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第二回 ブランドとデザイン(1)      「らしさ」は視覚情報によって作られる

 今回からは4回にわたって、ブランドとデザインの関係を見ていく。ブランドとは、消費者の側がその企業や製品に対して感じる「らしさ」のことをいう。ここでいう「らしさ」とは、他社や他の製品からでは感じられない、その企業や製品のみから感じる独特のイメージのことである。したがって、そのような独特のイメージが消費者に認識されていない場合は、本当の意味でのブランドとはいえない。
 このように、ブランドの主導権は、基本的には消費者の側にあるが、だからといって、企業の側が何もしなくてよいというわけではない。どのような消費者に対して、どのようなイメージを持ってもらいたいのかを考え、それを実現していく必要がある。このような一連の施策のことをブランド戦略という。

https://www.amazon.co.jp/ブランド優位の戦略―顧客を創造するBIの開発と実践-デービッド・-アーカー

 ビジネスにおいて、このようなイメージ作りが重要になるのは、一般の消費者が企業や製品の情報をすべて知ろうとしても、知ることができないからである。企業と消費者との間には、経済学でいうところの「情報の非対称性」がある。そして、そのギャップを補うのが、ブランドである。つまり、「本当は良く分からないけれども、〇〇社の製品であれば、環境に配慮しているに違いない」などのイメージである。
 このように、ほとんどの消費者は、製品をイメージや、そのイメージに基づく信頼をベースに購入している。これは逆に言うと、消費者に特定のイメージを抱いてもらえれば、彼等との間に信頼関係を築くことができ、自社や自社製品に対するロイヤリティを高めることができるということである。そして、そのイメージ作りに深く関係しているのがデザインである。

https://www.amazon.co.jp/ユーザーイリュージョン―意識という幻想-トール-ノーレットランダーシュ/dp/4314009241

 Nørretrandes(1991)によると、人間は毎秒1,120万ビット以上の情報を受け取っており、そのうちの1,000万ビットを視覚情報が占めているとされている。つまり、人間が受け取る情報の約90%は、視覚から取り込まれているのである。もちろん、脳はそれらの情報をすべて処理することはできないため、そのうち、意識下に留まった40ビットほどの情報を基に勝手にシミュレーションを行い、つじつま合わせを行っている。つまり、不足分を処理した情報から作り出したイメージで補っているのである。
 このように、イメージの大半は視覚情報から形成される。そのため、イメージであるブランドは、視覚情報であるデザインなしには成り立たないということになる。まさに、“To See is to Believe”なのである。

参考文献
森永泰史(2016)『経営学者が書いたデザインマネジメントの教科書』同文舘
 出版。
Nørretrandes,T(1991) The User Illusion: Cutting Consciousness Down to Size,
  Penguin Books(柴田裕之訳『ユーザーイリュージョン:意識という幻想』
 紀伊国屋出版、2002)

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