木製のパズルやゲームの開発に熱中して Development Story of Wooden Puzzles & Games (第3話)
第3章 孫が興味を持ちそうな将棋駒を
1、ニャンコ将棋駒の開発
1)、試作品
上の孫が小学生になったので、初心者用将棋セットを買ってやろうとしたが、藤井4段(現在は竜王など4冠)人気で売り切れていた。それなら自分で作ってみることにした。
将棋の駒は漢字の名称が表示してあるだけで、種類も多く、その動かし方も多様であるため、年少者や初心者にとっては取りつきにくく、わかりにくい。
そのため動物将棋などが市販されているが、ルールが違ったり、本将棋の機能を表す漢字の名称もなくなっているため、本将棋への移行がすぐにはできない。
また、駒の名称と動かし方のマークだけを記載したものもあるが、教育的で年少者の興味を惹きつける点では不十分である。
開発にあたっては駒の形状や図柄で年少者や初心者の興味を惹きつけるとともに、本将棋の名称や動かし方を分かり易く表示した、親しみやすく、本将棋にスムーズに移行できる将棋セットをめざした。
そのために、上部略3分の1が猫の顔で、その下部の胴体部に、その駒の機能を表す漢字の名称とその周囲に進め方を表すマークと、最下部にその駒の愛称を表示するとともに、王と金を除く駒の裏面の胴体部には色を変えてその成り駒の漢字の名称とその周囲に進め方を表すマークと、最下部に成り駒の愛称を表示した。
愛称は例えば「かくにゃん」のように、機能を表す漢字(角)の読みとニャンコ(猫)を組み合わせた。
試しに印刷した紙を切り抜いて市販の駒材に貼りつけた駒を孫達に見せて誘ったら、幼稚園の下の孫娘も一緒に飛びついてきた。
2)、ネコ型駒の商品化
商品化した駒は9mm厚のヒノキの平板にレーザー加工で、印字し、外郭を切断している。
顔部はすべての駒を猫に統一し、駒の種類ごとに目などの表情を変え、色彩も変えて識別しやすくしている。胴体部の駒の機能を表す漢字は一般に通用している一字とし、マス形で囲い、表面は黒、成り駒面は赤とした。駒の進め方のマークはこれまでマス目と、矢印や黒丸の組み合わせなどが提案されているが、本案では1マス進むのを四角マーク、2マス以上進むのを長三角マークとして、表面のマークを黒、成り駒面のマークを赤で塗りつぶして、より分かり易くした。なお、桂馬の場合は×印を付加している。
駒の愛称(6)は表面にひらがなで、おうにゃん、ぎょくにゃん、ひしゃにゃん、かくにゃん、きんにゃん、ぎんにゃん、けいにゃん、きょうにゃん、ふうにゃんと記載し、成り駒側はカタカナで、リュウニャン、ウマニャン、ギンニャン、ケイニャン、キョウニャン、トキンニャンと記載している。
駒全体の大きさは一般的な将棋盤のマス目の大きさ(約32mm×36mm)以下で、「王」から「歩」まで6段階で少しずつ小さくしている。
駒面への表示方法はレーザー加工にアクリル絵の具で彩色した。
3)、廉価版 廉価版の駒はヒノキ材の長方形で大きさを統一した。 デザインは前項の駒と同じで、外郭線も彫刻した。
これらの駒を使用した将棋セットは年少者や初心者が興味を持って、おじいちゃんやお父さんから将棋を習い始める、家庭での娯楽を兼ねた知育玩具として利用できる。
孫たちは少し覚えると、強い筆者や父親よりもおばあちゃんや母親に教えながら、楽しむことが多くなった。
4年生になった上の孫は将棋教室に通っているので、筆者と対等に指せるようになっている。
以上の将棋セットは特許を出願し公開中。特開2019-037520
4)、7将棋の提案
「7将棋」とは別名「桂馬抜き将棋」ともいえる新将棋で、本将棋の駒から桂馬4枚と歩兵4枚を外して、7×7マスでプレーする将棋である。
将棋を習い始める初期の段階では、対局時間が短く、取りつきやすい「7将棋」から始めれば、こまの進め方が本将棋と同じであるため、ある程度マスターしたら、桂の進め方を覚えるだけでスムーズに本将棋に移行できる。
この将棋では先手が飛車先の歩を突くと後手の角頭が破られるため、下手が先手になるルール以外は本将棋と全く同じである。
「7将棋」は短時間でプレーしたいときには、本将棋を知っている人でも十分楽しめ、新しい将棋ゲームとなり得る。
2、四つ折り将棋盤の開発
囲碁や将棋やリバーシなど、多くのマス目を有するゲーム盤を四つ折り以上に折りたたんで、収納や携帯に便利なゲーム盤を開発した。
作り方は4片以上に分割した部分盤を表面側に折り曲げる各2片の側面に、合成樹脂を含浸した布を接着して連結することにより面積が略4分の1となり、マス目のある表面に突起がなく、繋ぎ目の間隔も小さくなる。
また、表面側に折り曲げるつなぎ目をマス目の罫線と合わせることにより、マス目の外観も向上する。
なお、2分割した後、両端から中央部の幅の半分以下の幅で分割して表面側に折り曲げ、すべての折り曲げる部分盤の側面を樹脂含浸布で接着連結すれば6つ折りのゲーム盤ができる。
この場合、表面、裏面のいずれかまたは両方にマス目を配することができる。
したがって、折りたたみ式であっても表、裏両面に異なる数のマス目を配することにより、多種類のゲームに利用することができる。
市販のデニム布や帆布だけでは端面がほつれやすく、強度や屈曲性が十分ではないが、樹脂を含 浸させることによりほつれがなくなり、強度や屈曲性も向上し、木材との接着性も改善される。
特に、デニム布は横方向の強度が弱いが、樹脂含浸により大幅に改善されるので、外観上からも推奨される。
盤の板材は10~15㎜のヒノキを使用しているが、板反りの恐れがあるので、幅の小さい板を突き合わせて接着した板を使用している。
表面のマス目はレーザー加工で罫線を描いて形成した。
デニム布には商品名やイラストなどをアクリル絵の具やレーザー加工で描くことができる。
4つ折り以上のマス目付きゲーム盤は従来から親しまれている囲碁、将棋、連珠、リバーシ(オセロ)、チェスなどや、筆者が開発した計算パズル、数独(ナンプレ)などの数字パズル、クロスワードパズルなどのボードゲームにも用いることができる。
3、箱型駒収納将棋盤の開発
4片に分割した部分盤が厚さ4mmの科合板(シナベニヤ)の4辺に10mm角の桧の木枠を接着した箱体から構成されている。裏面で合わさる各部分盤は各同一形状であり、折り曲げる部分の木枠どうしは酢ビ含浸デニム布を接着して連結している。
2つの連結した箱体セットは開いたまま表面側に折り曲げた状態で上下いずれかの木枠の側面どうしは酢ビ含浸デニム布を接着して連結する。
各箱体セットの開閉部木枠には6mm径で、280ミリテラスの磁石を埋め込んでいる。
磁石を埋め込んだ木枠にもデニム布を貼れば、盤中央部のデニム布との高さが同じとなり、磁力も適当な強さとなる。
これに収納する駒入れ兼駒台は本体と同じ厚さの合板と木枠で作成し、大きさは小さいほうの箱体に収納可能な大きさに合わせている。駒をこの小箱を入れる場合は駒の配列を考えて並べないとぴったり入らないようパズルにしている。急いで収納しなければならない時は大きい方の部分盤の余白にも並べることができる。
この将棋盤は駒と駒台も収納できるので、家庭での収納や旅行、友人宅への訪問の携帯などにも便利である。
これらは特許出願していて公開されている。特開2019-092909
(第4話に続く)