最果てのカツ丼と秘湯の黄金ルート【奥多摩 小菅の湯編】
東京って小さいけど広い。都道府県の面積ランキングでは、最下位の香川、次点の大阪に続くドベ3にもかかわらず、ドライブをしているとその広大さには驚く限り。最西端の奥多摩までたどり着くのに、都心から車で三時間もかかるのだから。そもそも、青梅やあきるの市も半端ない遠い印象があるが、奥多摩の奥深さはレベルが違う。日の出インターで下り、そこから山道を一時間半走らないと着かないという気の遠くなる目的地なのだ。
東京最西端の絶品カツ丼 島勝
今日の冒険は、そんな奥多摩湖の西端にある定食屋さんに行ってみたくなったところから始まる。最近ハマっているドラマ「絶メシロード」のエピソード11で登場した「島勝」さん。ドラマの中で主人公はとろろ飯を注文していたのだが、私はここで店主がおすすめしていたカツ丼をどうしても食べたかった。青梅ポークで作った、東京最西端のカツ丼を。
私のカツ丼への情熱は、NOTEで別の記事が一個できてしまうくらいなので、実際今度書いてみようと思う。とにかく子供の頃からカツ丼が大好きで、携帯が出始めた頃のメアドもkatsudon-luvにしていた痛い歴史もある。そんな私のカツ丼への飽くなき探究心は、もはや都内で普通のカツ丼を楽しむのではなく、ご当地カツ丼など+αな提供価値のあるカツ丼を味わうことに最近は重点を置いている。ここ「島勝」さんは、ドラマからの情報によると、もともとは奥多摩湖の小河内ダムに沈んでしまった村で、先代が始められた歴史あるお店だという。お店の前に、圧倒的な存在感を放つ立派な看板は、もしかしたらその時代からのものなのかもしれない。
頭の中はカツ丼でいっぱいで車を走らせる。ほぼ山道の一本道で、夜だったら絶対通りたくない雰囲気のトンネルを沢山抜けていく。ハンドル切りそこねたら、そのまま車ごとダムに沈んでしまう緊張感の中、一時間半走った。奥地へいけばいくほど周りの車もみんな島勝さんを目指しているライバルな気がしてくる。ようやく細い山道が抜けると、信じられない美しい光景が私達を待っていた。
ここは本当に東京なのだろうか。
どうやらそのようだ。
東京で育った人たちは、奥多摩といえば遠足や野外学習の目的地ということで有名らしく、この感動を後日話しても、『あぁ、奥多摩ね』くらいの反応の薄さなのだが、私は奥多摩湖という存在自体を知らなかった故、かなりの驚きに包まれた。深いエメラルドグリーンのこの湖が本当に東京都だなんて!こんな大自然まで百合子の管轄とは…。百合子は把握しているのだろうか、こんな美しい場所が東京都にはあるっていうことを。
かつてはここにも温泉街があったようだが、今ではダム底に沈んでしまっているらしい。なんと惜しい。さぞ、外気浴が気持ちよかったに違いない。
周りのライバルたちを振り落としながら、ついに到着した「島勝」さん。私のようなミーハーなドラマファンも多いのか、店の外まで待っている人たちがいた。ドラマの通り、ご主人と奥様が二人で切り盛りされており、お忙しそうだ。お店にリスペクトを払いながら、静かに時が来るのを待つ。
15分後、待ちに待った着丼。丼からはみ出るカツ。このはみ出具合、秩父のわらじカツ丼など関東西部に見られる幅広型スタイルだな。早速一口いただく。サクっとした歯ごたえとともに肉汁が口の中に広がった。カツはいい意味で薄めなので、卵とごはんも一緒に口を運んでマリアージュを楽しむことができる。おいしい…。ドラマや地理条件、いろいろと+αな価値はあるが、カツ丼単体としてもかなり完成度が高くて、ここまでの長い旅路が報われる一品だった。箸がどんどん進むにつれ、もうあとカツが1切れしかない…と寂しくなってしまった。コロナ禍にありながらも、こんなに美味しいお食事を提供してくださるご夫婦には心から感謝しかない。
♨今日のフロ飯♨
島勝
0428-86-2038
東京都西多摩郡奥多摩町留浦617
https://tabelog.com/tokyo/A1330/A133004/13114958/
頂いたもの カツ丼 900円
さぁ多摩川源流へ。山梨県小菅村 小菅の湯
絶品カツ丼の次は、お風呂とサウナが黄金ルートだ。
この3つが揃えばそれはもう完璧なウィークエンド。もちろん行きたいお風呂もチェック済みである。それは、奥多摩のさらに先にある秘湯、小菅の湯。奥多摩湖は東京最西端にあるので、その先にある秘湯はもはや奥多摩ではなく、山梨県を指す。山梨県小菅村の小菅の湯。奥多摩をあとにし、更に30分ほど山道を走り続けると小菅村の集落に到着。ドライバーたちの道の駅があり、その中に小菅の湯もある。
お土産コーナーに入ると、よく行く焼肉屋さんで気に入って飲んでいるKAGUAビールがあるではないか。なんと、ここ小菅村はKAGUAを作っているFAR YEAST BREWINGさんの本拠地であることを知った。奥多摩源流でできた絶品ビール、風呂上がりに飲みたいところだけれど、帰り運転があるので、ここはダース買いして家で楽しむとする。
そして、待ちに待ったととのいタイムへ。小菅の湯に入って驚いたのは、館内の休憩スペースがかなり充実していること。長時間ドライブで疲れたドライバーたちの絶好の癒やしスポットなのだろう。
お風呂は木造で、天井も高く気持ちのよい空間。露天スペースも広く、多摩川源流の源泉かけ流しが引かれている。お風呂の種類も豊富だ。まずは下茹でというところで露天風呂に入ったところ、あまりの湯質の良さにびっくりした。なんていうか浸かっているだけでととのってしまうくらい。すでに何人かの地元のおばさまたちが、露天の壺風呂内で仕上がっていた。
さすが山奥の秘湯。おそるべし。しかしここに来たからにはサウナも経験したい。2名までという狭き門をくぐり抜け、着座。温度は60〜70度ということで熱さが物足りない部分もあるが、ここは長時間入ることでじっくり汗を出して、最高の外気浴に備えたい。1セット20分くらいで、水風呂へ。水風呂は一人専用の壺風呂となっており、地下水が組み上げられている。一人専用なので、天使の羽衣が壊される心配もなく、思う存分水風呂の気持ちよさを満喫できるのが嬉しい。水温は17度くらいだが、体感はもっと冷たく感じた。
そこから表に出て、しばしととのいタイム。椅子が2脚置いてあるだけではあるが、森の中、冬の青空の下でならすという最高の贅沢があるので文句はない。目を閉じると、おばさんたちの会話はかき消され、木と風のささやきが…。1セット目で早速サウナトランス状態に入ってしまった。自分は自然の一部…人間であることも忘れてしまいそう。
帰宅までがととのいなのだ。
結果、閉店時間ギリギリの6時まで、自然との一体化を楽しんでいた私達は、髪を乾かす時間を確保していないという失敗を犯した。しかし、ここの施設の密かな嬉しいポイントとして、ドライヤーの風圧がすごい。この風圧のおかげで3分で乾きましたわ。
昼食からサウナまで完璧すぎる時間を過ごした我々は、もはやこのあと2時間半もかけてまた都心へ帰るという現実を受け止められなかった。しかもあの山道を今度は夜走らなくては…。緊張感が持たずに本当にダム底に落ちるんではないか。恐る恐るカーナビに目的地を入れてみると…。
なんと1時間半で帰れるではないか。そうか、ここはもはや奥多摩ではなく山梨県。山道を少し頑張れば、上野原インターから中央道でささっと帰ることができる。しかしながら、この夜の山道がなかなかハードルが高く、対向車とスレスレ、もしくは譲り合いをしながら進むため、せっかくととのった神経が乱れる局所も…。
しかし、そんな山道の帰り道も集落があって、地元の人達の暮らしを想像すると、なんだか心が軽くなった。自然の中で暮らすって、大変なことも沢山あるけれど、都会では決して見ることのない四季にあわせた美しいものを眺め、旬のものを食べて、サウナなんかなくたって、ベースがととのっているんだろうな。なんてことを考えながらいつのまにか上野原インターから中央道に乗っていた。そして気がつけば大都会。今日の小旅行は、サウナもあったからか、何だか別次元へ旅行をしてきたあとのような気になった。実際はほぼ都内から出ていないのに。
次は、春の奥多摩・小菅村に来たい。もちろん、この黄金ルートで。そして、できればそのまま泊まりたい。
小菅の湯 多摩川源流温泉
http://kosugenoyu.jp/
〒409-0211山梨県北都留郡小菅村3445番地
入館料 750円
タオルバスタオルセット 200円
源泉掛け流し あり
アメニティ あり
ドライヤー 風圧◎ 無料あり
サウナ 高温サウナ1室
水風呂 壺風呂スタイル
外気浴スペース あり オススメ
フロガーポイント かなりすべすべになるお湯
客層 地元&観光客 半分ずつくらい