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Photo by
usharp
あの子の日記 「白い空」
これは、白くうすい雲が空にぺったりと張りついているお昼すぎの話です。太陽はまだ高い位置にいるはずですが、わたしの目にはうつりません。
「ふゆの朝みたいにくもってるね」
まるい窓の外を見てわたしがつぶやくと、
「白い空は好ましくないな。きみはどう思う」
と例の男は言って、氷の入ったつめたいコーヒーに口をつけました。わたしは何もこたえず、コーヒーのかさが減っていくのを眺めていました。グラスのなかに三分の一ほどコーヒーを残した彼は、ソファに寝転び、安心した表情で目をとじています。
わたしは身に付けていたワンピースを床におとし、銀のつめたいネックレスを男の鎖骨のうえに垂らしました。それから彼の真っ白な肌にぴったりとくっつき、銀色のモチーフを彼とわたしの体温でゆっくりとあたためました。
「白いものはすきよ」
わたしがつぶやくと、男は黙ってわたしを押しのけました。それから肌についたモチーフの跡をわずらわしそうに掻きむしり、小さく舌打ちをしました。
白い空はひび割れ、雲間に青空がのぞいています。
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