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「第七官界彷徨」ご存じか?

《よほど遠い過去のこと、秋から冬の短い期間を、私は、変な家庭の一員としてすごした。そしてそのあいだに、私はひとつの恋をしたようである。》
冒頭の文章だ。

尾崎翠《おさきみどり》著「第七官界彷徨」を紹介しよう。
昭和初期の女性作家による、幻想的で、アバンギャルド(借りものの言葉で面はゆい) 、つまり新しい感覚の小説だ。
平易でやさしい文章で書いてあるが、いつのまにか第七感の世界に入り込んでいる。

竹宮恵子や萩尾望都のような少女漫画の原点という人もいるし、太宰や井伏鱒二も絶賛している才能だ。
植物感覚の持ち主らしい。
その時代の書きたい女子の登竜門、文芸雑誌への投稿から始め、林芙美子の面倒もみていたそうだ。

押し入れの断捨離本棚で主張していたので、再読したが、やはり面白かった。
好みの小説だ。
ふわふわした言葉遣いで、物語に引き込む。

人間の第五、六を飛び越えた、第七官に響くような詩を書きたいと、日々、彷徨を続けているちぢれっ毛の女の子。

「第七官というのは、私は仰向いて空を眺めているのに、私の心理は俯いて井戸をのぞいている感じなのだ」

著者の生み出した分裂心理学を、研究している上の兄一助。
肥やしの調合や苔の恋愛の研究に没頭している兄、二助。
三五郎という音大をめざす浪人生の従兄。
この三人の炊事係として上京する場面から始まる。

非日常の物語が好きだ。
物事を深く考えないタイプなので、風変わりな考え方をする主人公、違う時代、別世界の主人公が跋扈する世界に憧れる。

私に想像力、創造力があれば、好きな物語が書けるのに…。
探し出して読み耽るしかできない、いえ、それができるだけでも、喜ばしいことだ。
まだまだ未知の物語が見つけてくれと、待っているだろう。

そういえば、上橋菜穂子さんが新刊を出されるそうだ。
「香君」草木や虫、鳥や獣が香りでやりとりしている様子を風の中に感じる女の子の物語らしい。
わくわくする。
上橋先生、ありがとうございます。
3月24日発売。

尾崎翠さんの紹介と上橋菜穂子さんの新刊を勝手に紹介の巻でした。


読んでくださってありがとうございます。


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