あの子の日記 「最後のふたり」
日本のどこかの、誰かの1日を切り取った短篇日記集
サイフォンに残ったコーヒーを冷たいカップに半分注ぐ。温かいうちに飲みきれば良かったんだけど、今はそんな気分になれない。向かい合わせに座ったシュンタは、サイフォンとカップを空っぽにしてテーブルの端によけている。
話題が尽き、ここにいる理由もないのに「帰ろう」と言い出せないのは、今日が恋人として会う最後の日だからだろうか。別れ話がチャラになって、「やっぱり俺はお前がいい」なんてふざけた台詞を心のどこかで期待しているからだろうか