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『存在しない女たち 男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く』歪曲された真実に挑む勇気

本日はキャロライン・クリアド=ペレスさんの『存在しない女たち 男性優位の世界にひそむ見せかけのファクトを暴く』をご紹介します。

最初のページを開くと、とても小さな文字の一文が飛び込んできます。

「闘い続ける女たちへ 挫けずに、ひどく手強い存在であれ」

読めば読むほど、驚きの理不尽なまでの事実が明らかになっていきました。

この本を読むと、いかにこの世界は女性不在の社会であるかと思い知らされ衝撃を受けることでしょう。

日常生活、都市計画、政治、職場、自然災害、医療。

あらゆる検証が必要な場面で、女性のデータは著しく欠落していると指摘しています。

つまり、データにおける「ジェンダー・ギャップ(男女の違いにより生じる格差)」が生じているということ。

ボーヴォワール『第二の性』が伝えている言葉を、象徴的に引用しています。

「人間とは男のことであり、女は男を基準にして規定され、区別されるが、女は男の基準にはならない。

(中略)男は、"主体"であり、"絶対者"であるーつまり女は"他者"なのだ」


女性のデータが失われてきたために、中途半端な真実があらゆる常識として横たわっているのです。

たとえビッグデータの世界に突入しようとも、その欠落が考慮されているかどうかを確かめる術もない。

例えば、医療、薬。

さまざまな治験には女性はほとんど除外されてきたため、妊婦への対処法に関する確かなデータが不足しているそうです。

また、男性には効く薬が女性には効かないことがあり、女性の命を脅かすことさえあると言います。

研究では性差が考慮されず無視されているのですが、実は薬の効き方は男性と女性とでは明らかに違うそうです。

驚くべきことは、女性に多い疾病の動物実験にさえ、雌性動物が含まれていないということ。

動物実験は雄のネズミを使うことが多いのです。

自閉症について。
自閉症は男子の方が女子の4倍多いが、女子は重度の自閉症が多いというのが、長い間の通説だったそうです。

これも、新しい研究では、女子は人付き合いをうまくこなすので、男子より自閉症の症状が表れにくいことや、女子の自閉症も従来の認識よりも多くいることが明らかになったとか。

自閉症の診断チェックリストや診断は、男子や男性向けに開発されたもの。

女性の症状はまったく異なるニーズでありながら、言及されてきていないと言います。

これには、驚かされました。

世界で自然災害が起こった時の復興計画について。

日本はここまでひどくないとは思うのですが、女性の視点が抜け落ちると言及。

例えば2001年、インド西部のグラジャート州の地震では、数千人が死亡し、約40万軒の家屋が崩壊しました。

そこで、新たな家屋を建設することになりましたが、その計画には女性がいっさい関わらなかったどころか、意見すら聞かれなかったそうです。

そうして、彼らはキッチンのない家を建てた。

こうした例は極端な話ではなく、スリランカでの津波の復興プロジェクトでも行われたと言います。

つまり、男性は食事の支度などをしたことがなかったために、なにが問題となっているのかわからず、ビジネスとして復興に当たったことで、問題が顕著になったのです。

職場、家庭、政治の場面についても、暴かれていく事実が痛快でありながらも、とても空虚で複雑な思いがしました。

最近、目にする東京五輪の一連の女性をめぐる不適切な発言も、このジェンダー・ギャップが根底に潜んでいることは、想像に難くありません。

余談ですが、この本、Amazonで新品が出てきません・・・。
去年出版されたばかりなのに、なぜ??

私は先日、偶然にも書店で1冊だけ見つけることができたので幸運でした。

不都合な真実を知ることができる本こそ、多くの人に読まれてほしいのに、残念です。

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