人生、転職、やり直しゲーム 第1章
【パワハラパレス情弱店】
俺は、会社に帰る途中で、
コンビニでビールと日本酒を買い、
パワハラパレス情弱店に向かった。
制服の警官に、
よくコンビニの店員が酒を売ってくれたなぁ。
俺はダンプの
バックミラーで自分の顔を確認した。
目が爛々と怪しく光り、
その目の下には真っ黒なクマが広がり、
頬は痩け、
ニュースよく見る捕まった麻薬中毒者のようだ。
逆に職務質問されそうな顔だ。
帽子を深く被り、
パワハラパレス情弱店に向けてダンプを発進させた。
ダンプを駐車場に停めて、
たくさんの袋を助手席から持ち出した。
店の受付嬢を無視し、
客と話すテーブルがあるコーナーを通り過ぎ
営業課のドアを開けた。
菅四輝しかいない、
皆は外回りか?
菅四輝はギョッとして、こちらを見た。
「警官?
無能…だよな?
コスプレか?」
「そうだ、課長は?」
「お客さんと会うと言って出て行った」
「何だと!
俺が用があるときに何でいないんだ!」
俺は、ホルスターから拳銃出して
菅四輝に向けた。
「客なんてどうでもいい!
従業員を大事にしないから、
皆、辞めていくんだ!
一刻も早く、
課長を呼び出せ!」
「ヒィ!」
俺は拳銃の安全装置を外した。
カチリ。金属のいい音が響いた。
「早く、課長に電話して、
戻るよう言え!」
「わ、分かったよ、電話する」
菅四輝は、携帯電話を鳴らしたが、
「繋がらない」と言って電話を切った。
俺の怒鳴り声が店中に響いたのだろう、
他の課から、
俺の様子を見に野次馬共が
ゾロゾロ間抜け面を引っさげてやってきた。
「はいってくるなぁぁああ!」
俺はピストルを営業課の扉に向かって撃った。
バァン!
ピストルの反動で、俺はよろめいた。
うぉう、コレが実弾かぁ、サバゲーと違って、
反動が凄いなぁ。
手が痺れそうだ!
玉は、入口の近くの床に当たり、めり込んだ。
「キャー!」
女の甲高い声が店内に響き渡った。
「俺は、課長に用があるんだ!今すぐ課長を呼べ!」
野次馬共は皆、逃げていった。
「ヒィィィ〜ィィィィ…」
菅四が体をガタガタ震わせ、小便を漏らした。
「ほぼほぼ本物のピピピピストルなんか、
ああああ危ないじゃないいいいいか。
ここここここ殺さないでくくくれ」
「ひひひ、それは課長が来てから考える。
安心しろ、今は生かしておいてやる。
ただしっ!
逃げようとしなければな。
ま、課長が来るまで酒でも飲んでいろ」
俺は袋から缶ビールを出して菅四輝に渡した。
誰かが通報したのかパトカーのサイレンの音が近づいてきた。
窓から駐車場を外を眺めると、
どうやら、店全体が警察に取り囲まれたようだ。
他の課の連中は皆、
こっそり会社の外に逃げ出したようだ。
くそう、俺には銀行強盗みたいに仲間がいないから、逃げたい放題だ。
営業課の代表電話が鳴った。
俺は菅四輝に電話に出るよう言って、
後頭部にピストルの銃口を向けた。
菅四輝は震えた手で受話器を取った。
「はははははい、はい、俺は、すすす菅四輝るるる、
はははは犯人にに、かかかわりりります」
菅四輝は、震えた手で俺に受話器を寄越した。
俺は菅四輝の頭に銃口をむけたまま、
受話器に向けて喋った。
「課長かい?」
「もしもし、情弱警察所の攻杉(せめすぎ)だ。
営業課の唖唖家葉(ああいえば)課長と話したいのかい?
君の制服とピストルは、
民事不介入交番の警察官が持っていたものかな?」
「さあ」
「いつ、どうやって、手に入れたのかね?」
「質問しているのは俺だ。
課長は、どうした?」
「警官はどうなったんだ?」
「課長はどうしたと聞いているだろう!」
俺は、
銃口を下に向けて菅四輝の太ももを狙って撃った。
轟音が響いて、菅四輝が叫んだ。
「ギャアァァアァァァァ!」
ヒット!
ピストルの俺の手に伝わる反動の感触と、
菅四輝の赤く染まってゆくズボンを見ながら、
俺は快感に酔いしれて
ヨダレを垂らしながら、電話口で怒鳴った。
「課長を連れてこい!
菅四輝の命はないぞ!」
「わ、分かった。
課長を連れてきたら、
そこにいる、関係の無い菅四輝さんを解放してくれ」
「課長をちゃんと連れてきたら返事をする。
まずは、課長に電話をさせろ!
パワハラパレスの営業マンの時給がいくらだか、
知っているのか!」
俺はここで受話器をがちゃんと置いた。
ウヒョヒョヒョヒョ、
菅四輝のうめき声を聞いていると、
本当に愉快だ。
同期の癖に、
ちょっと、いい学校を出て、
ちょっと、架空契約が取れたくらいで、
俺より上の立場だと思って、
俺に社用車の運転をさせやがって!
営業課の代表電話が鳴った。
どうする?
きっと課長だ。
【出る】
課長は俺の携帯にかけるはずだ。
【出ない】
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