昭和31年の東京描写
水木の働く帝国血液銀行の建物
モデルは、銀座にある「服部時計店(現和光)。ゴジラ(1954)の中では破壊され、日本沈没(2006)でも崩壊し、なにかと象徴的に扱われる良い建物。
ドブ川
旧服部時計店のある銀座通りには川は流れていないが、橋の様子から隅田川がモデルだと思われる。
明治から苦しめられた水害に終止符を打つべく昭和32年に高潮堤防整備が進められた。(カミソリ堤防)
また、下水道の普及は滞っており、昭和27年頃から河川の汚れが目立ち始める。昭和37年、高度経済成長の新成長を遂げる年には、漁業権が消滅。心身・物質・経済共に著しい被害を出すほどに、一時期は死んだ川となっていた。
この後、流域の整備はオリンピックを機に昭和30年代後半から行われる。昭和36年時点で普及率は10%、生き物を取り戻す改善の取り組みが今もなされている。
血液銀行について
患者・医療機関と献血者の間に立って輸血用血液を保存・管理して必要に応じて供給する施設。
日本では昭和26年以降民間の組織ができていた。
民間の商業血液銀行では、血液を買っていたため、健康を害するほどに売血を繰り返す人もいた。これがのちの売血追放運動につながる。
とはいえ、当時は血液銀行は儲かっていた様子。
オフィスでは書類少なめで、電話が2つもあるのはかなり良い会社。(当時電話は電話交換手のいた時代)
オフィス内の観葉植物の普及は30年代中ば(28年代から普及し始める)なので、やっぱりハイカラ
また、劇中には登場していないが、当時はエアシューターがハイカラ。
昼休憩があり、みんな屋上で大縄とかボール遊びしている時代。
哭倉村の場所のモデル
福島県桧原湖(ひばらこ)か?桧原湖に浮かぶ通称「桜島」(実際は無名)がきれいな場所。
明治21年に磐梯山噴火によって川の流れが堰き止められたことにより、一部が沈んだ宿場街がある。
現代でも水中考古学研究会の方が調査しているニュースがあった気がする。
小物
悪霊退散のお札
元巫女アルバイトの諸星は、実際に【悪霊退散】って書いてあるお札を見たことがない。
村のお手製だと思われる。
市松人形
劇中登場する人形は市松人形(やまと人形)。
江戸時代に人気歌舞伎役者を模した人形の登場から。
昭和初期に地方別にあった人形の名称の統一により、やまと人形と呼ばれるようになった。
ルーツは子供の災厄を代わりに追ってくれる「身代わり人形」。
劇中のタバコの表現
昭和30年代のオフィスは喫煙可で床にポイ捨てしていた。
もちろん、路上・布団の上でも喫煙は可能であった。
江戸時代はキセル(刻みタバコ)が主流だったが、紙巻きタバコが明治以降は主流になる。
葉巻は舶来品かな?高いぞ!
当たり前のように各部屋には大きな灰皿があり、当たり前のようにマッチか卓上ライターがあるのだ。この時代。
金魚
社長の金魚は「頂点眼」中国作出の金魚で、明治に渡来しているが日本での流通はそんなに。
「朝天眼」と表記することもあり、「王朝を見上げる」縁起のいい魚らしい。
龍賀家の家紋
「下がり藤」に似てる龍の鱗と爪。
下がり藤は藤原家など宮廷貴族の家紋として有名。
なんか繋がりありそう。
御神槍
見た目は天沼矛(あめのぬぼこ)か天逆鉾(あめのさかほこ)に似てる
哭倉神社は宮崎の高千穂神社がモデルかもしれない。
猿田彦神に連れられ、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が高千穂にやってきた伝承があるのがこの神社。
また、この地域で悪さしてた鬼神鬼八が退治されたという逸話が残る。
車椅子
劇中登場する車椅子は、多分箱根式車いす(日本最古)
製造は昭和11年、重量は30キロ以上の代物である。
扱うのもコケるのも一苦労な代物。
演出
冒頭の御当主様お亡くなりシーン
圧倒的市川崑監督の犬神家アングル
本作品では事あるごとに、市川崑監督作品オマージュが多い。
この龍賀家族写真に長田の場所はない…
普通の家庭でカメラが買えるようになるのは昭和30年代後半。
この時代の家庭ではボーナスが出るとハレの場として、百貨店へ家族と行き、屋上遊園地で遊んで食堂で食べるのが定番のコースだったらしい。
祭壇のうさぎ串刺し
諏訪大社の4月15日に五穀豊穣を祈り行われる御頭祭(おんとうさい)は別名「ミサクチの祭」
ここで行われた祭事にて、白い兎・カエルを松の棒で串刺しにしたものを奉納していた。
遺言状読み上げ
ハレーション起こす白飛びや奥行き表現は、市川崑監督の犬神家の遺言状読み上げのシーンすぎる金田一の事件簿。
そもそものストーリー展開も、実はかなり(かなり!)市川崑監督作品に準えていて、リスペクトしているんだなと感じる。
襖絵には金箔、「鷲」【虎】「側面は鬼?」【獅子】【狼】「鯉」【龍】が描かれている、多い…ゴテゴテしてるぜ…
ただし、当主のいる上座の龍の指は3本(室町時代から中国とのやり取りで日本の龍は指が3本になる)なので室町以降の家柄か?
(もしくは、平安貴族の流れものが、室町時代以降に発起した?)
20年代から30年代のファッションチェック
20年代女性
オードリー・ヘップバーンのブーム、ヘップバーンカット、パニエも流行る、フルスカート(劇中のスカート丈はちょっと短めな印象、膝丈より下が主流だったのでハイカラだったのかな?)
女性の服は【タイトなウエスト】と【フレアーワンピ】
職業としては【和文タイピスト】【教員】【店員】【電話交換手】などなど
30年代男性はスーツが一般化
20年代には一括で着こなすサラリーマンのグレースーツは【ドブネズミルック】と揶揄された
男性、オールバック、パートスタイル。
いずれも銀盤の俳優と同じスタイルが登場したため。
いかがでしたでしょうか?
ネタバレを踏まずとも、ここまでの知識でもって見直してみると、より一層この作品が丁寧に酸いも甘いも噛み分けた「昭和30年代」を描こうとされていることがわかるかと思います。
今回はここまで
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