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MBA取ってからキャリアダウンした話

「転職や異動などで年収が上がった卒業生、90%以上!!」

のような宣伝はビジネススクールの常套句だと思う。
それは、入学希望者が抱くビジネススクール卒業後の自身のイメージであり、それがニーズともいえる。

実際、こちらの記事にもキャリアアップ・年収アップが大きな目的の一部として書かれている。

多くの人が、キャリアアップを目指してビジネススクールに通い、苦労して卒業し、ビジネスパーソンとしてキラキラしたチャレンジをする。
僕は卒業してから2年たっているが、今でもSNS上でそんな投稿を見ることは多い。

そんなイキイキとした卒業生の活躍を尻目に、僕は「キャリアダウン」を選択した。
ビジネススクールに通い、MBAを取得し、さらなる挑戦へ。というある種スタンダードな道を選ばず、キャリアダウンを自ら選んだ。

しかし僕は今、幸せである。
誰が、何と言おうと、幸せに感じている。これが事実。

ビジネススクールでの学びが、僕に「キャリアダウン」を選択させてくれた。

成長への圧力

僕が通っていた大学院は、研究者が集まるというよりも、実務として経営に携わる(もしくはそれを目指している)人が多い場だった。
実務で学びを生かすことへのモチベーションが高い、すなわち、学んだことを即実践して卒業前から実務で成果を上げている人も多い環境であった。

そんな場で、ビジネスの「ビ」の字も知らない、医療専門職の僕。
P/L(損益計算書)は、何回聞いてもかつての甲子園常連校である「PL学園」のことにしか聞こえなかったし、
市場と聞いても、築地市場のイメージしかわかなかった。

そんな状態からスタートした僕でも、ついていこうと必死に学べばそれなりに議論についていけるようになった。

その大学院の科目の中には、「将来、自分が成し遂げたいこと」を本気で考えるクラスがあり、そこでは当然のことながら、「自分の所属する医療機関から、もっと大きい組織を動かせるような立場になりたい」という思いを持っていた。
その思いは、先ほど述べたような、お手本のようなキャリアアップ、キラキラしたビジネスパーソンへの道標だった。
そんな思いを吐き出しても認めてくれる人たちが集まる場だったし、もっと大きな夢を語る人もいた。
そんな人たちが集まる場だったから、自身のスキルを伸ばし、そして目標を高く設定するには、最適な環境だったと思う。

確固たる自信

それから卒業まで走り続け、何とか卒業。
卒業まで3年間。その間に2人子供が生まれ、入学前と大きく環境が変わっていた。
卒業時には「大きな組織を動かすこと」よりも「新しい事業を始めること」へのモチベーションが高くなり、起業やスタートアップへの就職を希望するようになっていた。
実際に起業するためのチームも組んでいたし、そのための市場調査やビジネスアイディアの検証も行っていた。

先がまだまだ見えない状況を進んでいくのは不安もあるが楽しくもあり、それこそ「キラキラ」していたように思う。

そんな時、久しぶりに大学の同期と話す機会があった。その友人は元々は僕と同じ医療職。今は企業の幹部メンバーとして経営に携わっていた。
その友人が話す経営の話にバッチリついていくことができたことは今でも覚えている。
これまでの僕ならば考えられない。どの業界であっても、ビジネスに共通して必要な知識が身につき、かつ各業界の特徴をつかみながら要点を捉えることができるようになっていた。

それ以外にも、色々な場で同じような経験をした。それにより、
「これならば、ある程度どこにいってもやっていけるな」
という自信がついた。

お前のキャリアは、おれのもの。

自信がつくと、やりたいことも増えるし、捗る。
本業でも新しい事業の準備を進め、起業の方も少しずつだが前に進んでいた。
SNSに投稿したら承認欲求を得られそうなくらい、調子のいい時期だった。

しかし、家庭から悲鳴が聞こえる。

妻は育休中だが、元々仕事が好きなタイプ。
復帰後もフルタイムで働く予定だった。
1人目の育休と、2人目とでその負担は桁違いだったようだ。頭では理解していたつもりだったが、ここまで疲弊するとは…

子供も子供で、上の子はイヤイヤ期真っ最中。
どうしても手がかかる下の子にかかりきりにならざるを得ないママを見て、ストレスを感じ、それを処理しきれずイライラを周囲にぶつけているようだった。

僕自身、一応家事も育児もやってはいた(つもりだし、妻もやってくれているとは言っていた)が、これほどまで家庭から悲鳴が聞こえるような状況の中、あまり僕が自由なことをしているわけにもいかない、と感じ、これからの身の振り方をもう一度考え直した。

妻が職場に復帰したらどういう生活リズムになるのか。
自分なりにイメージし、家庭をうまく回すには、これしかないと思った。

「家にいることができる時間を増やそう」

しかし、それでいいのか?
家にいるということは仕事や学びに使える時間は減る。
自分のキャリアは?起業は?家庭に時間をどこまで割くのか?
自問自答を繰り返したが、やはり、

「妻が、家族が幸せなことが、自分にとって一番大事だ」

としか思えなかった。
妻はずっと働きたい人。自分でもしっかり稼いでいきたい人だ。

自分のキャリアも大事だが、妻のキャリアは僕にとっても大事。
自分一人が幸せになるのではなく、家庭全体が一番幸せになる方法を考えるのが僕の役目だ、とその時思った。

今を生きること

それから僕は働き方を変えた。
1週間のうち、3回は僕が子供のお迎えに行けるようになった。
それで職場の収益が落ちてはいけないと考え、僕が早く帰宅する分、休憩時間を短くして他の仕事ができるようにしてもらうよう、新たな事業を立ち上げた。

早く帰宅できるようになった分、子どもと接する時間も増え、心なしか妻の表情も穏やかになった。

キラキラした業界への転職(実際、1,2個転職のお誘いもあった)や、起業などの道は一旦ストップしたが、
今は家庭を優先している自分の人生が幸せに感じる。

なぜ、この道を選択できるようになったのか?

それはビジネススクールで学び、MBAを取った今の自分なら、「ある程度どこにいってもやっていける」という自信がついたから、だと思う。

一旦足踏みをしても、またチャレンジできる。その力はつけてきた。
その自信があるからこそ、この選択をすることができた。

このキャリアダウンは、決してネガティブなものではない。
今自分にとって一番大事なことを考えた時に、自ら選択したポジティブな決断だ。

家庭を蔑ろにして稼ぐことよりも、幼少期の貴重な時間を家族のために使うことの方が、今の僕にとっては貴重だと判断したからだ。

ダウンしたけど、完全に止まったわけじゃない

ただ、僕は今こうしてnoteを書いている。
このnoteで主に書いている理由は、今の現状から学び、過去の学びとリンクさせ、新たな価値を作るためだ。

転職や起業など、キラキラしたものではないかもしれない。
しかし、こういった創作活動・発信活動も続けていくことでも、輝かせることができると思う。

仕事としてのキャリアはダウンしているし、停滞もしているかもしれないけれど、人生として止まっているわけじゃない。
今できること、これに集中してやり続ける。

「今自分が一番大事にしている家庭を守り続け、将来に向けて力と小さな実績を蓄えること」
これが、今の僕の人生を豊かにしている、#自分で選んでよかったこと だ。



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