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散文の部屋

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過去に書きためた散文です。
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朝散歩

朝散歩

裏山へ

イチョウはまだ青い

ここ数年、黄金色を纏うより先に木枯らしが吹き、ライム色の葉が道を飾るようになった。

半分緑で半分黄色。みたいな…

見上げた桜は空の青を透明に映してた。

少し体調が戻って来てこの日は、音を聴きたくて裏山へ行ったのだけどそこは無音でまさに、自らの声を聴けと言わんばかり

イヌタデの花言葉は(役にたちたい)なのですって。

イヌタデの奥にノイバラが地を這うように伸び

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たま

たま

「たまですよ」

巨岩を支えている土はそれを、「たま」と言った。

地元で有名になってしまった巨岩の鎮座する場所は、古い古い神社の裏手にあった。

竹林の、奥の奥。

この「たま」は元は土に埋まっていたという。土地の人が畑を作る為に開墾していたら岩の頭が出て来て、周囲を掘り進めると、それは大きな岩だったと。その岩の近くには勾玉が埋まっていたのだと。

散歩に連れ出した犬が何やら竹林の中を凝視してい

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鏡の中の吟遊詩人

鏡の中の吟遊詩人

突然の雨に成す術もなく、街路樹に身を寄せた。

潜り込んだ木の下はとても静かだった。もしかしたら、音までをも遮断しているのじゃないかしら?

見上げると、大きく張った逞しい枝に満点の星を思わせる程の葉が繁り、その一枚一枚は、水の感触を味わっているように見えた。

聖堂の様な木陰から、雨粒の音を歌う野鳥の声がする。

歌声に釣られ見上げた先では雀の一群がとても美しい声で、長く旋律を奏でていた。繁殖期

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