キャンセルカルチャーという文化破壊
キャンセルカルチャーとは、有名人の過去の不祥事をほじくり返して大炎上させ、それを存在ごと無かったことに抹消させる文化破壊運動のことで、まさに今日本で大手アイドル事務所をめぐりそのムーブメントが起きている。これに対し、ゴシップネタを陽動として水面下で「重要案件」が進行中、みたいな物言いはよくあるが、これぞゴシップを偽装した文化破壊工作であるとも言える。
事の発端としては2010年代、ポリコレ真っ盛りの米国で著名人の過去の不祥事を蒸し返して「You are cancelled! (お前は用無し!)」と糾弾する、コールアウトカルチャー運動が巻き起こった。それが左派の人権運動と結びつき、2017年、映画監督や有名俳優が過去にセクハラしていた問題を糾弾する「#MeToo」へと発展。2020年になるとミネソタ州で白人警官が黒人男性を殺害する事件を契機にBLM運動が勃発。ラシュモア山の4大統領のうちワシントンとジェファーソンは奴隷を所有していたことから彫像の撤去運動が起きたり、米国各地で建国に寄与した大統領や南北戦争のリー将軍の像をなぎ倒す、さらにはコロンブスも侵略者認定するなど、運動はますます過激化・暴徒化していく。
そこで2020年7月4日(建国記念日)当時の大統領ドナルド・トランプはこれらの運動はこれまでの文化を否定する「キャンセルカルチャー」だとし、「この国の歴史を消し去り、英雄たちを侮辱し、我々の価値を消し去り、子供たちを洗脳しようとする、情け容赦ない組織的宣伝活動だ!!」と喝破した。こうして米国はキャンセルカルチャーを支持する左派-人権派とキャンセルカルチャーを否定する右派-白人至上主義・キリスト教原理主義とに真っ二つに分断。極右と極左のアンバランスな分断社会になってしまったわけだが、その波は数年遅れてこの日本にもやってきた。キャンセルカルチャーは過去の文化を否定・破壊しそれを築いた人間を吊るし上げて断罪してギロチンする、という意味で文化大革命のような革命運動に通じるものがある。多くの人がそれに気づかず「正義」を行っていると思っている点も然りで、法の不遡及原則などあったものじゃない。
文化を築いた人間がたとえ悪人であっても、歴史の連続性や文化の堆積の上に存在するのが人間であって、そこを否定するのは自身の否定でもあり、文化のみならず自国の歴史だって全部キャンセルするまでエスカレートしかねない。この極左革命運動に対し日本の保守派も無関心に傍観してるだけなのも嘆かわしい限りだ。
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