【内容一部公開】「ベイズ統計のバイブル」待望の翻訳――近刊『ベイズデータ解析(第3版)』
2024年6月下旬発行予定の新刊書籍、『ベイズデータ解析(第3版)』のご紹介です。
同書の一部を、発行に先駆けて公開します。
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訳者まえがき
近年、様々な科学分野や実務的な場面において、ベイズデータ解析の活用が盛んに行なわれている。その理由として、ベイズ統計学という枠組みの一貫性や、マルコフ連鎖モンテカルロ法などの計算アルゴリズムやStanなどの汎用的な実装ツールが発展してきたことが挙げられる。一方で、ベイズ分析について包括的に書かれた日本語の書籍は決して十分であるとはいえない。近年では、基礎的なベイズ分析について書かれた本がいくつか出版されているが、あくまで入門~標準的なレベルの内容である。ベイズ分析を実応用や実務的な場面で活かすためには、発展的な内容まで含めたベイズ分析の方法を包括的に把握することが重要であり、それを1冊で達成できる書籍として本書があると考えている。
原著は6人の著者によって執筆されている。中でもAndrew Gelman教授、David B. Dunson教授、Donald B. Rubin教授はベイズ統計学やその周辺分野において非常に著名な研究者である。彼らはベイズ分析の方法論だけではなく幅広い応用研究を行なっているため、原著では様々な応用例に沿った形で手法が紹介されている。そのため、大学生・大学院生に限らず、実務家にとっても分析の目的をイメージしながら効率的にベイズ分析を学ぶことができると考えられる。
訳者らはベイズ統計学や関連した統計学分野の研究を行なっているが、国内においてベイズデータ解析の実応用での適切な利用に関して世界から遅れをとっていると感じ、その原因の1つとして、包括的に方法論を学べる機会の少なさがあると考えている。また、階層モデルやノンパラメトリックモデルに代表されるように、世の中の現象を記述する統計モデルはより複雑化しており、ベイズデータ解析が有用になってくる場面は今後ますます増えることが予想される。このような現状に鑑みた結果、訳者らは本書のような書籍の翻訳が重要であると考えた。本書が多くの大学生や大学院生、実務家にとって、ベイズ統計学を体系的に学ぶ手助けや、分析に迷った際のハンドブックとして活用されていけばそれ以上の喜びはない。そして、この翻訳本が日本のベイズ統計学の発展に貢献することを切に願っている。
(後略)
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Andrew Gelmanらによるベイズ統計のバイブル「Bayesian Data Analysis」が待望の翻訳。
ベイズ推測やモデリングの基礎から始めて、ガウス過程、ディリクレ過程、ハミルトニアンモンテカルロといった手法まで、実用的な手法を幅広く網羅。各手法の理論だけでなく、豊富な実例・演習問題をもとに、計算機を用いたシミュレーション、プログラミング手法と応用における注意点までもれなく解説。
大学院生や研究者など、ベイズ統計とその応用に関わる方のリファレンスとしておすすめの一冊。
[原著]Bayesian Data Analysis, 3rd Edition (Chapman and Hall, 2013)