「人の実験を一緒にやる」事の大切さ
学生が研究を進める上で陥りがちな良くない状態はいくつかあると思います。その中の一つに、「コスパを求めて自分の研究しかやらない」ことだと思います。
一般に学生研究は自分のテーマを持ち、成果を出すために文献調査や実験を進めていきます。しかしながら研究というものはなかなか成果が出ません。「卒論書くための成果が出ないよ」、「研究テーマが決まらないよ」、「これじゃあ学会に出れないぜ」と苦しむ学生が多数派なのではないでしょうか。そうすると人はどう考えるようになるか。僕のデータ(ソースは自身の経験や周囲の人間)によると、コスパを求め始めるんですよね。具体的には、「成果に向けて必要なことだけやろう!」という思考になるわけです。そうすると、テーマに関係ない文献調査や同期や先輩の研究の手伝いなんてしないんです。だって自分の成果に関係ないし意味ないから。正確には、自分の成果に関係ないし意味ないと思い込んでいるから。
「自身の研究成果を出す」という目的対して「他分野の文献調査や同期や先輩の研究の手伝い」という行動は関係もなければ意味もないのでしょうか。僕は関係も意味もあると思います。なぜなら、幅広い技術を身に着けることが出来、さらには議論するきっかけとなるからです。
人の実験を手伝うことで何が得られるか。実験器具の使い方や測定原理、その人の研究における実験の位置付け、目的に対する実験結果の使い方などたくさんのことが学べます。確かに、その実験器具を直接使うことはないかもしれません。でも、後輩に教えることが出来るようになり、研究室の知見が継承しやすくなりますよね。また、目的、課題に対する実験の位置付けといったフレームワークは自身の研究の参考にもなります。さらにこういった話題は議論のあてには最高ですよね。「この実験って目的に対して適切なの?」、「その考察のためにはこんな実験も必要じゃない?」などなど。考えるだけでワクワクしてきますね。幅広い知見や考え方を吸収できるだけでなく、自身の考え方までブラッシュアップできてしまう。なんてお得なんでしょうか。皆さんもそろそろお気づきではないでしょうか。「あれ?人の実験手伝う事って実はコスパがいいのでは?」
自分の研究に関することだけやるのがコスパ良い、という間違った常識がはびこっていると私は感じています。これはなぜか。私は受験勉強が大きくかかわっていると思います。「いかに効率よく合格点をとるか」が受験であるのに対し、「どこまで挑戦を繰り返して成果を出せるか」が研究だと思います。志望校のに必要ない科目はどんどん切り捨てる。傾向と対策に合わせて必要な問題を解ける力を身に着ける。そのためには人と議論する必要もないし(質問は別)、一人で黙々と勉強することがよしとされます。しかし研究は違います。これまで学んできた学問を総合させてある課題を解く必要がありますよね。その課題を解くために必要な学問や実験、考え方なんて最初からわかるわけないんです。広い知識、多様な視点を身に着け、議論を重ねてやっと成果につながるんです。一般的なコスパがいいやり方は研究では通用しないんですね。何なら、一般的なコスパがいいやり方は研究ではコスパが悪いわけです。「人の実験を手伝う」などのコスパが悪いと思うことをやってみると、案外うまくいくのかもしれませんよ!と、声を大にしていいたいです。