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レズパコ

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【あらすじ】 女子校で繰り広げられる悪ふざけ、友人同士で腰を振り笑い合うレズパコ。そんな行為に情熱を燃やす一人の少女がいた。笑いあり!(下ネタが苦手でなければ)エロあり!(少年誌…
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記事一覧

桃色パジャマ水色パジャマ【レズパコ#16】

 先にシャワー浴びてきてと言われ、ついにそのときがきたかと身構えた。寮のユニットバスはシャンプー中に壁に肘をぶつけてしまうほど狭く、当然ながら脱衣所なんてない。フェイスタオルで体を拭き、トイレのふたに置いておいた下着を身につけ、開けたドアを目隠しにして顔だけ覗かせた。アニメを見ていたのんが振り向いてたずねる。 「パジャマ持ってきた?」 「ううん」  持ってきたのは翌日の着替えだけだし、そもそもパジャマを着るという習慣がない。 「そんなこともあろうかと」  ドア越しに

このケダモノが【レズパコ#15】

 終業式でコスプレさせられることもなく、ズル休み中のりちゃこと遭遇することもなく、のんとあれ以上の進展もなく、なにも整理がつかないまま明日から夏休みが始まる。散らかした部屋を見限り、父に借りたスーツケースも床に置きっぱなしで、荷物をリュックひとつにまとめた。  駅には旅館の送迎バスが迎えにきてくれた。運転手はのんのおじいちゃん、社長だ。ほかにも一般客が乗り合わせていたからあまり話せなかったけど、バスを降りるときに温泉の銘入りのモナカをくれた。  門の裏に隠れていたのんが、

スランプっていうか【レズパコ#14】

 戦犯は満場一致で私に決まった。あれだけお膳立てしておきながら、最後の見せ場で失態を犯したのだからぐうの音も出ない。だとしても、普段の私なら食い下がっただろう。りちゃこだって、タカナシだって、のんだって、と自分のことは棚に上げて。 「ヘタレでごめん」  素直に謝ると、りちゃこが回していたペンを机に落として目を丸くした。 「体調でも悪い?」 「べつに、ただの夏バテ」 「ふーん。まあ、それはそれとして、罰ゲームはしてもらわないとね」 「聞いてないんだけど」 「くすぐ

のんのんでり【レズパコ#13】

 母は線の細い人だった。ふうっと息を吹きかけるだけで輪郭が消し飛んでしまいそうなほど儚げだった。  入退院を繰り返す母はほとんど家におらず、いたとしても眠っていることが多かった。母がいつかいなくなってしまうことを、私はかなり幼いころから予感していた。それは一年後かもしれないし、明日かもしれないし、今日かもしれない。  あるとき、母と父と三人で海へ出かけた。浜辺には人影がなく、少し肌寒かったので、秋ごろだったと思う。母は体調が良かったのか、めずらしくはしゃいでいた。走ったり

雨の岩屋戸で【レズパコ#12】

 ずっと雨の中でもかまわなかった。風邪を引かないのがバカの特権だし、ずぶ濡れで抱き合うのもなんかエモかったから。だけどのんがくしゃみをしたので、近くの岩屋戸で雨宿りすることにした。線路と浜辺のあいだにそびえる松の岩山の下の、海に面した空洞に私たちは逃げ込んだ。  道の駅の明かりも、車のライトも、街灯も届かない闇の中、低い天井にぶつからないよう屈みながら奥へ進み、ちょうどいい段差にふたりで腰掛けた。  波で削られてできた洞窟は天然っぽいが、崩れないよう支えている柱は人工っぽ

君が好きだと叫びたい【レズパコ#11】

「レズパコ恐怖症じゃな」  かけてもいない眼鏡をくいっと上げるポーズをしながら、のんがのたまう。私は体操着に着替え、濡れた制服を物干しラックのハンガーに吊るしていた。 「それもかなりの重症じゃ。このまま放置すれば命に関わるぞよ」 「治るんですか、先生?」 「詳しく検査せんとなんとも言えんが、多少の荒療治は必要じゃの」  言いながらのんがスカートを脱ぐ。私は壁の埋込式の書架に目をやった。背伸びをしてようやく届く最上段まで、ぎっしりと漫画が詰め込まれている。たとえ毎日こ

ただのしかばねのようだ【レズパコ#10】

 胸ぐらにつかみかかった手を、りちゃこが忌々しげに振り払う。やめなよ二人とも、とのんがうろたえながら制止する。騒ぎに気づいたクラスメイトたちが、なんだなんだとこちらを振り向く。昼休み、窓ガラスはスコールに揺れ、遠くで雷鳴が轟いている。  りちゃこに肩を突き飛ばされ、私は掃除用具入れに背中を打ち付けた。スチール製の扉がベコンと大きな音を立てる。世間話に夢中になっていた子たちも、驚いて振り返った。私は苦痛に顔をしかめながら、りちゃこの肩を押し返した。 「いいかげんにしてよ!」

それとゆわなびぃ【レズパコ#09】

 ぽつぽつと小雨が降ってはいるものの、道の駅のマルシェは大盛況だ。テラス広場には簡易テントが軒を連ね、たこ焼きや天ぷらのおいしそうな匂いを裏口まで運んでいる。  オーシャンビューの正面とは対照的に、裏側は絶壁だ。ほぼ垂直の斜面はワッフル状のコンクリートで舗装され、道の駅の屋根を超えたあたりから鬱蒼と緑に覆われている。日が当たらない代わりに風も届かない、駐車場から搬入口に通じるこの薄暗い谷間に、私とのんは座っていた。  休日なのにふたりとも半袖ハーフパンツの体操着姿で、ひっ

ひらいて【レズパコ#08】

 りちゃこと二人きりでカラオケに来ると、大森靖子ばかり聴かされる。だから私も対抗して、プリキュアおよびプリパラを振り付きで熱唱する。  大人数だと私たちは盛り上げ役に徹してしまうので、本当に歌いたい曲を歌う機会はあまりない。私はリクエストされれば知名度の高い曲だけ惜しみなく披露するけど、りちゃこはZOCすら歌わない。  目を閉じて歌詞も見ず『ひらいて』を歌うりちゃこを眺めながら、私はデンモクに次の曲を入力した。氷が溶けて薄まったジンジャエールの底をすすり、喉を整える。

私だ【レズパコ#07】

 昨日はお腹が痛くて学校を休んだ。今朝にはスッキリしていたが、なんとなく億劫で家を出るのが遅れた。のんには足をグルグルにして走るラインスタンプを送っておいた。  のんとの待ち合わせのために、私は毎朝一つ遠い駅から通学している。家を出て、学校とは逆方向の海側に自転車を走らせて、正しく一日を始めるためにのんのケツを叩く。その分のロスタイムがあるので、ちょっとくらいの遅れなら最寄りの駅から乗れば始業に間に合うのだ。朝起きれなくてギリギリなときはたまにそうしている。  金曜日とは

ボンレスハム太郎【レズパコ#06】

 四限目に体育がある水曜日がいちばんアガる。授業から昼休みまでシームレスに体育館を独占して遊び倒せるからだ。  しかし今日の私は絶不調だった。三日前から続く便秘で視界が霞んでいる。今朝もトイレで頑張ったが、なんの成果も得られなかった。菓子パンをレタスサンドイッチに切り替え、フルグラを牛乳ひたひたで食べまくっても、私の腸は教科書に押しつぶされたバッグの底のイヤホンコードのように固く複雑に絡まっている。創作ダンスで体を動かしまくっても、冷や汗ばかり吹き出してくる。  昼休みに

ガラスの浮き球【レズパコ#05】

 週末はたいてい海岸沿いの道の駅のカフェでのんと過ごす。海に面したガラス張りのカウンター席で、眺めているだけで涼しくなるライムソーダのグラスを二つ並べ、自由帳にペンを走らせながらとくと語らう。 「あら、宿題?」 「あっ、はい、お母様」  背後から覗き込む声に、私はとっさにノートを隠して振り返った。ベージュのチノパンに白いポロシャツ、デニムのエプロンをすらっと着こなすのんのママが、娘とそっくりな垂れ目を細める。 「ううん、ネタ作り」  のんが横から口を挟む。余計なこと

レズパコ禁止【レズパコ#04】

 スドウとアリダの喧嘩を仲裁してほしいとタカナシに頼まれた。同じクラスでそこそこ仲も良く、ビッグバンアタックの講習会にも参加してくれた彼女らではあるが、どうして私にそんなことをお願いするのか首を傾げてしまう。とはいえ頼られると断れない性分だ。私は腕まくりをして頷いた。  聞いてみると、スドウとアリダはべつに取っ組み合いのキャットファイトを繰り広げているわけでもなく、ただひたすら険悪になっているらしい。ますます私の領分ではない。どんな問題も力づくで解決できるならそれが一番なの

ビッグバンアタック【レズパコ#03】

 いきなり背後から襲いかかって腰を振り、相手を棒読みで喘がせる、その一連の流れはビッグバンアタックと名付けられた。翌日には数人が活動に参加し、翌々日には組合が結成された。動画は瞬く間にバズり、瞬く間にBANされた。  私はりちゃこを机に組み伏せ、実践指導を行なった。撮影班が四方に待機し、のんが後方腕組みで見守っている。 「重要なのはファーストタッチです」  適宜指導を交えつつ、デモンストレーションを進めてゆく。 「いきなり尻を鷲掴みにするのもありですが、この場合は拘束