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明るいほうへ、導く人になる

今年に入り、作家の土門蘭さんがnoteで公開している日記「火星日乗」の購読を始めた。

日々淡々と起こった出来事を記録されているだけなのだけれど、土門さんの日常に少しだけお邪魔しているような気がして、読んでいて楽しい。

文庫本以下の値段で好きな作家さんの日常を覗けて、さらにその文章に触れて刺激を受けられるのだから、安いものだと思う。

毎日土門さんの日記に触れることで、なぜ彼女の文章が好きなのかを考えてみた。

正直なところ、土門さんの文章はうす暗いもやがかかったようなものが多い。けれどどんなエッセイでも、インタビューの記録でも、日記でも。うす暗い闇にポトンと落とされた読者を、最後には必ず明るいほうへと連れ出してくれる。そんなところが彼女の作品を好きな理由のような気がした。

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話は変わるけれど、最近読んだ本「本屋で待つ(佐藤友則・島田潤一郎)」に書いてあった一節に、とても感動した。

この本は、広島の人口7,000人の町にある本屋「ウィー東城店」の店主佐藤さんの半生を聞いたものを、夏葉社の島田さんがまとめたものである。

私が感銘を受けた一節は、佐藤さんが若いころ、とある勉強会に参加していたときの話だ。参加者の一人が、飲み会の席で塩屋さんというある男性に、悩みを打ち明けていたという。塩屋さんは悩みを解決するというより、聞き役に徹していたのだそうだ。このとき、塩屋さんの言葉が佐藤さんの人生を変えた言葉になったという。

「人は明るいところに行きたがるんですよね」
「人は明るいところに行きたがる。だから、わたしはしんどい人とか、助けてほしいと思う人に寄り添いたいと思っているんです」

「本屋で待つ」p23より引用

この言葉を読んだ瞬間、私は思わず本を閉じて、深いため息をついた。すごくいい言葉に出会えたような気がした。自分がずっと見つけたかった目指すべき方向を、言葉にして教えてもらえたような気がした。

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ずっと何者かになりたくて、ひたすら毎日を生きてきた数年間。その苦しい時期を経てどこか吹っ切れて、「何者かにはならなくてよいのだ」と気づいた。

それでも自分はなぜ書くのか、なぜ店に立つのか、なぜ働くのか、なぜ生きるのか。

答えは見つけられず、やっぱりいつもどこか悶々とした気持ちを持ち続けながら生きてきたような気がする。

けれど本当はもっと単純だったのではないかと、気づいた。人は明るいほうへと行きたがる。であれば、私はその明るいほうへと連れ出す、お手伝いができたらいいなあと。

「会って話したら、元気が出た」「文章を読んで、前を向く勇気をもらいました」など。そう思っていただける存在になれたら、十分なのではないか。そう思っていただけるような、誰かの灯台のような人でありたい。

大げさかもしれないけれど、私が生きる目的はそれで十分だ。自分が目指すべき軸というのか、指針が、ここにきてようやく見えたような気がする。

そうと決まれば、あとはやるべきことをやるだけ。

周りを笑顔にできているのか、できていないのなら、なぜなのか。

と同時に、人を明るみへと連れ出すには、自分自身が心身ともに健康でないと続けられないだろう。そのためにできることは何なのか。今後生活をする上での、大切な判断軸としていきたい。

本当に何がきっかけで人生の指針が見つかるのか分からない。偶然なのだけれどこうしたセレンディピティがあるから、やっぱり読書はやめられない。

最近本にお金を使いすぎかなあなんて悩んでいたけれど、これからも自分のアンテナに刺さった作家さんや本への投資は、惜しまないようにしようと、心に誓うのであった。

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