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【読書メモ】鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

川上和人著

ふざけた調子で面白おかしく書かれているけれども、知らない世界の表と裏が知ることができる本。
知らない世界のことを分かりやすくリアルに書かれていて、ワクワクくすくすしながら読み進められました。特に興味深かったところを2つほど。

① 都を代表する鳥

都を代表する鳥は「ゆりかもめ」。
10種の鳥候補からハガキ投票が行われて正式に決定されたそうです。

へぇーそうなんだねーと素直に読み進めていましたが、この話には裏?奥行き?がありました。
まず投票数。1000万人いる都市で投票総数は3242票、ユリカモメは579票。0.01%以下の投票数で決められた代表鳥。そしてユリカモメは大陸北部で繁殖し、東京は越冬するだけ。冬休みにやってくるだけの鳥。片やメグロは東京の固有種(小笠原諸島)。東京固有の鳥はメグロしかない。ただ、小笠原諸島が日本に返還される3年前に投票があり、そのままそれから50年以上経つ。

そんな真実を知ったら「代表鳥」と言ったらユリカモメに何となく違和感。
でも世の中そういう風なことっていっぱいあるんだろうな、言ったもん勝ち、最初に決めてしまえば変えるのは難しい、代表の決め方は切り口次第、作戦次第だよなー、とついつい仕事や組織、世の中と照らし合わせてしまう。広く知られていることが真実とは限らない。便宜上なのかもしれない、はたまた誰かの思惑かもしれない。

② 手つかずの自然は恐ろしい

鳥の調査の為、無人島にいく時のお話。
普段人がいないもんだから、野生の生き物がたくさん。特に虫。口にも入る、目にも入る、しまいには耳にも入ってくるなんて恐ろしすぎる。そしてケガした手を海水につけると血の匂いによってくる海中の生き物がうじゃうじゃ。
山を登れば白いものがたくさん。その白いものとは生物の死骸から白骨化したもの。手つかずの自然とは生死が剝き出しになっているのだと、リアルに感じたことがない世界に強烈なパンチを受けました。

生物植物、自然の調査に関わっている方々の苦労を垣間見れ、早くて便利でコスパ最高の現代社会でのうのうと生活しているんだな、自分、と改めて感じました。こういう研究者の方々にもっとお金が回ればいいのにと思う本。著者の思いはここなんだろうと思うし、その思いは切実だろうなと勝手ながら思った次第。

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