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BOOK REVIEW vol.013 父の詫び状
今回のブックレビューは、向田邦子さんの『父の詫び状』です!
向田邦子さんのエッセイ『父の詫び状』との出会いは、確か中学生か高校生の時。国語の試験問題として掲載されていたものを読んだのが初めてだった。試験中、ぐいぐい惹き込まれるように読み、向田邦子さんの鋭い観察眼と文章構成の緻密さに衝撃を受けた記憶がある。
そんな出会いから約25年、何度も読み返してきた『父の詫び状』は私にとって特別な存在になった。でも、いざ感想を書こうとすると何故か手がとまる。正直に言うと気後れしてしまい、今も何をどう書いたら良いのか考えながら書いていたりする(苦笑)
向田さんのキリリとした、そしてどこか翳りのある文章のファンであることは第一にあって、でも恐らく15、6歳の私が『父の詫び状』に惹かれたのは、エッセイに登場する向田さんの父親と私自身の父親が重なったからだと思う。
“昭和の父親”を絵に描いたような…。一家の大黒柱として家族に君臨し威張る父親に、自分の父親を連想せずにはいられなかった。しかも巻紙に筆で手紙を書くところまで一緒!(うちの父親は今でも時折そんな手紙を書いて送ってくる…)
昭和4年生まれの向田さんと昭和50年代生まれの私では、同じ昭和でも生まれ育った時代背景はまるで異なるけれど、エッセイを読むと不思議と向田さんにシンパシーを感じることも多い。
向田さんの父親に自分の父親を重ね、幼少期の向田さんに私自身を重ねて『父の詫び状』を読む。すると私の中にモヤっと漂う未消化な何かがパチンとはじけて消えていき、過去の自分が癒されていくような気がする。
そして何より私は『父の詫び状』の最後、終わり方がとても好き。プライドが高く少し不器用な父親なりの行動に、胸の奥にじわじわとあたたかいものが込み上げてくる。いくら昭和の頑固父親といえども、やっぱり心を持つ一人の人間なんだ、と気付かされる。私の父親だったらどうするだろう?きっと同じような行動をするのかもしれないな。だって元・昭和の頑固親父だもの。
ああ、こんなレビューじゃ、好きな気持ちの十分の一も伝えられていない気がする!・・・でも仕方ない。きっとまたこれから先も何十年と読み返すうちに、今言葉にできない想いも次第にカタチになっていくはずだから。その時はまた改めて熱のこもったブックレビューを書きたいと思う。
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