地球生物たちの労働組合
最近、「ガイア 地球は生きている」という本を読みました。
著者のラブロックは「地球は生きている」と主張し、この生命体を「ガイア」と名付けたことで有名です。
そうして本書は「ガイア」を患者に見立て、医師の目で診断した結果を、様々な観点から書いています。
「担当医が見たところでは、この初老の惑星は顔色もよく、一見健康そうである。しかし、病理検査室や皮膚科からの診断報告を覗いてみると、異常な徴候が現れている。」
「大気中の二酸化炭素とメタンの量は正常な範囲を超えているし、微熱もある。部分的に皮膚障害が目につき、陸地表面のあちこちが剝きだしになっている。最も多くを語っているのは、大気中の異常な化学物質の存在である。」
「ある意味で、地球に住む人間は病原菌のようにふるまっている。」
ラブロックは「人間が地球の管理者であろうとするなら、それは経営者や主人ではなく、労働組合の代表のようなものでないといけない」と言います。
この地球上には様々な生物が生きていて、それぞれが働きをなしている、そういった地球生物たちの労働組合です。
その中には、最古参のバクテリア先輩や真菌先輩もいれば、比較的新人の鳥類、哺乳類もいます。植物や鉱物も、組合の仲間です。
人類の間で環境問題が議論されるようになりましたが、その議論は、あくまで人類のための議論になっているようです。
例えば森林保護を見てみると、「森の奥にガンに効く成分を持つ新種生物がいるかもしれない」「長期的に見ると、森林破壊は企業の成長阻害要因になり得る」といったことが理由になっています。
「人類が好き勝手をしていると、ガイアやその他の組合員たちからしっぺ返しを食うかもしれない。」
そのようにラブロックは警告します。そうして、こういった自然界からの怒りや復讐を強調しています。
しかし私には、ガイアが怒りで復讐しようとしているのではなく、限界まで耐え忍んで、人類を見守っているように感じられます。
そうして、どうしても耐えられなくなった時に、発作的に現象が起きて、人間も巻き込まれてしまうことがある。
そのように感じます。
「なんだよ、人間の奴。俺たちが土の中で働いているから、野菜ができるんだぞ。」
バクテリア先輩あたりからそんな声が聞こえてきても良さそうなものですが、誰も何も言いません。
皆、じっと見守っています。
ガイアも他の組合員たちも皆、最悪、人類と共に滅ぶ覚悟でいるのかもしれません。累と共に地獄に赴いた両親のように。
皆が人類のことを未だに組合の仲間だと思ってくれている。家族だと思ってくれている。
そのように感じます。