ソーシャルナッジ④「確信アシストレビュー」の見つけ方
「確信アシストレビュー」とは何か?
最初のnoteで、情報が洪水するSNS時代では信用される状態づくり(=トラストモード)が重要という話をしました。そしてそのトラストモードづくりを目指した情報発信の工夫をソーシャルナッジとご紹介しました。
前回までのnoteはこちら
今回は、4つ目にあたる「確信アシストレビュー」について解説していきます。
「確信アシストレビュー」というのは、簡単に言うと自分と商品の相性をチェックする際に参考となる「他人の評価」です。同じレビュー情報でも1つ前のナッジとしてご紹介した「ストッカブル正直レビュー」と何が違うのか、またどのような評価が最終局面での参考情報になるのか1つ1つ紐解いていきます。
私たちは商品そのものには興味が無い
商品を購入する際、私たちが関心を持っていることは、商品を手にした自分や商品を使った自分です。商品そのものではありません。お金を払って得たいものは、その商品を通して得られる便益です。だから他人の評価(=正確には体験談)が気になるのです。意思決定の最終局面においては「この商品は自分に合うのか」という点でのチェックをしておきたくなります。そして当たり前かもしれませんが、この工程は購入する商品が高額になればなるほど丁寧に厳しくなります。
チェックしたいのは「自分との相性」
確認したい点は当然商材によって異なってきますが、共通するのは機能面での「自分との相性」です。自分と商品、それぞれの特徴を掛け算して生じる懸念点をクリアにしておきたいと考えます。
たとえば、商材がリモートワーク用のデスク設備商品だった場合、自宅の作業スペース×商品の大きさ、インテリアの統一性×商品の色やデザイン、自分自身の身体のサイズ×商品のサイズやフィット感、家族構成(何歳の子供がいるか)×商品の安全性などが気になる点として挙げられます。これらの気になる点を誰かの評価(体験談)で知り自分との相性を知ることが「商品を使った自分」を想像する上で重要です。仮に自分の家の間取りの都合上、十分な作業スペースが無くリビングで仕事をするケースが多かった場合、専用の作業部屋を持っている人からの体験談ばかりだと、今いち気になるポイントが網羅し切れないといったことが有り得ます。
したがってブランドとしては、購入して欲しいお客様はどのような方でどんなニーズがあるのか、また自社の商品はどのような機能が購入前の相性チェックポイントとして上げられるのか、組み合わせを整理し、理解しておくことが重要です。
「確信アシストレビュー」の見つけ方(持ち帰りポイント)
企業側の想像だけで整理するのではなく、実際にお客様がどのような点を気にしているか、SNSに投稿されているUGC(User Generated Contentsの略)をチェックすることで洗い出すことができ、我々はこの方法を推奨しています。また、購買を検討しているお客様は明確に整理しているかどうかは置いておいて、心の中で競合商品と比較するための「星取り表」のようなものをイメージしています。そのため、SNSに投稿されているUGCをチェックする際は自社商品に対する声だけでなく、競合商品に対する声も同時にチェックしておくといいでしょう。
UGC自体はSNS上で自社の商品名(または競合の商品名)で検索をかければ見ることができます。お客様の商品購入の確信アシストとなるレビューを見つけていくには、UGCを購買検討のジャーニーで整理しながら見ることが重要です。どういう段階で何に興味を持ち、何に迷い、どう比較検討し、確信にいたっているのか、その際に見ている情報・参考になったことが何かをUGCから分析していくことで、次のプロセスに誘導するためのポイントのパターンが見えてきます。
その際、UGCの投稿でどういった動詞が一緒に使われているかについてもチェックしていきます。例えば「気になる」「迷う」「試した」「買った」「使った」「やめた」などです。商品名と共にこういった動詞が併せて使われているケースがあるはずです。この動詞を軸として、その動詞と共に使用されている共起語にどんな要素が入っているのか、分類することにより、購買検討プロセスのどの時点で何を重要視したのかが整理できます。
このようにUGCを分類していくことで、お客様が自社商品と競合商品を比べながら購買検討プロセスのどの段階でどのような点を重視しているのか、自社商品を競合商品と比較した際の強みと弱み、購買検討プロセスにおける決め手と離反要因などが見えてきます。そして現在SNS上に誰かが投稿した自社商品に関するUGCは、また違う誰かにとっての有益な参考情報としてプラスにもマイナスにも作用しています。プラスに作用した場合、まさに「確信アシストレビュー」として意思決定の後押しとなってくれるでしょう。逆にマイナスに作用している場合は、自社にとっての弱みとして真摯に受け止め、商品や提供サービス自体の改善や見直しをする上での参考材料にもできます。
以上が「確信アシストレビュー」の見つけ方です。
確信アシストレビューはどう活用するのか、どう増やすのか
最後に、見つかった確信アシストレビューをどう有効に活用すればいいのか、そしてもっとレビューを増やしていくにはどうしたら良いのかについてです。
・どうやって活かすのか?
当然ですが、自社商品の強みや意思決定の後押しとなってくれる情報はもっと多くのお客様の目に止まって欲しいところです。なので、デジタル/デジタル以外(店頭など)の購買チャネルや、購買検討〜確信に至るまでの顧客接点でUGCを活用していきます。
例えば、デジタル上では、WEBサイトや商品LP、ECでの商品ページ、顧客とのチャットコミュニケーションなど、購買検討の深いタイミングでのチャネルでよりアシストするために、UGCを活用させてもらうのがいいと思います。施策としては真新しい話ではないですが、ポイントとしてはその際に、UGC×ジャーニーでの分析結果なども活用し、どのチャネルでどんな人のどんなUGCを活用すれば購買・検討の後押しになるのか、理解した上で複数のUGCを設置します。そうすると、より顧客自身との相性を感じ、商品購入の確信を持ってもらうことができます。
また、理解・検討段階でどの機能を特に重要視しているかを参考にしながら、どのような情報を商品ページにコンテンツとして拡充するか、公式アカウントからの発信に組み込むか、などの取り組みもさらに考えていくことができます。
・どうやって増やすのか?
UGCはあくまでお客様の自由意思によって発信されるものです。企業側の都合で増やしたいと思ったところで意図的に増やすことは難しいでしょう。そのため、重要度の高いUGCを発信してくれているお客様には以下のようなコミュニケーションを可能な範囲で取り組んでいくのがおすすめです。
お客様と直接コミュニケーションを取ることは、企業によっては躊躇することもあるかもしれませんが、商品に対する一定の評価を持ってくれているお客様にとって、公式アカウントから御礼の連絡とともに商品ページや広告で取り上げたいと言われた際に悪い気はしないものです。
また、もしUGCにネガティブな意見があったとしても、そこに対しての説明や改善の検討・取り組みなどを具体的に返していくことで、ブランドの姿勢を感じてまた購入してくれて、次は違ったレビューをいただけることがあるかもしれません。ネガティブな意見にもお客様の願い・要望が込められているという側面を理解しておくことは大切ですし、レビューはポジティブなものばかりでなくネガティブなものもあるからこそ第三者にとって真実味や信頼度も増すものです。
とはいえ企業ごとのポリシーにも関わるところですので、直接的なコミュニケーションは慎重なオペレーションをおすすめします。
繰り返しになりますが、UGCというのはお客様の自由意思によって、自然発生するものです。企業側でコントロールすることはできません。その前提を受け止めた上で、有益な感想を増やしてもらえるよう1つ1つ積み上げていくしかありません。企業としてお客様の声を大切にする姿勢と努力は、商品に対してだけでなく企業やブランドそのものに対するポジティブな感想を生み出してくれることにつながっていくはずです。
・まとめ
いかがでしたでしょうか? 一度、ここまで紹介したナッジの各記事をご紹介しますのでご確認ください。次回はまとめ記事も執筆いたします。
ナッジ①「強共感」
商品・ブランドを知らなかった人に対して、発見・認知と同時にブランドに強い共感が生まれると、購買意欲を一気に高めてフェーズを進めたり、突発的なファン化が生じたり、以降のブランド検討時にいい影響を与えます。強共感を起こすためのポイントも紹介。
ナッジ②「多面ナラティブ共感」
複数の人から多面的にブランド語り(=ナラティブ)を聞くことで、認知の段階で商品への共感が生まれやすくなり、興味が強まると同時にポジティブに捉えてもらいやすくなります。なぜそうなるのか? についても解説しています。
ナッジ③「ストッカブル正直レビュー」
情報を「探索」している際に、参考としてストックしたくなる他人の評価。なぜ、他人の評価が重要なのか解説も交えながら、実際に評価をストックしてもらえるようになる条件も紹介。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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